コラム
» 2013年02月01日 20時25分 UPDATE

本田雅一のTV Style:気になる4Kインフレ、気になる新技術(1)

今回のCESで感じたのは、まだまだ”これからのキーワード”である、4K2Kという言葉が、実際のビジネスが盛り上がってくる前からインフレを起こしていたことだ。すでに中国メーカーまで大々的に訴求を始めている。

[ITmedia]

 「1月は原稿が届かなかった!」と担当者に大目玉を食らったのだが、その分、23日まで海外出張に出かけ、さまざまな人達と意見を交換することで、考えもかなりこなれてきた。その海外出張のスタートは、例年のように米ラスベガスで開催された「International CES」だ。

 すでに多くのリポート記事が上がっているが、本連載では「メーカーが何を発信しているか」ではなく、あくまでもエンドユーザーの視点での買い時や注目技術といったスタンスで話を進めることにしたい。

 今回のCESで感じたのは、まだまだ”これからのキーワード”である、4K2Kという言葉が、実際のビジネスが盛り上がってくる前からインフレを起こしていたことだ。このCESにおける最大サイズの4K2Kパネルは、あるメーカーによると「中国生産」とのこと。サイズは110インチだ。この中国製パネルを使った業務用ディスプレイの展示を、サムスンは裏玄関ともいえるコーナーの1つへと割り当てた。

ts_sam02.jpgts_sam08.jpg サムスンブースの入口。110インチの4Kテレビも並んでいた

 110インチの4K2K液晶ディスプレイが並んでいるのは、まさに壮観の一言だが、このサムスンブースから歩いて数100メートル、かつてはマイクロソフトが陣取っていた一等地にある中国メーカー・ハイセンスのブースにも、実は同じパネルを使ったテレビが並んでいる。それだけではない。ハイアールブースに行けば、ソニーなども採用しているLG製84インチパネルを使ったテレビが置かれており、さらにサムスンが製品発表した75インチ4K2Kテレビと同じパネルを使ったモデルも展示されていた。

 このCESにおいて、各社が”高精細な4K2Kパネルを活用する”方向でのコンセンサスを得たのは間違いないが、単純にキーワードとしての”4K2K”は、すでに中国メーカーにキャッチアップされているということだ。これまで画質面の新しいトレンドは主に日本メーカーが作り出し、まずは先行者利益とともに製品化を進めてきた。

 しかし、4Kはこれからスタートというのに、すでに中国メーカーまで大々的に訴求を始めているのだから、本当にていねいに作られた高画質テレビ(≠高スペックな最新テレビという意味ではない)が、この先も入手できるのだろうか? と心配になってくる。実際、中国メーカーの4K2Kディスプレイは、見た目のデザインこそ優れているものの、画質は褒められたものではない。

 褒められた画質ではないのに、4K2Kの大画面というスペックを見た時、来場者の反応はほぼ同じもの。「すごく高精細できれいだね」と、どの製品を見ても言うのだから、果たして高画質で差異化できるの? という疑問が出て当然だと思う。

 しかし、個人的にはあまり大きな心配はしていない。というのも、日本のメーカーは各社ともトップシェアを取りに行くのではなく、しっかりとテレビを通じて自社製品の品質について訴求していく方向で戦略を組み直しているからだ。メインストリーム以下の価格帯で無理をして、シェアを増やす必要はないいという考え方だが、もちろん各社の取り組みの方向は微妙に異なる。

 例えばソニーは、このCESに参加したメーカーの中でも、もっとも”高画質”に対して積極的な姿勢を見せたメーカーだ。もちろんボリュームゾーンにも商品は投入するが、マーケティングの中心は2000ドル以上の高価格帯とのこと。となれば、必然的に大画面へと絞られてくる。北米では60インチ以上の市場が急拡大しているためだ。

 ”4K2Kへの流れ”は、こうした大画面化の進行とともに進んでいる。大画面になってくると、同じフルHDでも物理的な画素が増えていき、視聴スタイルによっては画素が粗く見えて画質が下がったように見えてしまうからだ。

ts_55X900A.jpg ソニーが北米向けに発表した「X900Aシリーズ」。両サイドの磁性流体スピーカーが目をひく

 ソニーは65インチ、55インチ液晶パネルを採用する「X900Aシリーズ」を発表したが、4K2Kという解像度以外にも、この製品には2つの注目すべき長所があり、なるほどソニーはそっちの方向に行く覚悟をしたのか、と気付かされる。ソニーは自社技術と他社が生産する汎用部品を組み合わせることで、独自の高品位テレビを開発する方向へと進んでいる。

ts_qdvision.jpg QD Visionの発光半導体「Color IQ」。純度の高い青、緑、赤の波長が取り出せる

 例えばトリルミナス技術。これは米QD Visionの発光半導体「Color IQ」を採用したもので、ガラスに微細な半導体粒子を含む樹脂を封入したデバイス。特定波長の光を当てると別の波長の色に変換する機能を持ち、高純度の光波長を得られる。RGBバランス良くこの光を作り、混ぜることで広い色再現領域を実現できる。

 この技術と4K2Kの解像度を生かすため、ソニーは4K2Kでリマスターされたブルーレイ(解像度はフルHD)を「Mastered in 4K」としてシリーズ化するが、このシリーズはフィルムが持つ色再現域をフルに活用するため、業界標準規格”x.v.YCC”で映像を収録する。上記の技術と組み合わせてフィルムが持つ色合いを再現しようというわけだ。

 さらにX900Aの両モデルにはダンパーレスの磁性流体ドライバーを採用した高音質スピーカーを採用している。このユニットは高レスポンス、低ひずみで、一聴して薄型テレビとは思えない素晴らしい音を出していた。デザイン面でもスピーカーをうまく引き出しているなど、新たな領域へと一歩踏み出した製品に仕上がっている(続く)。

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