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恐竜絶滅の原因は「ユカタン半島の地球外天体衝突」 国際グループが「論争に終止符」

» 2010年03月05日 16時57分 公開
[ITmedia]

 約6550万年前に恐竜が絶滅した原因は「メキシコ・ユカタン半島で起きた地球外天体の衝突」と結論──東北大、千葉工業大の研究者ら世界12カ国・41人の専門家による研究結果が、3月5日に米科学誌「Science」電子版に掲載される。白亜紀末に恐竜を含む大量の生物種が絶滅した原因をめぐってさまざまな説が唱えられてきたが、研究グループは「論争は決着を迎えた」と自信を見せている。

 白亜紀末に起きた大量絶滅の原因として、ノーベル物理学者のルイス・アルバレズらは1980年、「直径10キロの地球外天体の衝突が引き起こした環境変動が原因」とする説を提唱。白亜紀と第三紀の境目の地層(K-T境界)から多量のイリジウムが見つかったのが論拠になった。91年にはメキシコのユカタン半島に、直径180キロのクレーター「チチュルブクレーター」が発見された。この「チチュルブ衝突」が恐竜絶滅の原因とする説は、日本でもテレビ番組が恐竜絶滅の原因として紹介したことなどでよく知られるようになった。

 一方、同時期にインドのデカン高原を形成した大規模な噴火(デカントラップ)が原因とする説や、複数の地球外天体なども唱えられ、論争になっていた。

 研究グループは、各国の地質学や古生物学、地球物理学、惑星科学などが学際的に集まり、世界中で報告された地質学的痕跡や衝突クレーターの物理特性、数値モデルの結果などを再検討した。

 その結果、「チチュルブ衝突による環境変動で大量絶滅が統一的に説明できることが明らかになった」という。根拠として(1)世界約350地点で報告された白亜紀末の地層にチチュルブ衝突起源の物質が含まれる、(2)衝突と大量絶滅のタイミングは厳密に一致していることを確認、(3)数値計算によれば、衝突で大気中に放出された粉塵や森林火災によるすすなどは、光合成生物の活動を長期間停止させうる──という。食物連鎖のベースとなる光合成生物=植物プランクトンが死滅したことで、恐竜などの大型生物の食料がなくなり、絶滅したと結論した。

 一方、火山噴火は約100万年にわたったものの、環境に与えた変化は小さく、火山活動が最も活発だった時期には大量絶滅が起きていないことなどから、絶滅を説明できないとして退けた。また複数の天体衝突説も、白亜紀末を含む1000万年間のイリジウム濃集度を調べた研究から、この間の巨大天体衝突はチチュルブのみだったと結論した。

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