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「デイリーポータルZ」、ノジマ傘下でどうなる? どうする? 編集長・林雄司さんに聞く(3/5 ページ)

» 2017年02月17日 11時30分 公開
[岡田有花ITmedia]

 どんな考え方かというと……去年の暮れに、GoogleとかFacebookが、1年の振り返り動画を作るので、まねして作ってみたんです。「サイトがなくならないといいな」って思いながら。

 ナレーションは英語なんですけど(笑)。このナレーションに書いたことが、伝えたいことですね。当たり前のことを観察したりとか、当たり前のことを疑ったりとか。うまくやる方法を探すサイトなのかなと思っていて。

画像 「私たちは新しい道具や新しい遊び方を作りました」
画像 「それは、世界を変えないかもしれません」
画像 「でも、少し生きやすい世界にしました」

 「太く短い人生と細く長い人生、どちらがいいか」ってよく言いますけど、太くて長い人生が一番いいに決まってるじゃないですか。太くて長いみたいな選択肢を見せたいなと思っていて。ズルしてもうまいことやるとか、オルタナティブな選択肢があるんだぞと示して、みんなが悩んでいることとか、たいへんだと思っていることが、実はそんなでもないということを伝えたいなということを……年取ったからかな? そういうのを思いますね。

 デイリーの記事でいうと例えば、「飲み会はもうチャットでよくないですか」とか、新しい方法や便利な方法を考えたり。地味な仮装の「地味な仮装160人のハロウィンパーティ」とか。「なんだ、服装だけでこんなにそれっぽく見えたりするんだ。人は見た目なんだな」って。

――確かに、チャットの飲み会なら人見知りでも気楽そうだし、ウェーイ系のハロウィンは苦手でも、地味な仮装でいいならやってみたいと思えます。「常識」や「当たり前」に息苦しさを感じた時、デイリーを見ると「こんな方法があるのか」とか「これでいいのか!」って思えるかもしれません。

 そういう意味で、このサイトがあってもいいのではと思うんですよね。「そのやり方以外にも、何かあるんじゃないの?」みたいなことを提案するメディアとして。

画像 伝説のタイアップ広告「ハトが選んだ生命保険に入る」より

 以前、結婚相談所の記事広告の依頼があって、断ったんですよ。「結婚しなきゃいけない」という結婚相談所の考えって、人を苦しめてる原因の一つだなと。デイリーは「結婚しなくていいんだぞ」と言うサイトなので、結婚相談所は合わないなと。

 ライフネット生命のタイアップ記事(ハトが選んだ生命保険に入る)がデイリーにはまったのは、「大手の保険じゃなくてこういうのでもいいんだぞ」というメッセージがあったからだと思います。(大手の)日本生命だと、サイトのメッセージと違いすぎるのでデイリーと合わない。

 世の中の当たり前だと思っていることが実は虚構というか、ただの決めごとなので、もっと気楽に、別の方法、いろんな方法があるんだよというのを、伝えたい。そういうのを伝えるメディアとして続けたくて。それで、みんなが「あったほうがいいと」思ってくれるとありがたいなと。

――記事の作り方もそうですよね。誰もが同意するかは別にして、個々のライターが「好き」「面白い」と思っていることを尊重する。

 その人がそれを面白いと思っているなら仕方ないと思う。ページビュー(PV)が多いのがいい記事だと考えちゃうと、それは「結婚したほうがいい」という価値観にちょっと近づいちゃいますからね。

――デイリーポータルに載ってる記事は、「役に立つ」記事ではないですよね。でも、「なくなったら困る」って思ってほしいと。

 実用的な記事とかも全然ないんですよね。しかも「読者の言うことを聞かない」っていう基本方針があって。読者が知らない面白いことを見せたいので。読者の言うことは、読者の知ってることだから。リクエストを聞くことはしません。

 それでいて、「なくなったら困るって思ってもらいたいんだよな……。読者が想像もしなかった変なのを見せて、「どう? 面白いでしょ?」って言いたいですよね。

 「POPEYE」とか、昔の雑誌って、わりとそういう感じじゃないですかね。「かっこいいもの」とかいう大枠のニーズには応えていると思うんですけど。

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