何度も議論した「色」、サクサク感を実現できた理由――「INFOBAR A01」開発の舞台裏:INFOBAR A01発売記念トークセッション(2/2 ページ)
6月30日から7月3日まで東京ミッドタウンで実施されている「INFOBAR A01」のタッチ&トライイベントの初日にトークセッションが行われた。デザインで一番苦労したところは。iida UIのこだわり、そして理想の“速さ”を出すのに中村勇吾氏が用いた秘策とは。
縦スクロールを採用した理由
Androidのホーム画面は横スクロールが基本だが、iida UIでは縦にスクロールするのが特徴の1つ。「iPhoneやAndroidが横スクロールだから、そういうイメージがあるけど、ブラウザやフィーチャーフォンを見ていると、普通は縦じゃないかと」と中村氏はその理由を話す。画面の左右が固定されている方が見栄えが美しく、横スクロールでアイコンがページをまたぐ様子が美しくないというのも関係しているようだ。
一方で、縦スクロールだと、アプリやウィジェットを多く配置するほど、目的のコンテンツにアクセスするのに時間がかかる恐れがある。そこで採用したのが「セクションバー」。iida UIではアプリのカテゴリーを作って分類でき、セクションバーを長押しするとバーが一覧表示され、触れたバーへ瞬時にジャンプできる。「スマートフォンではアイコンの配置が人それぞれ違う。バーがあれば、自分好みにアプリを集約できる」と増田氏は利便性を話す。
石野氏が「iida UI対応のウィジェットはどこまで拡張するのか」と質問すると、中村氏は「今はどんどんiidaウィジェット対応のアプリを開発してもらっている。iida用のSDKも公開されている」と説明。増田氏も「そういうアイデアを形にしたいと思い始めている。きちんと提供できる形を作りたい」と話した。
iida UIのホーム画面には、プリインストールされたアプリだけではなく、当然ながら自分でインストールしたアプリも加わる。どのアイコンもiida UIの中に違和感なく収まるよう、「“座布団”(アイコンを区切るパネル)を敷いてシャドウを入れた」(中村氏)。さらに、ホーム画面のテーマは変更することもでき、「Webサイトで新しいテーマをダウンロードできるように準備をしている。もふっとした毛布のような素材もある」(中村氏)とのことなので期待したい。
このほか、フォントやサウンドもオリジナルの素材を採用している。音楽は「何十案も出して、INFOBAR A01のスピーカーに合うようにチューニングしたものもある。ロボットボイスや、絶対に起きる目覚まし時計(耳に残る音)もリクエストした」などこだわった。
今後はHTMLでUIを実装させたい
石野氏が今後のスマートフォンにおけるUIの展望を尋ねると、中村氏は「Webで実装したらいいんじゃないかと思う」と答えた。「HTMLなら多くの人が開発できるし、Googleの変化にも柔軟に対応できるのでは。INFOBAR A01のホーム画面も当初はHTMLで実装したかったが、動作速度を考えるとしんどかったので、今回は見送った」
増田氏は「中村ワールドを見て、いろいろなUIがまだまだあることが分かった」と話した。「スマートフォンがこれだけ急激に伸びている中で、どのAndroidを見ても、ホーム画面は4×4のグリッド表示が基本。実はINFOBAR A01では縦が3列(横は5行)になっている。奇数にすることで、大きいアイコンと小さいアイコンを非対称にできる」。一方で「これがベストのUIかは分からない」との見方も。「iida UIは、AndroidのUIに対する1つの提唱。いろいろなUIが出てきて、本当に使いやすいものに進化していくプロセスの1つ」と話し、UIのさらなる進化に期待を寄せた。
こうした自由な発想を取り込めるのがAndroidのすごいところだと石野氏が述べると、中村氏もそれを実感したようだ。「iida UIを提案した当初は、Androidの規約もそこまで知らなかったので理想形を投げたが、意外とそのままできちゃった」
追加色は? タブレットは?
一般の参加者から「開発で一番実現するのが難しかったところは?」と質問されると、増田氏は「デザイナーさんのコンセプトをどれだけ忠実に再現できるか」と回答。「携帯電話の外観には、縦と横、厚さ、アールの出し方などがあるが、これらがほんの少し変わっただけでも別物になってしまう。最初のコンセプトモックでは理想形を考えるが、それに中身を押し込まないといけない。INFOBAR A01の場合はタイルキーが特徴的だが、キー間にスペースがある多くのケータイと違い、スペースなしでキーを埋めていくのは難しい。縦横比や厚さをいじると別物になる。すべてを実現するのは難しいので、コンセプトに近づけてどこをどう妥協するかという作業になる」と苦労を話した。「それはUIも同じで、ディテールをいかに詰めるかが一番時間がかかった」(中村氏)
一方で、理想を具現化する過程は「エンジニアにとっては面白いもの」でもあるという。「初代INFOBARの開発当初はエンジニアからは『できない』と言われたが、深澤さんの想いを徐々に説明していくと、エンジニアは職人なので『がんばります』と言われる。あるところから物作りが加速する」(増田氏)。
「少し気が早いけど、初代INFOBARやMEDIA SKINのように追加色がでる予定は?」との質問には「売れ行き次第で追加色が出ることもあるが、そもそも4色を作るのに相当時間がかかった。マルチカラーの組み合わせはすごく難しく、しかも今回はボタン3つしか変えられない。色の並びやコントラストも含め、『これだ』といえる色にするために、ものすごい試作を繰り返した。深澤さんに今お願いしたら『またあの苦労するの?』と言われるかもしれない(苦笑)」と増田氏が話すほど、色の決定には苦労したようだ。中村氏は「深澤さんと話していて興味深かったのが、NISHIKIGOIで一番きた!と思ったのが水色だったようで、絶妙な水色が偶然出たと。ただの水色じゃなくて、ちょっと紫っぽい、マゼンタが入っているような色。ちょっと違うだけでバランスが変わる」と話していた。
「INFOBARでタブレットが出たら面白そう」との意見が挙がると、増田氏は「面白い発想なので検討したい。INFOBAR A01はアイコンでINFOBARを体現したが、確かに大きいタイプでもINFOBARチックにできる」とした。
企画、デザイン、そしてUIとさまざまな面からINFOBAR A01への熱い想いが語られたトークセッションは大盛況のうちに終わった。カラーバリエーションをじっくり見比べたい。iida UIはどのくらい快適なのか。どんなアプリやウィジェットがあるのか――。気になる人は、ぜひタッチ&トライに足を運んでほしい。
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