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弱点補完×利便提供――Amazonが「Prime Now」で他店の商品を届ける理由

» 2017年04月18日 21時20分 公開
[井上翔ITmedia]

 既報の通り、アマゾンジャパン(以下「Amazon」)は4月18日、Amazon.co.jpの「Amazonプライム」会員特典として一部地域で提供している短時間配達サービス「Prime Now(プライム ナウ)」において、提携店舗にある商品の配達に対応した。

 Prime Nowで実店舗の商品を届ける取り組みは、米国を始めとする4カ国で実施中で、これに日本が加わることになる。その狙いはどこにあるのだろうか。

ココカラファインで取り扱う商品の例 ココカラファインで取り扱う商品の例。まずは化粧品や日用品を取り扱うが、準備が整い次第、医薬品も取り扱う予定
マツモトキヨシで取り扱う商品の例 マツモトキヨシで取り扱う商品の例。こちらもまずは化粧品や日用品を取り扱う
日本橋三越本店で取り扱う商品の例 日本橋三越本店(三越伊勢丹)で取り扱う商品の例。主に惣菜・弁当類や生鮮食品を取り扱う

仕組み:Amazonと契約した配送員が店舗まで取りに行って配達

 狙いを説明する前に、今回の取り組みの仕組みを改めて解説する。

 まず、Prime Nowユーザーはスマホアプリで利用したいストア(店舗)を選択する。その後は従来と同じ流れで商品を注文し、確定する。商品代金や送料は、Amazonに支払う。

 注文確定後、提携店舗では商品の集荷・梱包を行う。その後、Amazonと提携している中小配送事業者の配送員が店舗で商品を引き取り、ユーザーのもとに届ける。

ストア選択画面 提携店の対象地域が住所登録されてると、Prime Nowアプリのトップページには提携店を選択するアイコンが追加される。ここで選択した後は、今までと同じ流れで注文すればよい
注文・配送のスキーム Prime Nowの専門配達員が店舗まで商品を取りに行き、ユーザーに配達する

狙い:商品ラインアップの補完とユーザーの利便性向上

アマゾンジャパンの永妻玲子氏 新サービスを説明するアマゾンジャパンの永妻玲子 Prime Now事業部長

 こうして見ると、ある意味で「Prime Nowの配達員を使って、他社店舗の商品を配達する」ことになるため、Amazonとしてはうまみがないように見える。しかし、このサービスの詳細をよく見ると、同社はもちろん、提携企業やPrime Nowユーザーにもメリットがある設計となっている。

 Amazonから見たメリットとしては、自社で在庫を抱えることなく商品ラインアップを拡大できることが挙げられる。同社がPrime Nowで扱う商品は最大で6万5000点を数えるが、今回3社(ココカラファイン、マツモトキヨシ、三越伊勢丹)と提携することによって約1万1000点の商品がさらに加わる。とりわけ、総菜・弁当類のように従来のPrime Nowでは販売困難だったものを販売できることは非常に大きなメリットだ。

 「配送業者への負担が増えるのではないか?」「Amazonはどこで利潤を確保するのか?」といった疑問も生じるが、自社扱いの商品と送料の条件を変えることで、コストをしっかりと回収し、収益も確保しようとしている。

送料条件を変更 提携店舗から購入した商品の送料は、注文の合計金額が一定基準に満たない場合は2時間便であっても有料となる(Amazon扱いの商品は2時間便なら送料無料)

 提携企業から見たメリットは、宅配サービスを立ち上げるために必要なコストや時間を大幅に節約できることにある。昨今、さまざまな販路で顧客との接点を持つ「オムニチャネル戦略」を取る販売店が増加傾向にあるが、Amazonとの連携でその戦略を加速できるのだ。

 Prime Nowユーザーから見たメリットは、買える商品が増えるということに尽きる。ここはAmazon視点のメリットと重なるところだ。

品ぞろえ充実 Prime Nowユーザにとっての最大のメリットは取り扱い商品の拡大

課題:どこまで「広がる」のか?

 今回のAmazonの取り組みには、課題もある。

 まず、配送に対応する店舗をどこまで増やせるかという点が挙げられる。

 筆者の自宅はPrime Nowの「2時間便」に対応しているのだが、残念ながら新サービスは利用できない。理由は簡単で、対象店舗から離れすぎているため、2時間以内に配達を完了できないからだ。

 ならば、Prime Now対象地域をカバーするように対象店舗を増やせば良い……のだが、提携企業の出店状況と対象地域がうまくマッチするとは限らない。特にデパートはそうだろう。

 そうなると、提携店舗はもちろん、提携企業も拡大する必要がある……が、無尽蔵に増やせるはずもない。このあたりの「さじ加減」をどうするのか、注目したいところだ。

対象エリア サービスの性質上、提携店舗・企業が増えないと対象地域も増やせないジレンマがある。これをどう解決するのかがポイント

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