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8Kパネルの裸眼立体視ディスプレイが登場FPD International

» 2013年10月23日 22時36分 公開
[ITmedia]

 フラットディスプレイの総合展示会「FPD International」が、横浜・みなとみらいの「パシフィコ横浜」で開幕した。今回は韓国や台湾のパネルメーカーが出展を見合わせ、フラットパネルの展示会場としてはいささか寂しい状況だが、代わりに「ロボットゾーン」や日産の次世代エコカー試乗会などの企画もあり、スーツ姿のビジネスマンを中心ににぎわっている。

展示会場(左)。サイバーダインなどが出展しているロボットゾーン」(右)

 中でも常に人垣を作っていたのがフィリップスブースだ。同社はドルビーとタッグを組み、「ドルビー3D」技術を訴求。昨年は56インチの4Kパネルを使った裸眼立体視ディスプレイを展示していたが、今年はシャープ製の85インチ8Kパネル(7680×4320ピクセル)を使った技術展示で注目を集めている。

フィリップスブースの8Kパネル採用ドルビー3Dの技術展示

 展示機は、カマボコ型の細かい凹凸を持つシート(レンチキュラーレンズ)をパネル表面にはり、光の方向を限定することで左右の目に個別の映像を届けて視差を作るレンチキュラー方式の裸眼立体ディスプレイだ。フィリップスは同方式に関連する特許を複数保有しており、他社へのライセンス提供も行っているという。

 一般的なレンチキュラー方式では、視点(立体視できるポイント)を増やせば増やすほど画素数が必要となり、パネル解像度に対して実際の3D映像は解像度が落ちてしまう。ところが展示機は、「28視点“相当”を確保しつつ、3D映像は4Kに近い解像度を実現した」(ドルビー)のがポイント。幅広い視野角を持ち、家族でテレビを囲むようなケースでも、皆が3D映像を楽しめる。

4Kパネル採用の55インチ試作機。フルHD相当の裸眼立体視が可能だという

 ドルビーでは、「裸眼立体視ディスプレイは、数年前に一度“離陸するか”と思わせて飛べなかった経緯がある。しかし十分な解像度を持つ3Dディスプレイを作ることが可能になり、再びテレビメーカーにも興味を持ってもらえるのではないか」と話す。具体的なメーカーは示していないが、「テレビメーカーやSoCメーカーとの交渉も進んでおり、あまり遠くない将来に実際の製品が登場する見通しだ」とも話していた。なお、実際の製品は4Kパネルを使用したもので、フルHD相当の裸眼立体視(28視点)が可能だという。

RGB+Wで効率化した有機ELパネル

 ジャパンディスプレイ(JDI)ブースでは、スマートフォン向けの5.2インチ・フルHD有機ELディスプレイを初めて披露した。画素密度は423ppi。白色OLEDにカラーフィルターを組み合わせる方式で、独自の「White Magic」技術により、低消費電力を実現したという。

ジャパンディスプレイブースと5.2インチ・フルHD有機ELディスプレイ

 White Magicは、一般的なRGBにW(ホワイト)を加えたピクセル構造を持ち、この白を活用して効率化を図るというもの。ざっくりと説明すると、「例えばピンクの色を出したいとき。従来方式ではRGBのすべてを使ってピンクを作るが、White MagicならWとRだけでいい」(同社)。

 JDIでは、この有機ELパネルを「量産開発中」としており、近い将来の製品化を示唆した。また将来的には「10インチ程度までは想定している」としており、タブレットやPCなどまで用途を拡大する方針のようだ。

4Kパネルも多様に

 JDIブースでは、タブレットやPCでの利用を想定した12.1インチの4K対応液晶パネルも参考展示した。解像度は3840×2160ピクセルで、画素密度は365ppi。パネルコントラストで1000:1というスペックだ。2台の試作機を並べ、それぞれ静止画と動画を表示して表示品質をアピールしている。

JDIの12.1インチの4K対応液晶パネル(左)。パナソニック液晶ディスプレイのプレミアムな4K対応IPS液晶パネル

 一方、パナソニック液晶ディスプレイでは「プレミアム」をうたう55インチ、31インチの4K対応IPS液晶パネルを展示している。パネルコントラストで1500:1(ダイナミックコントラストではない)、色域はDCI(デジタルシネマ推奨色域)の97%をカバーするというハイスペックパネルだ。同社では、医療用や放送業務などの特定用途向けに販売する計画だと話していた。

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