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iPhone 4アンテナ問題、ジョブズ氏発言がさらに議論呼ぶ

» 2010年07月22日 07時30分 公開
[Michelle Maisto,eWEEK]
eWEEK

 Appleのスティーブ・ジョブズCEOは7月16日に緊急の記者会見を招集し、同製品に問題があるとの見方に異議を唱え、メディアがアンテナ問題を広く報道したことを非難し、アンテナ設計の問題に対処するアクセサリを無償配布すると発表した。この会見は、iPhone 4を取り巻く問題を抑えるのが狙いだった。

 だがそれどころか、ジョブズ氏の発言はさらに議論を呼び、競合他社ばかりかアナリストからも批判された。彼らは、同氏は悔恨の情を示さず、自社よりもメディアを非難し、競合製品のアンテナ設計にも同じ問題があると不当にレッテルをはろうとしたと指摘した。さらに市場調査会社IDCのアナリストは、アンテナ問題のために、ユーザーは最新のiPhone 4へのアップグレードを控えているとみている。これはAppleと、顧客基盤を拡大しようとする同社の取り組みに打撃を与えるかもしれない。

 ジョブズ氏は記者会見で、この問題を皮肉を込めて(ウォーターゲート事件をもじって)「アンテナゲート」と呼び、iPhone 4のアンテナ設計をめぐって高まる批判を押さえ込もうとした。会見のある場面では、iPhone 4の受信感度の変動は普通のことだとし、ほかの多数のスマートフォンも同じだと主張した。Research In Motion(RIM)の共同CEOのマイク・ラザリディス氏とジム・バルシリー氏はこの比較を批判している

 「RIMはAppleがiPhone 4で用いたような設計を避け、特に電波状況が悪い場所で通話が切れるリスクを減らす革新的な設計を採用してきた」と両氏は16日の共同声明で述べていると、Crackberry.comは伝えている。「1つ確かなのは、RIMの顧客はBlackBerryを使うときに、接続を維持するためにケースをつける必要はないということだ」

 この発言は、「Bumper」を無償配布するというジョブズ氏の申し出についてのものだ。その申し出の一方で、同氏は、iPhone 4はそれでもAppleが作った中で最高の携帯電話だと主張していた(アンテナ感度の問題でAppleCareに電話してきた購入者が何人いたかというと、わずか0.55%だ――ジョブズ氏はそう言った)。

 J. Gold Associatesの主任アナリスト、ジャック・ゴールド氏も、Appleの行ったスマートフォンの比較をあまり評価していない。同氏は19日のリサーチノートで、ジョブズ氏はiPhone 4がいかに優れているかを語るのにかなりの時間を費やし、「世界最高のスマートフォンだとまで言った」と述べている。ジョブズ氏はその後、競合デバイスのアンテナと比較し、業界のどの企業も同じ問題を抱えていると主張した。

 「確かに物理は物理であり、電波をコントロールするのは難しい。だがジョブズ氏がデモした端末はいずれも、市場で同じ問題を起こしたことがないし、Consumer Reportsに受け入れられないと言われたこともない」とゴールド氏は述べている。「スティーブ、残念だが二兎は追えない。確かにどんな携帯電話も電波が悪い場所では多かれ少なかれ問題がある。だが他社は、パーフェクトだとも、これまでで最高の携帯電話だとも言っていない」

 ゴールド氏は、ジョブズ氏が示した「iPhone 4は3GSより通話切断率が高いが、その差は100回に1回未満」というデータにもかみついている。ゴールド氏は簡略化のためこの数字を1%と仮定した。携帯電話ネットワークで通話が途切れる率の平均は2〜4%だ。

 「iPhone 4が通話切断率を1%押し上げるとすると、iPhone 3GSと比べて切断回数が25〜50%増えることになる」と同氏は言う。「大幅な切断の増加であり、非常に重大だ。これは無視するべきではない。エンドユーザーの満足度において大きな問題になる可能性を示しており、AppleとAT&Tの両方にとって問題を悪化させる」

 ユーザーは本当に不満なのだろうか? ジョブズ氏は、iPhone 4の返品率がわずか1.7%であることを考えると、メディアはアンテナゲートを大げさに報じていると示唆した。

 IDCの16日の報告書によると、iPhone 4はAppleで過去最高の売り上げを記録しているとはいえ、アンテナ問題は売り上げに響いているようだ。IDCの簡易調査によると、iPhoneユーザーの66%がiPhone 4の購入を遅らせるとし、「新しい端末のリリースに伴う通常のアップグレードサイクルを引き延ばしている」という。

 だが、これに対して、iPhoneを持っていないユーザーの74%がiPhone 4購入を遅らせないと答えているとIDCは報告している。

 アナリストは、Appleが成長を続けるには、従来のファン層に頼るのではなく、新たな顧客を取り込むことが重要だと指摘してきた。だが、その2つの層がどうなるかは、時間がたてば分かるとIDCは示唆している。

 IDCのプログラムディレクター、ウィリアム・ストフェガ氏は、「AppleがiPhone 4のアンテナ問題を軽減するために顧客に対応していることを喜ばしく思う」とし、この問題を注視していくと語る。「今後数カ月、アンテナ問題へのAppleの対応の影響を監視していくのは興味深い」

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