7つの課題に悩む“ガリガリ君の赤城乳業”を救ったクラウド(前編)(1/2 ページ)

2015年、”ネタアイス”を次々と世に送り出すことで有名なアイス専業メーカー、赤城乳業がグループウェアのクラウド化に踏み切った。同社を悩ませていた7つの課題を解決したクラウドサービスは?

» 2015年11月30日 07時30分 公開
[後藤祥子ITmedia]
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 赤城乳業といえば、“人に話さずにはいられない”ネタアイスを次々と世に送り出すことで有名なアイス専業メーカーだ。同社の屋台骨を支える「ガリガリ君」では、どんな味なのかまるで想像がつかないシチュー味やナポリタン味、コーンポタージュ味を市場に投入。大きな注目を集めた。

 そんな赤城乳業の開発ポリシーは「遊び心にきちんとまじめに取り組む」こと。社員が遊び心いっぱいの人生を送り、商品の開発から製造、流通に至るまで遊び心を忘れないことで、小さくても強い会社になれる――という考えがベースになっている。

 このポリシーは、“変化に柔軟に対応する攻めの経営姿勢”にもつながっている。例えばコンビニエンスストアとの連携もその一例だ。黎明期からポテンシャルの高さを見抜いて連携施策を図り、成長とともに売上を伸ばしてきたのは有名な話。現在は新たな成長戦略として、量販店市場の拡大に取り組んでいる。こうした施策が功を奏して、販売本数は2000年に1億本、2015年には5億本を突破。少子高齢化時代の食品業界では難しいといわれる“右肩上がりの成長”を実現している。

Photo 「話題になるアイス」の提供で知られる赤城乳業。少子高齢化時代にもかかわらず、右肩上がりの成長を続けている

 そんな赤城乳業がグループウェアのクラウド化に踏み切ったのは2015年のこと。同社は何を目指してシステムの刷新を検討し、どんな選定プロセスを経て導入製品を決めたのか――。日本マイクロソフトの年次イベント「FEST2015」の講演で、赤城乳業 情報システム部門の課長を務める吉橋高行氏が選定から導入までの経緯を語った。

モバイル化、情報共有の効率化ニーズが移行を後押し

Photo 赤城乳業で情報システム部門の課長を務める吉橋高行氏

 赤城乳業は早い時期からIT化に取り組んでおり、グループウェアは1996年にLotus Notesを導入している。しかし、時代の流れとともにさまざまな課題が浮上してきたことから、システム刷新の検討をスタートした。

 課題の1つは、全社の情報共有手段として、Notesを使い続けるのが難しかったことだ。吉橋氏によると、Notes時代はアカウントの配布が全社員の6割強にとどまっており、アカウントを持たない社員は口頭による説明や掲示板を通じて情報を共有していたという。この方法では、なかなか全てのスタッフに情報が届かず、届いたかどうかを確認するのも難しかったと吉橋氏は振り返る。

 「毎年のように、全社員にアカウントを配布するか議論になりましたが、部署によっては閲覧用のPCが少ないこと、配信したい情報が福利厚生や掲示板情報といった限られたものである割にランセンスあたりの値段が高いことなどから、なかなか踏み切れなかったのです」(吉橋氏)

 2つ目はスマートフォン対応が困難だったことだ。同社がNotes 6.5ベースのシステムを構築した2003年は、ガラケー全盛時代。システムにスマートフォン対応の機能はなく、せっかく導入した100台のiPhoneを生かしきれていなかった。

 情報共有のメール依存も課題の1つ。Notes時代は全社共通のポータルサイトがなく、全てをメールで伝えていたため、必要な情報やタスクを素早く探すのが困難だったという。

 運用面の課題も深刻だった。業務データベースを開発しやすいというNotesの特長ゆえに、個人のニーズに最適化されたデータベースが乱立し、ユーザーが必要なデータを見つけづらいくなっていたと吉橋氏。さらに個々の社員が、よく使うデータベースを貼り付けたワークスペースを作成するようになり、メンテナンスの負荷も高まった。

 ほかにも、9年間利用したサーバが「いつ、壊れるか分からなかった」ことや、PCを持ち歩かないとデータベースの閲覧ができないなどの運用面の課題があったという。

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