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» 2016年03月14日 07時00分 UPDATE

即席!3分で分かるITトレンド:コレ1枚で分かる「日米のビジネス文化の違いとクラウドコンピューティング」

国内におけるクラウドの普及は、米国と差があるといわれていますが、その背景にあるものを、ビジネス文化の違いから考察してみましょう。

[斎藤昌義(ネットコマース株式会社),ITmedia]

この連載は

 カップめんを待つ間に、電車の待ち時間に、歯磨きしている間に“いまさら聞けない”ITトレンドが分かっちゃう! 今さら聞けないITの最新トレンドやビジネス戦略を、体系的に整理して分かりやすく解説する連載です。「この用語、案外、分かっているようで分かっていないかも」「IT用語を現場の社員にもっと分かりやすく説明できるようになりたい」――。情シスの皆さんのこんな課題を解決します。


国内のSI事業者にとってクラウドは利益相反?

 クラウド(ここではIaaSについて話します)は、ITエンジニアの7割がユーザー企業に所属する米国で生まれた、情報システム資産を調達する仕組みです。

 クラウドは、リソースの調達や構成の変更など、ITエンジニアの生産性を高め、コスト削減に寄与するものです。とすると、ITエンジニアを社内に多く抱える米国では、クラウドはユーザー企業の生産性を高めることに直結しています。

 一方、わが国のITエンジニアは、7割がSI事業者やITベンダー側に所属しています。従って、そのような仕事は、システムの構築や運用を受託しているSI事業者側に任されており、クラウドはSI事業者の生産性を向上させることになります。しかし、これはSI事業者にとっては案件単価の減少を意味し、メリットはありません。また、調達や構成の変更はリスクを伴う仕事です。米国では、そのリスクをユーザー企業が引き受けていますが、わが国ではSI事業者が背負わされています。

【図解】コレ1枚で分かる「日米のビジネス文化の違いとクラウドコンピューティング」

 このことから見えてくるのは、SI事業者にとってクラウドは、案件単価が下がり、リスクも大きくなることを意味し、利益相反の関係にあるという事実です。わが国のクラウドサービスの普及は米国ほどではないといわれていますが、その背景には、このような事情があるのかもしれません。

 エンジニアの構成配分が、このように日米で逆転しているのは、人材の流動性に違いがあるからです。米国では、大きなプロジェクトがあるときには人を雇い、終了すれば解雇することもさほど難しくありません。必要とあれば、また雇い入れればいいわけです。一方、わが国は、そのような流動性がありません。そこで、この人材需要の変動を担保するためにSI事業者へのアウトソーシングを行い、需要変動の振れを担保しているのです。

クラウドの価値訴求は米国と違うシナリオで

 ところで、クラウドを使う場合、リソースの調達や構成の変更は「セルフサービスポータル」といわれるWeb画面を使って行われます。必要なシステムの構成や条件を画面から入力することで、直ちに必要なシステム資源を手に入れることができます。

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 従来、このような作業は、業務要件を洗い出し、サイジングを行い、システム要件を決め、それに合わせたシステム構成と選定を行うことが必要でした。そして、価格交渉と見積もり作業を経て、発注に至ります。その上で、購買手配が行われ、物理マシンの調達、キッティング、据え付け、導入作業、テストを行っていました。この間、数カ月かかることも珍しくはありません。このような作業を必要とせず、Web画面から簡単に行えるわけですから、生産性は大いに向上します。

 しかし、わが国のユーザー企業は、先ほどの理由から、このような作業の多くをSI事業者に依存してきました。従って、いまさら自分でやれといわれても簡単に対処できることではありません。SI事業者も受注単価が下がり、人もいらなくなるわけですから積極的にはなれません。ここに暗黙の利害の一致が生まれており、これもまたクラウド利用を促進させる足かせとなっていると考えられます。

 このような現実があるわけですから、わが国においては、米国と同じシナリオでクラウドの価値を訴求することは困難といえるでしょう。

著者プロフィル:斎藤昌義

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 日本IBMで営業として大手電気・電子製造業の顧客を担当。1995年に日本IBMを退職し、次代のITビジネス開発と人材育成を支援するネットコマースを設立。代表取締役に就任し、現在に至る。詳しいプロフィルはこちら。最新テクノロジーやビジネスの動向をまとめたプレゼンテーションデータをロイヤリティーフリーで提供する「ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA」はこちら


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