コラム
» 2004年11月12日 20時04分 UPDATE

「ひとりでできた」ThinkPad保守サービスを利用してみる

最近コンシューマからビジネス市場にシフトしているThinkPadだが、依然としてパワーユーザーに熱く支持されている。その理由はスペックやパフォーマンス、デザインや軽さ、という表層的なものだけでなく、長く使ってみて初めて分かる「理由」もあるのだ。

[小林哲雄,ITmedia]

ThinkPadに水をかけると壊れます

 ライター業をはじめてもう十年以上も経過してしまった筆者だが、メインで使うノートPCは一貫してIBMの ThinkPad。それも220から始まって「230」→「530」→「X20」→「X24」と一貫して小型ノートを使っている。「仕事でノートPCをがんがん使います」というユーザーにとって、価格は高いが「丈夫で長持ち保障もがっちり」と生命保険のキャッチコピーにもなりそうなThinkPadは実に頼りになる相棒であった。

 しかし、ThinkPadの頼もしいサポートサービスだった保障制度「EMS」はすでになく、以前は持ち込んでその場で修理も可能だったが最近は「持ち込み不可」に、他社ノートPCの耐久性も向上してきた……、と指折り数えてみると以前と比べてIBMサポートのアドバンテージは相対的に悪くなったんじゃないの?と長井秀和っぽいイントネーションでぼやいてみたくもなる。

 が、しかし。そこはさすがIBM。「コンシューマはビジネスにならなくて」なんて言いながら、パワーユーザーが喜ぶ心憎いサポートメニューを用意している。このあたりのツボの突きどころは、まだまだ他社にはないIBMの魅力といえるのではないだろか。

 で、今回の話は(私にとっての)EMS対象となった最後のマシンThinkPad X20初代モデルが主役となる。いつもは原稿書きマシン予備&自宅での汎用作業、そしてお出かけ時の移動用マシンとして平平凡凡と暮らしてきたX20にある日理不尽な悲劇が襲ったのである

 家で作業をしていたら、コップを引っ掛けて水をこぼしてしまったのだ。なんてことはない、理不尽の根源は飼い主である筆者であったりするのだ。すぐにシャットダウンし、キーボードの水をタオルとティッシュで吸出し一晩干したら直ると信じていたが、皆さんの予想どおりこれが直らない。

 時間がたつにつれてほとんどのキーは入力可能になったものの、コップを置いていたキーボード右サイドから浸水したためか、[PageUp][PageDown][DEL][BS][F8][F9][Fn]キーがいくら押しても反応しない。以前、同じような場所に「酒を飲ませた」(ウイスキーをこぼした)ときは見事に復活したのに、ただの水で回復不能とは。やはり機械とアルコールは相性がいいということか。

 そんな意味のない考察はどうでもいいのだが、とにかく、原稿を書くのに[DEL]と[BS]キーの使えないキーボードは作業効率があまりにも悪い。とはいえ、Celeron 500MHz搭載ノートPCを修理に出すのも(EMSが半年以上前に切れているので、パーツ代はともかく工賃を考えると)抵抗がある。何とかならないだろうか?

IBMならキーボードだけ買える

 以前、編集部に行ったらN記者が他人のVAIOノートを解体していたので尋問したところ「ジュースをこぼしてキーボードがつかえなくなった」そうな。ソニーをはじめ、ほとんどのメーカーはこのような場合でもメーカー修理行き、ということになる(もちろん、過失故障なので無料にならない)。

 ところがIBMは違う。現役のThinkPadならば拡張保証が一年分含まれており、水をこぼしても一定額までは無料修理になる。さらに、このサイトにあるように、それなりのパーツ(Customer Replaceable Unit=CRU)ならば客に交換させることを許しているのだ。これは太っ腹。

 しかも、無償保証期間の作業なら、ユーザーが交換しても保証は依然として有効とうれしいことを言ってくれる。HDDを交換しようとネジを外してカバーを開けたら「これをはがすと保証は無効」と封印が貼ってあるようなメーカーとは肝っ玉が違う。

 そうそう、年老いた筆者は昔のことを一つ思い出した。だいぶ前の話になるが「日本語キーボードをスペースキーの長い英語キーボードに交換する」のが流行った時期があったのを皆さん覚えているだろうか。そんなとき、ThinkPadなら、日本で該当モデルがない場合でも海外キーボードに交換できるのだ。

 以前ならサービスマニュアルをダウンロードしてみる必要があったが、今ではwebで閲覧できる。もちろん特殊工具は必要なく、普通のプラスドライバーがあればよい。

 今回はサポート期間の修理ではなく保守パーツを購入という形なので、パーツを取り扱うIBM部品センターに電話してキーボードユニットを購入した。事前情報では「本体番号」「パーツ番号」「シリアル番号」が必要ということだったが、筆者が電話をしたときは部品番号だけを申告した。パーツ番号はサービスマニュアルから事前に調べておいたが、何のことはない、キーボードの裏に書いてあるので、これもバラして書きとめておけばよい。

 電話で注文すると料金を教えてくれて、20分ほどでFAXに注文用紙が届く。そこに書いてある指定の銀行口座に振り込んで、その受領書と注文用紙をFAXすればよい。頼んだときは「3営業日」で納入されたが、パーツの在庫状況次第でこの日数は変わるようだ。ちなみにキーボードの価格は8290円で送料が1000円。さらに消費税が加わって合計9754円となった。

kn_tnkpdkey.jpg 我が家にキーボートがやってきた

 部品が届けば「やっこらせ」と交換作業を行うわけだが、届いたパッケージを開封すると交換手順の説明も入っていて、「PCの自作ぐらいできるわい」というユーザーならまったく不安を感じない。

 余談ながら、このキーボードを搭載したX20は「とうの昔」に製造を終了している。それなのに、届いたキーボードの裏を見て今年製造されたものであるのが分かったときは、みんなから「感情の起伏に乏しいですね」と評される筆者もさすがに驚かされた。

kn_tnkpdmnu.jpg 必要にして簡潔な作業説明書

kn_tnkpdcbl.jpg 唯一面倒な作業はキーボートと基板の「架け橋」フレキケーブルの接続

kn_tnkpdbrn.jpg Mar-04ということは……、ええっ!今年作ったものですかっ

あちらのメーカーもそちらのメーカーも追従して欲しいものです

 PCの自作が広く知られるようになり、ノートPCの自作ですら可能なご時世に「保守はサービスセンターでしかできない」というのはPCメーカーの驕りじゃないの、というと担当編集から「あまり、メーカーを刺激しないでください」と注意されるのでやめておこう。

 時代は過ぎれど、パーツだけを一般の人にも売ってくれる大手ノートPCメーカーというのは依然として珍しい。通販なので日本中どこでも買える。ユーザーでも簡単に交換できる設計にしているからこそ、CRUのような考え方ができるわけで、このあたりが「違いの分かるパワーユーザー」がIBMにたいして他社にはない信頼を感じている一つの要因であるのだ。

 ThinkPad拡張保証も追加期間(プラス1年から最長3年まで)の保証が購入できる。外資系メーカーを中心にコストをかければ保証を延長という制度はノートPCで定着しつつあるが、購入時に決定してそれっきり、というものが多いので、これはありがたい。

 このあたり、他メーカーもマネしてほしいところだが、メンテナンス思想(普通の工具で簡単に解体できる)や保証体制(「ユーザーごときが交換して品質が保てるものか!」というプライド)を考えると、まだしばらくはThinkPadのアドバンテージになりそうな気がする。

「見事に予想が外れましたね。はっはっは」と、半年後あたりにこれを読んだ皆さんから笑われたとしても、それはそれで本望であったりする。

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