ビジネス向けのプリンタには、オフィスで使用する据え置きタイプのほかにもう1つ、単体で持ち歩くことを前提としたモバイルタイプが存在する。
小型のプリンタというと、家庭用に設計された写真プリントを前提としたモデルが思い浮かぶが、ここで言うモバイルプリンタは一般的な据え置きタイプと同じく、A4サイズの印刷に対応していることが特徴だ。多くの製品は明確にビジネス用途とうたっているわけではないが、カタログなどを見てもビジネスシーンを意識した説明がなされている。
モバイルプリンタの多くは、据え置きタイプに比べて、印刷速度はお世辞にも高速とは言えず、両面印刷にも対応しない。また給紙トレイにセットできる枚数も少ないので、大量印刷向けでは決してない。強みを発揮できるのはせいぜい数枚、もしくは数部程度のプリントだ。それでも場所にとらわれず、あちこちに持ち歩いて利用できるという強みは、据え置き型のプリンタにはないものだ。最近ではWi-Fiに対応し、スマートフォンやタブレットから直接印刷できる製品も増えている。
今回は、これらモバイルプリンタについて、前編で用途および選び方のポイントを、後編で具体的な製品例を紹介していく。
モバイルプリンタはその名の通り、据え置きでの利用ではなく、場所を変えながらの利用を前提に置いた設計がなされている。自社の会議室や取引先の商談スペースはもちろんのこと、ショールームだったり、あるいは外回りの合間に訪れた喫茶店だったりと、さまざまな場所で利用できるわけだ。
もっとも、個別のシチュエーションにおいて、モバイルプリンタに求められる機能や仕様は大きく異なる。例えば、ショールームや喫茶店などの商用スペース、もしくはまったくの屋外で利用する場合、基本的にコンセントは利用できないことから、バッテリーが使えることが必須条件となる。長時間の利用であれば、その容量もポイントになるだろう。一方、自社の会議室や取引先の商談スペースで利用する場合、大抵はコンセントが利用できると考えられるので、バッテリーの必要性はそれほど高くない。
このほか、モバイルプリンタは、オフィスで据え置き型プリンタの代替として導入するケースもまれにある。据え置き型のプリンタを設置するとどうしても相応のスペースが求められるが、モバイルプリンタであれば必要なときだけデスクの引き出しやキャビネットの中から取り出して使い、終わったら片付ける、という使い方が可能になる。
少人数での運用で、かつ日々の印刷枚数が少なく、プリンタを使う日もあれば使わない日もあるのなら、モバイルプリンタはニーズに見合っている。こうした使い方でも、やはりバッテリーの必要性はそれほど高くなく、ACアダプタでの駆動が中心になる。
また、イベントやフェアの会場、工事現場の仮設事務所など、数週間から数カ月単位で利用するスペースに持ち込んで使う用途にも、モバイルプリンタは適している。外出先に持ち出すという意味ではモバイルだが、常にあちこちを移動しながら利用するのではなく、1カ所に設置して使うという方法だ。
製品の多くは盗難防止用ホールが設けられているので、ワイヤーを使ってデスクなどの備品に固定しておける。この使い方では、むしろバッテリーはまったく不要で、ACアダプタのみ利用できれば十分だ。
このように、モバイルプリンタはその可搬性を生かした、さまざまな使い方が存在しており、それぞれで求められる仕様が大きく異なる。上に挙げた電源について言えば、ACアダプタ駆動のみでバッテリーはオプションとなる製品と、ACアダプタとバッテリーの両方に標準対応した製品があり、使い方によって向き不向きがはっきりと分かれる。
このほか、スマホやタブレットと組み合わせて使うのであればWi-Fi対応は必須だろうし、常にバッグの中に入れて持ち歩くのであれば、何よりボディサイズの小ささや軽さが重要になる。
それゆえ、製品を選ぶにあたっては、まず自分の使い方を明確にしておいたほうが、後で後悔することも少なくなる。他の製品に比べてこうした傾向が強いのが、モバイルプリンタの特徴と言っていい。
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