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» 2010年04月16日 14時08分 UPDATE

「初音ミクAppendは途中経過」――開発者が語る6つの新しい声とイメージ (2/2)

[松尾公也,ITmedia]
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ミクAppendのビジュアルがフィギュアになった理由

 4月30日の発売に向け、クリプトンは少しずつミクAppendのデモソング、ビジュアルを公開している。公式ページにあるデモソングは16日現在6つ。公式ビジュアルは4つ。透明なフィギュアの写真、薄く色づいたフィギュア、それをイラストとして彩色したものと、ミクのシャドウのイラストだ。


画像 原型師の浅井真紀さんがデザインした透明なフィギュア
画像 薄く色づいたフィギュア
画像 ねこいたさんが彩色したイラスト

画像 最新のものはシャドウのイラスト

 初音ミクの公式ビジュアルはイラストレーターのKEIさんが描いたものだが、初音ミクAppendではこれが透明感のある3Dのフィギュアに置き換わっている。このあたりの事情について聞いた。

 「初音ミクについては、KEIさんものも含め、いろいろな絵師さんが愛着をもって描いているものがたくさんある。ひとりの絵師さんに決め込んで、その人にクオリティの高いものを描いてもらうというのはニュアンスとして違う」(佐々木さん)

 そこで「あまり前例がないこと」を考えた。初音という名前はそもそも、「はじめての××」がコンセプト。フィギュア原型師として有名な浅井真紀さんが、フィギュア「Miku(Zero-Vocalist ver)」のデザインを担当している。

 「フィギュアの原型師の方々というのは、絵があるものをフィギュアにする、ある意味2次創作がお仕事。フィギュアを作りつつデザインもしてもらうということであれば、初音ミク周辺のクリエイターさんたちとかぶらないで見せることができるのではないか」というのが、「フィギュアが元絵」という発想の出発点だったという。

 さらに、このフィギュアをベースにイラストにしたものも用意している。フィギュアをベースにして、「かわいい絵を描いてもらう、とか萌え的な記号をラインとして出してもらうことではなく、質感、色の見え方などを出してもらう」という作業を、イラストレーターのねこいたさんにお願いし、彩色してもらった。ねこいたさんは、パッケージの「初音ミク」のロゴ加工も担当している。

 「ねこいたさんはエレクトロニカが好きなDTMユーザー。色の見え方など絵の質感などについて、『ヌルっと』とか『メタリックな感じ』といった言葉でやりとりをしている」という。「フィギュアはモノとしてある現実的なもの。そこに非現実的な、微妙なかすれ具合、エフェクティブな光り方を追加したくて、ねこいたさんのセンスで何枚か絵を描いてもらっている」。うちの1枚が、現在3つ目のビジュアルとして公開されているものだ。

 「別の絵師さんたちに独自のスタイルで色をつけてもらって、公式ページで外伝的に見せていく方法はあるかな」と、佐々木さんはほかの絵師とのコラボレーションの可能性も示唆。「Appendミクが腰につけているものはなにか?」といった、新しいビジュアル要素に関する情報は、今後出てくるようだ。

 「KEIさんが描いた初音ミクを更新するようなものではぜんぜんなくて、初音ミクがつくられている途中みたいなニュアンスを出せるといい。中途半端な初音ミクみたいなところを表現したい」と佐々木さんは話す。

「数が気にならなくなる世界」へ

画像

 「途中」というキーワードはビジュアルだけではなく、歌声自体にも適用されるようだ。

 「Append自体、途中経過のリポートでしかない」と佐々木さん。「最終的に7種類の声でフィックスではないし、今後縦横無尽に増えていき、数が気にならなくなる世界になってくる。いまは(VOCALOID Editorの)インタフェースの中で(Singerを)切り替えて使わなければいけないけど、音節の中でデータベースのAからBの雰囲気へと変化していくようなことが、どこかで実装されていくと思う。そこに向けてデータベースを積み上げていく作業が必要になる」

 例えば「Darkについても、ソフトなDark、ニュートラルなDark、ハードなDarkみたいな形」というのが考えられる。「今回は音の差が分かりやすく、1つひとつ名前をつけているが、1つの曲の中でシームレスに切り替えて、少し強くなった、少し弱くなったというレイヤーのような感じで扱えるようにしたい」

 佐々木さんは「最終的に人間の歌手の節回しとか歌い方の癖みたいなものにVOCALOIDが歩み寄っていく段階」を想像している。初音ミクAppendは、その段階にステップアップするためのデータ取り、という意味もある。

 人間と区別がつかない表現力をもたらすのが、「息の成分と母音の成分とノイズの成分を分離してブレンド」「サンプリングのアーティキュレーションをガンガン切り替えていく」、そして「コロンブスの卵的に画期的な物理モデリング」など、佐々木さんが挙げるどの手法によって実現するかは分からない。それでも初音ミクAppendがもたらす新しい表情・感情を手にしたボカロPたちが、表現力をさらに高めた作品を出してくるのは確実だ。

 4月30日に届き、ゴールデンウィーク以降に投稿されてくる作品を見た上で、クリプトンの次なる動きが始まる。「いったんAppendを始めてしまった以上、データベースが1個のをいまさらやってもしょうがないし」という佐々木さんが次に取り掛かるのはどのVOCALOIDプロジェクトだろうか?

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