個人個人の感じ方を分析し、快適に過ごしながら節電できる環境を目指すエネルギー管理(1/2 ページ)

インテルはノートパソコンを利用して温度、湿度、照度といった環境データを集める実証実験を始めた。実験の狙いは何か? 実験の結果をどういうことに生かそうと考えているのか? 実証実験の担当者に聞いた。

» 2012年05月01日 12時15分 公開
[笹田仁,スマートジャパン]

 インテルは2012年04月9日、ノートパソコンを利用して節電に役立つデータを収集する実証実験を始めた。ニュースでは、温度、湿度、照度を計測するセンサーを取り付けたパソコンを利用して、環境データや、個人個人が気温をどう感じているかといったデータを集めると簡単に説明したが、実験の狙いなどについてははっきりしなかった。

 そこで、この実証実験を担当している齋藤亮介氏に、実証実験に至るまでの過程、今回の実証実験の狙い、今後目指していることについて聞いた。齋藤氏はインテルのイノベーション事業本部 エネルギー事業部の部長を務めている。

きっかけは震災

 今回の実証実験は、インテル東京本社で実施するものだが、主導しているのはインテルの中央研究所(Intel Labs)だ。もともと中央研究所は、エネルギー効率を大きなテーマの1つと位置付けて研究を続けていた。その取り組みの1つとして、パソコンをセンサーにして、オフィスビルの節電に役立てる研究があった。

 インテルの日本法人がこの研究の存在を知ったのは2011年の初頭。その直後に東日本大震災と、それに続く電力供給量不足の問題が発生した。そこで、研究所に問い合わせて、日本で実証実験ができないか交渉した結果、ノートパソコンとセンサーを利用した実験環境があることを知らされたという。今回の実証実験で使用しているものだ(図1)。その後、研究を統括している担当者が来日し、日本で優先的に実験を進めることと、実験を2012年の第1四半期、あるいは第2四半期から始めることが決まった。

PC with Sensor 図1 実証実験に使用するノートパソコン。写真左上にあるのがセンサー。温度、湿度、照度を検知する

オフィスの消費電力量削減は世界的な潮流

 日本では震災が発生するまで、節電を意識する人は少なかった。コスト削減の一環として電気料金の節減に取り組む企業もあったが、コンピュータやネットワークを活用して電力消費量を削減しようという動きはあまり目立たなかった。

 しかし世界に目を向けると、電力会社からの電力を必要としないゼロエネルギービルディング(ZEB)や、使用する電力すべてをビル自体で発電した分でまかない、さらに売電できるポジティブエネルギービルディング(PEB)という構想が進んでいる(図2)。例えばフランスは、2020年以降に建設するオフィスビルはPEBでなければならないという規制を作っている。

PEB 図2 フランスのリヨン市で建築計画が進んでいるポジティブエネルギービルディングの完成予想図(出典:NEDO)

 ZEBやPEBを実現するには、発電のことを考えるだけでは足りない。発電した電力を効率良く使うことも大切だ。このような事情から、海外でもオフィスの消費電力量削減への意識が高まっているのだ。インテルの中央研究所がエネルギー効率を大きな研究テーマの1つと位置付けている理由としては、このような世界の動きが挙げられるだろう。

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