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サウンドキャラクターが変わった! ベイヤーダイナミック「T1 2nd Generation」の音に驚いた野村ケンジの「ぶらんにゅ〜AV Review」(2/2 ページ)

» 2015年11月25日 12時15分 公開
[野村ケンジITmedia]
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高域特性がより自然に

 素晴らしい。本当に素晴らしい。こういうサウンドを待っていた。感嘆詞ばかりで本当に申し訳ないのだが、一聴したとたん、そういった思いがあふれてしまった。

 何を隠そう、恥ずかしながらも筆者は「T1」が苦手だったのだ。とてもスピーディーな反応とソリッドな低域、それでいて顕微鏡をのぞいたかのような解像感を併せ持つオリジナル「T1」は、それはそれで素晴らしいサウンドなのだが、あまりにも高域の特性が鋭利すぎて、(あくまで個人的な話だが)長時間聴き続けることができなかったのだ。

 それに対して、「T1 2nd Generation」はオリジナル「T1」のもつメリハリの良さ、ひずみの少なさなどのスペック的なクオリティーの高さを維持しつつ、高域特性をより自然な印象に変え、全体のバランスを整え直したイメージ。随分と聴きやすいサウンドキャラクターになってくれたのだ。

 それでいて、ベイヤーダイナミックならでは、いや「T1」ならではというべきか、緻密(ちみつ)な階調表現や音場表現の自然さ、キレの良さは健在。かなり無敵な存在へと進化しているのだ。おかげで、さまざまなジャンルの音楽が、それぞれの魅力を最大限に発揮したサウンドで楽しめる。例えばニルヴァーナを聴くと、ハードな演奏とカート・コバーンのボーカルがいつもより強い一体感が感じられ、すさまじいまでのグルーブ感が味わえる。いっぽう、ジャズの演奏はやや冷静、客観的な視点ながら、ステージの盛り上がりや熱気はしっかりと伝わってくる。ユニークなのはテクノポップ系だ。TMネットワーク「Get Wild 2015 -HUGE DATA-」を聴くと、普段よりもやたら音が分厚く感じる! そう、アナログシンセならではの強烈なサウンドが、何のフィルターもなくダイレクトに伝わってきてくれるのだ。これはいい。

バランス接続でS/N感がさらに向上

 しかしながら、バランスケーブルに接続し直してさらに驚いた。S/N感がはっきりと分かるほどに向上、音場的なフォーカスも高まり、音楽的な表現がより豊かになってくれたのだ。例えばTMネットワークは、1つ1つの音色がピュアになったため、音場的な広がり感を感じるようになったし、さらにTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDの「BEAUTIFUL=SENTENCE(IS IT A BEAUTIFUL WORLD )」を聴くと、きめ細やかにコントロールされた音場定位の様子が手に取るように分かるようになる。同時に、女性ボーカルがとても歯切れ良く、ほんのちょっとハスキーでほんのちょっとつやっぽい歌声なのが、とても上品に感じられる。

 その一方で、ピアノや弦などのアコースティック楽器も魅力的な音色を奏でてくれる。特にピアノは、敏感で素直な高域特性のおかげか、倍音成分のノリの良い、伸びやかな音色を響かせている。一方、チェロなどは音色がとても自然でディテール表現のきめ細やかな、とてもリアルな演奏が楽しめる。特に温度感が高いわけでもなく、中域を強調したバランスでもなく、ここまでボーカルやメイン楽器がリアルに感じられるのは、素晴らしいかぎり。こと「T1 2nd Generation」に関しては、バランス接続をメインにすることをオススメしたい。

 このように、ヘッドフォンアンプに対する要求に多少のハードルが存在するものの、「T1 2nd Generation」は、音質的なクオリティーの高さと音楽的な表現力の高さを、見事なバランスで両立したモデルに仕上がっている。素晴らしいの一言に尽きる、優秀な製品だ。


ヘッドフォンをしっかり守る付属のケース

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