例年、CESでコンシューマー向けのテレビやPC、スマートデバイスといった製品展示を行っていた東芝だが、今年はこれら分野での新製品や戦略発表のプレスカンファレンスは行われず、展示ブースもB to B向けソリューションの紹介が行われるにとどまった。家電ショウであるCESの展示としてはやや寂しい印象があるが、技術的に興味深いものもあり、来場者らの大きな関心を寄せられていた。
東芝ブースへと近付いてまず目に付くのが、同社がコミュニケーションロボットと呼んでいる「地平アイこ(Chihira Aiko)」によるライブパフォーマンスだ。ロボットには姿勢制御やマニピュレーターのほか、顔の表情を細かくコントロールする仕掛けが多数施されており、豊かな表情変化や動きで来場者へとアピールしている。日本では昨秋の「CEATEC JAPAN2014」で展示も行われていたが、ここラスベガスで行われているCES会場では通路を完全に塞ぐほどの見物人が多数押し寄せる人気コーナーになっており、妙な可能性を予感させなくもない技術展示だったといえるかもしれない。
今年のCESではウェアラブルデバイスが多数出展されており、その中でもとくにグラス型のデバイスが従来よりも一気に増えていたことが印象的だった。「東芝グラス」もその1つで、こちらもやはりコミュニケーションロボットと並んで来場者の関心を集めていたようだ。ヘッドアップディスプレイ(HUD)として装着者のグラス上に追加情報をカラーで表示するタイプのデバイスだが、「Google Glass」やソニーの「SmartEyeglass Attach!」とは異なり、プリズムを視界に被せるのではなく、フレーム横のデバイスからグラス上に映像を投影する仕組みとなっている。そのため組み合わせ可能なグラスのバリエーションが多いのも特徴の1つだといえる。どのような形で製品展開していくかについてはコメントがなかったが、今回の一連の展示のメインテーマがB to Bであり、やはり業務用途での展開が中心になると考えられる。
昨年までの東芝ブースではショウルームや街頭での設置を念頭にしたディスプレイウォールやサイネージ関連の展示が多かったが、今年はそれらに代わり「バーチャルフィッティング」のソリューションデモが公開されていた。最初に人物の基本情報を取得すると、後は目の前の画面上で人物の動きに合わせて洋服が追尾するように動き、まさに仮想世界での試着が行えるようになっている。B to B向けディスプレイソリューションの発展系といえるもので、非常に興味深い。
そして今回、CES開催前に予告されて話題になっていたのが2D/3Dの切り替えが可能なディスプレイソリューションだ。スイッチの切替1つで、1つのディスプレイが4Kディスプレイまたは裸眼視3Dディスプレイのいずれかに変化する。本来の解像度を複数分割して擬似的に3D映像を作り出す技術は、過去の東芝のテレビ製品などでも採用されている。テレビに設置されたカメラで視聴者の位置を判断し、擬似的に視差を作り出すことで立体映像を錯覚視させる仕組みだ。
だが、こうした技術の弱点として、映像が全体に暗くなってしまったり、2D表示時のフル解像度での表示の画質が落ちたりといった問題が出てくる。今回展示されていたディスプレイでは2Dと3Dの2つのモードで異なる光学特性を持つ液晶レンズを作り出し、これを切り替えることでほとんど劣化なしに両者を切り替え可能だという。この仕組みを実現可能なパネルそのものは従来とあまり変わらないコストで製造可能ということで、今後採用例が増えてくることで一般に利用されるようになるかもしれない。
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