NASを使ったほうがいい人、使わないほうがいい人Synologyで始めるNAS生活(1/3 ページ)

» 2016年03月18日 12時14分 公開
[ITmedia]

 すっかりNAS(ナス)という言葉も聞き慣れてきた今日このごろ。なんだかよさそうではあるけれど、便利なのか、使いこなせるのか、どれを選べばいいのかわからない、という人もいるのではないだろうか。

 今回は、類似のサービスや製品と比較した際のNASのメリット、Synology製NASキットの最新モデルである「DS216j」を使った導入の手順を紹介する。

これからNASを始める人向けのSynology最新エントリーモデル「DS216j」。2015年に国内NAS市場を席巻した人気モデル「DS215j」の後継機だ

どういう人がNASを導入するとよい?

 NAS(Network Attached Storage)とはネットワークに接続して利用するファイルサーバのこと。ネットワークを通してファイルの共有ができることが最大の特徴だが、現在のNASはそれ以外にもさまざまな機能を持ち、ホームサーバとして活用することができる多目的アプライアンスになっているものが多い。

 NASはCPU、メモリ、ストレージを持つ1個のコンピュータであるからだが、その結果、外付けHDDと比べるとどうしても価格は高くなる。

 一方、同じコンピュータとして通常のWindowsマシンと比較するとキーボードやディスプレイが接続できないものもあったり、独自OSのためにインストールできるソフトウェアが限られているなど、自由度は低い。その代わり、ファイルサーバに特化している分、パフォーマンスに対してのコスト、ランニング費用も低く抑えられるケースが多い。そういった観点で見れば、家庭向けNASキットは外付けHDDとPCの中間的な位置づけと言える。

 また、ネットワークを介して利用できるストレージとしては、ほかにオンラインストレージサービスがある。最近はクラウドストレージサービスとも呼ばれ、AmazonやMicrosoft、Googleなど、クラウドコンピューティングサービスの1つとして提供されているものも多い。

 これらの似て非なる製品・サービスはそれぞれに長所と短所がある。自分の目的に応えてくれる製品なのかどうか、外付けHDD、オンラインストレージサービスと比較しながら見ていくことにしよう。

外付けHDDと比べると……

 最近のノートPCはSSDを搭載しているものも多い。SSDは高速で衝撃に強く、消費電力が小さい上に、mSATAやM.2などコンパクトなフォームファクターが規格化されており、持ち運びを前提としたポータブルデバイスと相性がよいためだ。半面、現時点ではHDDよりも記録容量単価が高く、バリューゾーン製品では容量は抑えられがち。ノートPCの場合、HDD搭載機では500GBが主流なのに対し、SSD搭載機だと256GBあたりが多いようだ。

 これは決して十分な容量とは言えない。そのため、ストレージを追加したいと考えるユーザーも多い。その際にまず考える製品は外付けHDDだろう。USB 3.0の3TBモデルでも1万円程度、ベアドライブの実売価格とも1000円くらいしか変わらず、最も手軽な選択肢だ。

 だが、利用する際にはPCと直接USBケーブルで接続しなくてはならず、利用場所に制限が出てきてしまう。2.5インチHDDを使用したポータブル製品もあるが、こちらは据え置き型に比べると耐衝撃性という点で不安が残る。

 その点、NASであればネットワークを通じて利用できるので、家庭内LANに接続できれば自宅のどこからでも利用可能だ。また、2ベイ以上のNASの場合、たいていRAID 1などの冗長化構成を組んで、1台HDDが故障してもデータの消失を防ぐことができる。その仕組みを活用して、データを保持したままディスクを交換したり、その際に容量を増やしていくことも可能だ。

 ただし、ネットワークの速度はUSB 2.0以上USB 3.0未満。頻繁なランダムアクセスが発生したり、速度を追求するような用途には向かないことも念頭に置いておこう。

オンラインストレージサービスと比べると……

 オンラインストレージサービスはインターネットさえ使えればどこからでも利用できることが最大のメリット。Amazon S3やGlacier、IDCFオブジェクトストレージなど、商用利用をターゲットとしたREST APIベースのものを除くと、Webブラウザからアクセスできるものが多く、対応プラットフォームが幅広いのも特徴だ。

 また、WindowsやOS X、iOSやAndroidといった主要プラットフォームに対しては専用アプリが用意されていて、Webブラウザよりも快適に利用できるケースが多い。

 インターネットを経由して利用するため、速度はWebと同等。ファイルの一覧を表示するにも若干待たされるくらいなので、ローカルドライブ代わりに使うには向いていない。だが、動画や写真など、ブラウザ上で視聴できるメディアファイルとは相性がよく、多くのサービスではストリーミング配信やスライドショーなど、ブラウザ上でそのまま視聴できるようになっている。ただ、それ以外のデータファイルはいったんダウンロードしないと使えない場合が多く、メディアファイルのデータストアや共有、バックアップとして使うことが一般的だ。

 多くのサービスでは従量課金制であり、使った分、あるいは割り当てられた分だけ、月額利用料を支払う。そのため短期的には割安だが、長期的に見ると外付けHDDやNASよりも割高になる。サービス提供者によっては過去に大幅な価格改定や容量制限を行ったところもあり、データと引き替えに生殺与奪権を握られていると感じる人もいるようだ。

 一般にオンラインストレージサービスでは個人に比べはるかに高いレベルでデータ保全・障害対策がなされている。その一方で運用の実態が利用者にはわからず、サービスの一時的な停止や大規模なデータロストが発生する可能性もある。また、運用側の経営判断や倒産などで利用できなくなったものも多く、継続的な利用ができるかどうか見極めることは難しい。

 一方、NASの場合は機材買い切りのため、初期導入コストこそかかるものの、ランニングは電気代のみで済む。NASは基本24時間稼働だが、家庭用のものは低電力なものが多く、さらには利用しない時間帯は自動的にスタンバイや電源オフできるものもある。災害対策や故障時の対応などは利用者にゆだねられるが、自分ですべて管理できるというところに安心感を覚える人もいる。

 また、インターネットを経由して外出先から利用したり、友人と簡単に共有できるような仕組みを備えているもの、画像や映像のライブラリをブラウザ経由で見られるものも増えてきている。自分だけのオンラインストレージサービスとして自宅のNASが活用できるのは大きな魅力だ。

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