CESにおいても火花を散らす、Blu-ray(BD)とHD DVDの両陣営。HD DVD陣営が数多くの映画タイトルを発表したことで、BD陣営に対して先制パンチを見舞いHD DVDが優位に立ったとする見方も多い。今後、BDかHD DVDのどちらになるかを推測する記事は山ほどあるので、ここでそんな話をしても仕方がない。
もちろん筆者の仕事としてはどちらが優勢になるかを見極めることは大事なことだが、個人的な部分では、実はあまり気にしていなかったりする。それは筆者にとって民生機としての両陣営は眼中になく、PCユーザー用途としてBDとHD DVDのドライブを利用する場合を重視しているためだ。これは、多くのPCユーザーにも当てはまることではないだろうか。
今回のCESでは、HD DVD陣営が数多くの映画タイトルを発表し、HD DVD陣営優勢という見方が大半だ。「BD陣営劣勢」と報じる媒体もあった。
しかし、ほとんどのユーザーは、そんなことはどうでもいいことであり、どちらがスタンダードになるかが決まったときに、それに対応したプレーヤーなり録画機なりを安価な価格で購入できればよいと考えているだろう。
すでに登場している民生用BDだって二十数万円と高くておいそれとは買えない。ユーザーの立場から見れば「消費者不在で行われている両陣営の対決は、消費者側のメリットなど全くないから、さっさと標準化された製品を大量生産して安く出してよ」というのが本音だろう。
さらにHD DVD陣営が映画タイトルを数多く出すことを発表したからといって、自宅にプラズマディスプレイも液晶テレビもないユーザーにっとっては、なんの魅力もない。HDクオリティが表示可能なテレビを持っていないユーザーにとって、国内で地上波デジタルの本放送が始まるまでに、まずHDクオリティ対応のテレビを購入することが先決であり、BDかHD DVDかなんてことは、ずっと先の話になる。両陣営が必死に頑張って年末商戦までに1000ドル台でプレーヤーを発表したからといって、飛ぶように売れるわけではないことは明白だ。
それよりもPCユーザーにとって気になるのは、PCの記録形光学式ドライブとしてのBDとHD DVDの行方だろう。
現在、筆者は「全部入り」と呼ばれるDVD±R DLまで対応した記録形DVDドライブを所有しているが、DVD+R DLの8.5Gバイトという容量では、まともにHDDのバックアップすら行えないという状況になっている。
100Gバイトを超えるHDDを複数、合計で300Gバイトを超えるHDDを搭載しているPC全体のバックアップを行う場合、安価な4.7GバイトのDVDメディアでは、65枚近いメディアが必要なのだ。メディアを65枚も、取っ換え引っ換えしているだけで気が遠くなってくるし、リストアするときだって同じく取っ換え引っ換えを行わなければならない。
これがBDの50Gバイトメディアなら6枚程度、HD DVDであれば、12枚前後ですんでしまうわけで、「両陣営のどちらでもいいから、速やかにPC用のドライブを出してもらいたい」と考えているユーザーも多いだろう。
そういった点では、PC向けドライブを早めに出してきたメーカーがPCの新ドライブ市場を頭一歩リードすることになるだろう。PCのバックアップ用途であれば、利用方法は自己録再がメインとなるわけで、これなら他人がどちらの陣営のドライブを所有していようが関係ない。DVD-RAMが普及したのも、そういったユーザーの後押しがあったためであり、両陣営は、この点をどう見ているのかが気になった。
CESでは、両陣営共PC向けのドライブを展示していたが、それぞれのROMの仕様が確定するまでドライブを出せない状況にある。この仕様が確定し、いかに早くPC向けのドライブをリリースすることができるかがポイントになってくるはずだ。
BD陣営が発表したPC向けBDドライブ
PC向けHD DVDドライブ
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.