AIで保育所入所を最適化するマッチング技術 約8000人の割り当てが数秒で九州大学と富士通などが開発

自治体職員の業務負荷が改善されるだけではなく、入所申請者への決定通知を早期に発信できるようになるという。

» 2017年08月31日 13時50分 公開
[金澤雅子ITmedia]

 九州大学マス・フォア・インダストリ研究所 富士通ソーシャル数理共同研究部門と、富士通研究所、富士通は、AIを用いて、複雑な保育所入所選考における最適な入所割り当てを自動的に算出するマッチング技術を開発した。人手で数日かけていた入所割り当てを数秒で算出できるという。

 保育所入所の選考業務では、自治体ごとに決めている申請者の優先順位や、きょうだいの同一保育所入所希望などの複雑な条件をもとに、申請者の希望ができる限りかなう最適な割り当てを行うが、申請者全員が不満を持たない割り当てを自動化することは困難だった。

 そのため各自治体では、人手による試行錯誤で全申請者の希望を調整しているものの、自治体によっては、調整によって選考に数週間かかり、入所申請者への結果通知に時間を要したり、申請者の希望が通らずにきょうだいが別々の保育所に入所することになってしまったりする問題がある。

 今回開発された技術では、「きょうだいが同じ保育所になることを優先してほしい」「別々の保育所でも良いが、きょうだいの片方しか入れないのなら辞退する」といった複雑な希望条件の依存関係を「ゲーム理論」によりモデル化。優先順位に沿って全員が可能な限り高い希望をかなえられる割り当て方を見つけることが可能になった。

 同技術を、埼玉県さいたま市の申請者約8000人の匿名化データを用いて検証したところ、わずか数秒で最適な選考結果を算出することに成功したという。

photo ルールを用いた入所判定例

 同技術が実用化された場合、自治体職員の選考業務負荷が大幅に改善されるだけではなく、入所申請者への決定通知を早期に発信できるようになるうえ、業務負荷の増加や見落としの心配にとらわれることなく、きめ細かいルールで運用できるようになり、入所申請者の満足度向上を図れるとしている。

 富士通では本技術を、自治体向け保育業務支援システム「MICJET MISALIO 子ども・子育て支援」のオプションサービスとして、2017年度中に提供する予定。また、富士通のAI技術「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」の1つとして、組織内の均質な人材配置を行うマッチング、作業員のスケジュールマッチングなど、さまざまなマッチング問題への適用を目指す。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ