当初から、運用開始まで3年ほどの準備期間が必要なことは分かっていた。木下氏はまず「改革における“7つの憲法”」を定めたという。要件定義において、何を実施し、注力するか。長期に渡るシステムの構築で方針にブレが生じないようにするためだった。
基幹部分には、これまで個別に存在した商品調達系と在庫管理系のシステムを統合するため、日本マイクロソフトのERPソリューション「Microsoft Dynamics AX」を選定した。ERP(Enterprise Resource Planning)とは「統合基幹業務システム」や「統合業務パッケージ」などと呼ばれ、これまで個別だった業務システムを統合管理するためのソリューションだ。
基盤の選定まで、1次選定で主要ERP候補の19社から7社に、2次、2.5次選定で2社まで絞り込み、
が最終評価の選定ポイントになった。標準機能ではできない要件もあるため、パッケージ/アドオンでカバーできる/しやすいものが望ましい。この前提・制約条件を把握するため事前評価ができたことも選定理由につながった。
デザイン定義は、ユーザー、特に「店頭スタッフ」の気持ちを考えたユーザーインタフェースを目指した。
「商品調達のユーザーインタフェース(UI)画面は、写真がズラリと表示され、まずビジュアルが飛び込んでくるようにしました。業務管理システムでここまで写真がメインなUIはあまりないのではと思います。なぜなら、ファッションをやっている企業として、商品を常に見続け、トレンドを追い、お客様へ提案するスタッフが使うためのものだからです」(木下氏)
UA2.0の導入で、どんな効果が出たか。
目的とした「カネについて(ITコストの構造改革)、「モノについて(基幹システムの刷新)」、「ヒト・組織について(IT体制戦略機能の強化)」のうち、2014年8月時点での評価は、
であるようだ。特にITコストの削減は期待どおりで、目標達成レベルの効果があった。基盤の統合で、店と本社で売れ筋情報や商品戦略の共有も加速した。IT体制については、チーム間で限られたリソースをいかに効率的にするかとする課題は若干残った。本来やるべきことを注力できるよう、チームのワークバランスの考察も極めて重要だったという。
具体的な機能については、
の向上が果たせた。
まだ残るいくつかの課題、改善ポイントは当然、今後も取り組む。ともあれ、何よりの効果はユーザーであるスタッフからの評価と、今後の期待だったと木下氏は述べる。
「スタッフから“とてもやりやすくなった。感動したよ”と声をもらいました。日頃のルーティン業務(商品発注や在庫管理)からでも感動は生まれるのです。店はお客様のためにある──を社是に、お客様に喜んでもらえることがユナイテッドアローズの事業の根幹にあります。システムからスタッフへ、そのスタッフが店のお客様へ。この感動のつながりができたことは、アパレル/小売業を展開する弊社にとって、何よりの収穫かもしれません」(木下氏)
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