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» 2010年12月08日 16時38分 UPDATE

Dreamforce 2010 Report:「箱を売るのはクラウドではない」とベニオフ氏――Oracleとの応酬はもはや形式美の域か?

salesforce.comのマーク・ベニオフCEOはDreamforce 2010の基調講演にて“Cloud 1”から“Cloud 2”への進化を宣言し、Chatter Freeとdatabase.comをお披露目した。お約束となっている過激なコメントもあったが、切磋琢磨しつつ双方が進化している印象も受ける。

[石森将文,ITmedia]
beniof.jpg 相変わらず攻撃的なベニオフ氏だが、実際にはオラクルのラリー・エリソン氏と親しいこともまた事実。このところ続くエリソン氏との応酬は、もはや“お約束”の感もある。とはいえこのような舌戦(という名のエール交換かもしれないが)を通じ業界、ひいてはユーザーが盛り上がることは、悪くないことだろう

 2010年12月7日(現地時間)――米国サンフランシスコで開催された米salesforce.comの年次カンファレンス「Dreamforce 2010」で、基調講演のスピーカーを務めたのは、例年通り、いやそれにも増して戦闘力高めの、同社CEO マーク・ベニオフ氏である。

 「われわれはクラウドコンピューティングの伝道者としての役割を果たしてきた」とベニオフ氏は胸を張る。“昔ながらのビジネスモデルを変えたくない、ある程度もうかっているうちは旧来の方法にしがみつきたい”と考えるユーザーに対し、同社はクラウドを選択する触媒として機能しているのだという。「クラウドカンパニーとして出色と言える1700億ドルもの業績は、その成果だ」

 「そもそも」とベニオフ氏は続ける。「ザック(Facebookの設立者、マーク・ザッカーバーグ氏)が生まれる前からNotesはあった。だがいまだにNotesを使っているユーザーがいる。これではとても、イノベイティブだとはいえない」(注:Lotus Development Corporationの創設は1982年だが、レイ・オジー氏によるLotus Notesの開発およびリリースは1989年。この例え話は、少しアンフェアかもしれない。)

 ここでベニオフ氏は、速報値で2万人弱とされる聴衆に挙手を求める。「自分の勤務先は大企業ではなく、中小企業だという人は手を挙げて!」 約半数ほどの聴衆が挙手したところで、「われわれはこの業界の誰もが実現しなかったことをやる。それはエンタープライズアプリケーションの“民主化”だ」と話す。

 例えば従来(そして今でも)、IT分野のプロダクトは企業規模別に開発され、そして市場投入される。そこには明確なヒエラルキーが存在している。ベニオフ氏はこのことを、一種の差別だと感じているようだ。「ほかのITベンダーは、企業規模別にカンファレンスを開催している。大きな会社は大きなイベントへ。そして小さな会社は小さなイベントへ……。だがDreamforceには、あらゆる企業規模のユーザーが参加してくれている」

 民主化はどのように進められるのだろうか? ベニオフ氏は「メインフレーム型のITシステムがクラサバ型のITシステムへと移り変わったように、今はまた、クラサバ型のITモデルが、クラウドコンピューティングとして生まれ変わろうとしている時だ」と指摘する。

 ベニオフ氏は、自身のクラウド観を聴衆に示す。「企業はなぜ“箱(ハードウェア)”を買い続けるのか? そんな必要は、もうないのに。そして箱を売ろうとするクラウドは、クラウドではない。そういう売り方をしている企業が、IT業界にまだ存在していることに、私は驚きを隠せない」

hako.jpg ベニオフ氏が示す「箱」には“間違ったクラウド”という見出しが……

 「今年の9月に」とベニオフ氏は続ける。「私はOracle Open Worldに招かれた。Oracleの人間から“マーク、Oracleもクラウドをやってるんだよ”と見せられたのが――だった。同じ会場、同じホールで、Oracleは箱を、クラウドだとして紹介していた! 私は今でもそのことが信じられない」

 「私が、こんなのはクラウドじゃないよ、と指摘すると、言い合いになってしまった。仕方がないのでフロアに出ると、Oracleが買収した製品が、赤い色に塗り替えられて、あちこちにブース(ベニオフ氏は“レッドキューブ”と表現)として展示されている光景が目に入った。私は会場を周りながら考えた……。業界がレッドキューブに塗りつぶされ、そして占領されることがイノベーションなのだろうか? プロプライエタリな箱で動くプロダクトが果たしてクラウドなのだろうか? それは違う」

salesforce.comのクラウドはどう変わる?

 ベニオフ氏は起業する際、「オラクルタワーから、オラクルの世界、オラクルの木、オラクルの人間を見ながら」自問したのだという。その内容は「なぜ自分は、エンタープライズアプリケーションを作っているのだろう?」ということ。この自省が、現在のsalesforce.comに結実したともいえるわけだが、今またベニオフ氏は「Facebookみたいなソフトウェアを作るのはどうだろう? と自問している」という。「Oracleには、Facebookのようなアプリケーションはない。そもそも、ユーザーがマウスやキーボードで情報にアプローチしなければならないようなものは、理想的なテクノロジーではない。正しいテクノロジーとは、情報自身がプッシュで、あるいはフィードで、ユーザーにアプローチしてくるものだ」

 米Morgan Stanleyは2009年12月に、既にソーシャルサービスのユーザーが電子メールユーザーを上回っているという調査結果と、インターネットアクセスデバイスとしてデスクトップPCやノートPCの台数は横ばいや微増だが、スマートフォンが急激な伸びを見せるという調査結果を公開している。ベニオフ氏はこのことを「昔のやり方は、死にかけている」と表現する。「ユーザーはあらゆる場所で、情報をフィードしたりされたりしたいと考えている。今やスマートフォンを複数台持つことも、珍しくはない」(ここで体中のポケットから、スマートフォンや、iPadまで取り出してみせるベニオフ氏)

 salesforce.comにとって、そしてクラウドにとって大切なのは、ヒトとのタッチポイントを失わないということだと指摘するベニオフ氏。「クラウドは、“Cloud 1”から“Cloud 2”へと進化する。大きな違いは、モバイルとソーシャルを取り込んだこと。ローコストで、簡単で、常に使える。これこそがクラウドだ」

cloud2.jpg Cloud 1とCloud 2の比較モデル。ここでやり玉に挙げられたのはAmazon.com……

 このようなクラウド観を具現化したものとして、Dreamforce 2010初日には2つの新サービスが発表された。1つは「Chatter Free」。「クラウドにおいては、ユーザーが増えれば増えるほど、また使われれば使われるほど、サービスそのものの価値が高まり、ユーザー企業の競争力を強化する」というベニオフ氏の主張を後押しするものとして、従来からあるコラボレーションツールChatterの無償版としてリリースされる。

 基本的な機能はChatter Freeで充足されるが、ChatterをForce.comと連携したり、ワークフロー機能を持たせたりしたい場合には、1ユーザー当たり月額15ドルで「Chatter Plus」にアップグレードできる。今のところChatter Freeを利用できるのはsalesforce.comのユーザーに限られるようだが、2011年2月には、すべての人に無償提供する“Chatter.com”をリリースする予定だという(発表の範囲では、Chatter FreeとChatter.comの間に大きな機能差はないようだ)。

chatter.jpg Chatterのエディションによる違い

 もう1つが「Database.com」。クラウドネイティブなデータベースと位置付けられるサービスだ。元々salesforce.comはクラウドでRDBを提供するサービスを手掛けていたこともあり(ビジネスとして当たったのは、RDBではなくCRM分野であったが)、Database.comは純粋な新サービスとは言えない面もある。だが今回、Java、.NET、Ruby、PHPといったさまざまな開発環境への対応、そしてiOSやAndroid端末でのDB利用を可能にするツールキットの提供などで、「言語やプラットフォームという制限から、開発者を解き放つ」(ベニオフ氏)という。

 「Database.comは、クラウドとクラウド、そしてクラウドとオンプレミスで簡単に会話できる。データベースに対し拡張性を問うたり、アップグレードのコストや手間の心配をしたりすることとは無縁だ。ディザスタリカバリについて悩む必要もない」

 信頼性については「既にCisco SystemsやSymantecなどで稼働実績があるセキュリティモデルをシェアするため堅固だ。これこそが、マルチテナント型クラウドのメリット。既存ユーザーによるノウハウを、新規ユーザーが享受できる。ユーザーが増えれば、よりインテリジェントな仕組みになるだろう」

db.jpg 従来型のデータベースと、Database.comの比較

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