IBMのWatson、口ベタな人のお見合い成功率アップにも使用可能にIBM InterConnect 2016 Report(1/2 ページ)

IBMの「InterConnect 2016」は2日目を迎え、同社のクラウドやWatsonを利用するためのAPIを駆使して既成概念にとらわれないビジネスを展開するユーザー企業事例が多数登場した。

» 2016年02月24日 16時41分 公開
[國谷武史ITmedia]

 クラウドやモバイル、アナリティクスをテーマにIBMが開催するカンファレンス「InterConnect 2016」が現地時間2月22日からネバダ州ラスベガスで開かれている。2日目の基調講演では同社のクラウドサービスやコグニティブ(認識)技術のWatsonなどを利用して、従来型の仕組みにとらわれない先進企業事例が紹介された。

機密情報でも分散保管なら安全?

 企業間取引では機密性の極めて高い情報が常に発生するが、特に映像や画像など大容量のクリエイティブデータを取り扱う業種では世の中の発信する前の段階のデータ管理に頭を悩ませている。

 広告代理店大手の英WPPグループで制作などを手掛けるCoretech プリンシパル ソリューションズ&エンタープライズアーキテクトのマーク・ケラー氏は、「例えば、大手自動車メーカーにおける新車のテレビCMなら同じ映像でも国ごとの仕様や言葉、文化に合わせて内容を変えながら同時進行で制作しなければならない。最近ではHDや4Kの高精細映像も扱うため、放送前の膨大な映像データを安全かつ効率的に扱う上で課題が山積みだった」と話す。

1つの新製品CMでも放映先に応じて言語や製品仕様の違いなどを反映させる映像を制作するため、そのデータは膨大な数と容量になってしまう

 同氏によれば、そのためにテラバイトクラスのストレージを多数用意したり、映像ファイルを高速転送するようなサービスを導入したりしても、抜本的な解決にはつながらなかった。発表前の新商品などに関するデータは極めて機密性の高く、非常に高いセキュリティレベルも維持し、コンプライアンスを満たす必要もあった。このため同社は、米ストレージソフトのCleversafeのオブジェクトストレージを採用して解決につなげたという。

 オブジェクトストレージは「メタデータ」を利用した容易な管理や迅速な検索と、データ本体を効率的に格納できるといった特徴が利点として知られる。ケラー氏は、オブジェクト化したデータを分散保存することによって可用性や信頼性が十分に確保されることもメリットだと語る。

 「データが分散していれば災害によって失うリスクを回避でき、特定の国や地域の法令などによる制限も受けにくいと言える。オブジェクトストレージの導入によって、現在では世界20カ国以上の事業展開が可能になった」(ケラー氏)

データをオブジェクト化して分散保存することで、ファイルストレージのような従来のアーキテクチャによる制約を受けない巨大データ群の管理を実現したという

 同社が採用したCleversafeは、2015年10月にIBMに買収されている。IBMはこのカンファレンスに合わせて、CleversafeをベースにしたオブジェクトストレージのクラウドサービスIBM Cloud Object Storage」を発表。2016年第2四半期にサービスを開始するとした。ケラー氏は、「IBMには引き続きサービスを期待したい」とのコメントを寄せている。

 ケラー氏の紹介を受けて登壇したIBM Systemsシニアバイスプレジデントのトム・ロザミリア氏は、Coretechが扱っているような非構造化データの急激な増加は、ITインフラの既成概念を“破壊”して新たな変化をもたらすとし、「その変化を受容しなければならない」とコメントした。そのためには、「システムとしての一貫性と統合性」「データの活用」「可用性の確保」という3つの視点が重要だと強調した。

Watsonが恋文をつくる?

 初日基調講演で発表されたWatsonの新しいAPIとPaaSのBluemixを活用したユニークなモデルも披露された。

 オンラインのお見合いサービスを展開するConnectidyの共同創設者 社長のディニーン・テーラーリング氏は、「会員のカップル成約率のアップにWatsonが大きく貢献してくれるだろう」と述べた。特に期待するのが、人間の“調子”を解析する「Tone Analyzer」だ。

 お見合いサービスではカップルになりたい相手に、まずはチャットやSNS、メールなどのテキストメッセージを送って自分の魅力をアピールする。相手が関心を持ってくれれば、メッセージの交換を重ねてお互いの理解を深め、カップルになる。文章力に自信があれば、カップル成立など簡単なことかもしれない。

 しかし、「自分の書いた文章で自分の考えが相手に正しく伝わらなかった経験を持つ人は60%もいる」(テーラーリング氏)というのが現実だという。カップルになれる可能性がわずかな文章上で表現によって一気にゼロにもなってしまう。それなら、文章から相手の気持ちが分かれば、伝えたい気持ちもまた文章で表現できるかもしれない。そこをWatsonが担う。

Watsonがメッセージの文章から本当の気持ちを読み解く

 ConnectidyではWatsonのTone Analyzerを使って、メッセージ送信者の情報をSNSから集めて分析し、送信者の行動や心理などを把握する。そして、送信者のメッセージ内容を読み取って分析し、それらの分析結果から送信者の感情や文書表現力、社会性といった特性をパーセンテージで診断してくれる。

 例えば、チャットでのやり取りにこの分析を活用すれば、メッセージ単位でWatsonが相手の気持ちを推測してくれる。それに応じたメッセージが相手のキモチに届けば、心の通う交流につなげられるというのが、テーラーリング氏の期待である。

Watsonのアドバイスを聞けば成就するカップルが増えるかもしれない
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