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ジャンプ作品など無料公開へ 赤松健「Jコミ」、集英社や講談社も協力

» 2010年12月06日 16時33分 公開
[岡田有花,ITmedia]
画像 赤松さん。ラブひなは「品切れ・重版未定」だったのを出版社に絶版扱いにしてもらい、Jコミで配信したという

 「漫画文化を絶やさないようにしたい」――漫画家の赤松健さんは12月6日、絶版漫画を無料配信し、広告収益を作者に還元する「Jコミ」について説明する記者会見を都内で開いた。「ラブひな」に続き、今後はジャンプ連載作品なども公開。広告を出稿する企業を募っている。正式オープンは来年1月10日の予定だ。

 Jコミは、絶版漫画に広告を入れ、PDF形式で無料配信するサイトで、11月26日にオープン。まずβテストとして「ラブひな」全巻(1〜14巻)を、広告付きで無料公開。初日に45万ダウンロード(DL)あり、12月3日までに170万DLを突破。広告クリック率は10%近かったという。

 年内にも実験第2弾「β2テスト」を実施。新たに、(1)「週刊少年ジャンプ」(集英社)に2007年度に連載されていた少年漫画1作品(作品名は未公開)と、(2)新條まゆさんの読み切り少女漫画(約50ページ)、(3)青年漫画「交通事故鑑定人 環倫一郎」(樹崎聖さん漫画、梶研吾さん原作、集英社)――の3作品を、広告入りPDFで無料配信する。

 「ラブひな」の配信実験時は広告を無料で出稿してもらっていたが、β2テストでは、企業から広告費をもらって広告を掲載し、広告代理店の手数料を除く広告収益はすべて作家に分配。その額を公開する。収益の見通しを示した上で多くの漫画家の参加を募り、来年1月10日の正式サービスにつなげる計画。漫画内で広告を配信したい企業も募集中だ。

 β2テストは、少年ジャンプの佐々木尚編集長から賛同を得るなど集英社も協力。講談社の取締役陣からも協力を取り付けたといい、「参加する漫画家の安心感につながるのでは」赤松さんは期待する。

「漫画文化を維持したい」「違法配信に対抗」

画像 赤松さんと、アニメ「ラブひな」で成瀬川なる役を演じた声優の堀江由衣さん。堀江さんは「買ったばかりのiPhoneで早速ダウンロードしてみたい」と話していた

 「水曜日に電車に乗ってもみんな、(水曜発売の)マガジンやサンデーを持っていない。小さい子は、漫画の読み方が分からなくなっていると聞く」――赤松さんは、漫画の将来に「危機感を持っている」と話す。

 Jコミは、「漫画を読むという文化を絶やさないようにする」ための試み。絶版という「埋もれてしまう寸前の漫画を救済し、漫画を文化として救済していきたい」と意気込む。

 同時に、ネット上で違法に流通している漫画ファイルへの「唯一の対抗手段」とも。ファイルはDRMフリーでコピーし放題。コピーされればされるほど広告も複製され、漫画家の収益が拡大するというモデルだ。

 「もうけようとは思っていない」ため、収益はすべて作家に還元。Jコミの運営費は、トップページのバナー広告などからまかなう計画だ。

 来年1月の正式公開以降は、ユーザーがアップロードした漫画PDFファイルに広告を付け、作者の許諾を得た上で配信したり、翻訳漫画を海外に配信したり、原作者が許諾した同人誌もJコミから配信する――といったことにも挑戦していきたいという。

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