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» 2013年03月07日 08時00分 UPDATE

IBM Pulse 2013 Report:パナマ運河の拡張は国家的なビジネスチャンス? 世界遺産の港湾都市が取り組む「M2M」

Pulse 2013で予定される約500のセッションのうち、実に75%がユーザー自身による講演だ。開催2日目のゼネラルセッションも医療、運輸などエンドユーザー業界による成功事例が取り上げられた。

[石森将文,ITmedia]

 米国ラスベガスで開幕したIBM Pulse 2013は2日目のゼネラルセッションを迎えた。前日に続き進行役を務めるスコット・ヘブナー氏は「昨日は戦略的な方向性の話をした。今日のテーマは“実行”と“ベストプラクティス”だ」と話す。

 ヘブナー氏の言を待たずとも、今回のPulseは例年以上に、IBMによるクラウドの「実行力」を感じられる場になっている。昨年はTivoli Softwareの前ゼネラルマネジャー、サバー氏により「流行りものでよいなら他社を」という挑発的なコメントがあったが、今年はIBM発のメッセージだけでなく、ユーザー自身にIBMのケーパビリティーを証明させようとしているようだ。

 その証として、ユーザーセッションの多さがある。会期中、Pulse 2013のセッションはおよそ500を数えるが、実にその75%がユーザー企業によるセッションである。もちろん3月5日(現地時間)のゼネラルセッションも、ユーザー企業によるパネルディスカッションを中心に構成されることとなった。

優秀な医師の獲得にはモバイルが不可欠

 米国の大手医療機関であるキャロライナヘルスケアシステム(CHS)で、情報サービス担当のアシスタントバイスプレジデントを務めるロバート・ピアス氏は「医療機関にとってモビリティーは差別化のキーだ」と話す。

 「若い医師にとって、情報をモバイルから得ることが自然な振る舞いとなっている。そしてこの流れは加速する。優秀な医療従事者を獲得するにはモバイルへの対応は不可欠だ」

 CHSでは、従来支給していたラップトップの相当部分をiPadに切り替えたという。ピアス氏は「基本的に病院のスペースは、患者と医療設備のもの。救急車内であればなおさらだ。デバイスをタブレットにしたことで、かなりのスペースを医療目的に活用できるようになった」と話す。

 効率化したのは医療業務だけではない。病院の運営には、清掃や事務といった業務もある。CHSでは清掃スタッフにタブレットを配布し病棟の清掃を効率化したり、事務員によるカルテのピックアップを迅速にしたりできたという。

 CHSのモバイル活用はさらに先を行く。市民は「デジタルケア」というCHSがリリース提供するモバイルアプリを通じ、診療科の空きや通院した際の待ち時間を把握できる。また慢性疾患を持つ在宅の患者に対しては、iPadを通じて薬を飲んだりリハビリをしたりするタイミングをプッシュ通知している。

 患者がプログラム通りに行動をとらなかったり、血圧などに異常が見られたり場合は、医師がFaceTimeで面談し、場合によっては訪問診療を実施する。

 職員に対しても同様の取り組みを行っている。モバイルを通じて「ウェルネスプログラム」を適用し、各自が食事制限やエキササイズに取り組むことで、職員の健康促進や医療費の削減を図っているという。

 ディスカッションの司会を務めたIBM ミドルウェア&ソフトウェア担当バイスプレジデントのロバート・ルブラン氏は「CHSの例は、単にラップトップをモバイルに置き換えたのではなく、ビジネスプロセスそのものの改善にモバイルが寄与したベストプラクティスだ」と評価する。

 このプロセスを支えるモバイルインフラについては、Tivoli Endpoint Manager(TEM)で管理しているという。ピアス氏は「多数のデバイスを単一のコンソールで管理できる。TEMがなければ難しかったことだ」と評価する。

pulse2.jpg ロバート・ルブラン氏(左端)がモデレータを務めるユーザーディスカッションを中心としたゼネラルセッション。右端がCHSのロバート・ピアス氏、右から2番目がカルタヘナ港のエドワルド・バスタマンテ氏。

世界遺産の港湾都市が取り組む「M2M」

 南米コロンビア有数の港町、カルタヘナで港湾管理を行うエドワルド・バスタマンテ氏は「パナマ運河の拡張(注:太平洋とカリブ海を結ぶ同運河は、2014年に拡張工事の竣工を予定している)はカルタヘナ港だけでなくコロンビアという国家にとって大きなビジネスチャンス」と話す。

 しかしカルタヘナ港で扱う貨物のうち60%がスループット(カルタヘナで積み替えて他所へ輸送する)だという事情から「入港する船と、クレーンやトラックといった積み替え機材の同期に課題があった」(バスタマンテ氏)という。

 必要なタイミングで必要な機材を準備するために、カルタヘナ港の輸送機材にはハンドヘルドを設置し、港内に巡らせたWi-Fi網を通じて2分ごとに位置とステータスを同期することとした。トラックにはすべてGPSを付与し個体管理することで、無駄な稼働を減らすことができたという。

 バスタマンテ氏は「貨物の量に応じてほぼリアルタイムに機材を配置できるようになった」と評価する。

 カルタヘナ港が取り組んだのは貨物の回転効率改善だけではない。言うまでもなく、港湾を運営するには大量の機材が必要になるが、それらをMaximoで可視化し、Tivoliで統合管理することとした。

 「その結果、保守効率が上がり、コストを削減できた」とバスタマンテ氏は話す。車両ごとのガソリン量やタイヤの摩耗度合いを把握できるようになり「予防保守」ができるようになったからだという。予備部材も適切な量を調達できるようになった。

 カルタヘナ港ではこれらの取り組みによって、ビッグデータの先、つまり「M2M」の世界を具体化しつつある。

 上述したパナマ運河の拡張による需要増で、コンテナの扱いを2.5倍にしたいと意気込むバスタマンテ氏は「今後は機材だけでなく、人間の適材適所に取り組みたい」と展望を話す。既にクレーンを操作できるスタッフの不足が明らかになっており「クレーンシミュレータを導入して免許取得者を増やす計画だ」としている。

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