授業を爆速でオンライン動画化、静岡大学がマイクロソフトと手を組んだ理由Azure活用で動画製作費10億円がタダに?(1/2 ページ)

静岡大学と日本マイクロソフトが、大学教育におけるデジタルトランスフォーメーション推進において協力すると発表した。AI時代に通用する人材育成を目指すとともに、授業の動画化を推進するシステムを開発したという。両者にはどのような狙いがあるのだろうか。

» 2017年03月10日 13時20分 公開
[池田憲弘ITmedia]

 時間や場所を選ばず、いつでも、どこでも働くことができる――。国の政策の影響もあり、昨今では「ワークスタイル改革」が話題になっているが、この“いつでも、どこでも”というキーワードが、教育分野においても重要になりつつある。

 昨今は授業(講義)を動画化して、Webやアプリを通じて配信するケースが増えてきているが、国立大学の静岡大学も、このような取り組みを積極的に進めている。2016年度には、動画投稿サイトのYouTubeなどに合計725本の動画を公開したそうだ。

photo 静岡大学

 予習や復習が容易になったり、欠席時に学生が授業のキャッチアップがしやすくなるといったメリットもあるが、大学側では、講義内容を授業前に動画で予習しておき、教室では学生同士の議論や発表などの実習を中心に行う、「反転学習」への活用も見込んでいる。

 こうした流れを推進すべく、静岡大学は日本マイクロソフトと3月8日、大学教育におけるIT活用に関する覚書を締結した。Microsoft OfficeとMicrosoft Azureで、授業動画の作成と配信を行う「クラウド反転授業支援システム」を2017年4月から本格運用するほか、第4次産業革命に対応できる人材の育成を目指す講座を開講する。このクラウド反転授業支援システムは、同大学以外にも全国の大学へ導入を提案するという。

静岡大学が講義を動画化する理由

photo 静岡大学 情報基盤センター センター長の井上春樹氏

 静岡大学が授業の動画化を進める背景には「少子化」がある。「18歳の学生が減少傾向にある中、大学(院)が今後定員を確保するには、留学生や社会人に対して積極的にアプローチする必要がある」と話すのは、同大学の情報基盤センター センター長の井上春樹氏だ。しかし、留学生や社会人にとって、大学で行われる従来型授業は困難な面も多いという。

 「仕事と両立しながら学ぶ社会人は、大学に来るのがまず大変だ。留学生は日本語で行われる授業のスピードについていけない可能性がある。授業を動画にすることで、スマートフォンやPCで、いつでもどこでも予習や復習ができるようになる。特に授業を英語で行うことも多い大学院の授業では、教員の負担を減らすためにも、動画化が必須になると考えている」(井上氏)

 しかし、授業の動画化や保存、配信には時間とお金がかかる。静岡大学で開催されている講義は年間で約4600科目。通常、大学で行われる授業の約半分が反転授業に向くという研究結果もあり、その半分を動画化しようとすると、1科目の授業が10回と試算した場合、動画は全部で約2万3000本となる。仮に1本あたりの動画製作費が5万円ならば、製作費の合計は10億円を超えてしまう。これほどの資金を捻出するのは難しい。

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