連載
» 2012年05月15日 13時03分 UPDATE

連載/電力を安く使うための基礎知識(4):蓄電池に夜間の安い電力を、今なら補助金も使える

東京電力が夏のピークシフトを目的に、時間帯別の料金制度を店舗や家庭向けのサービスにも拡大する。夜間の安い電力を昼間に効率よく使うためには、蓄電システムが欠かせない。ただし価格の高さと寿命の短さが大きな課題として残る。

[石田雅也,スマートジャパン]

 電力会社は昼間の電力需要のピークを下げるために、昼間の電気料金を高くする代わりに夜間を格段に安くした「時間帯別料金プラン」を、企業向けと家庭向けの双方で増やしている。利用者側は昼間の電力使用量を減らして、その分を夜間に回すことによって、毎月の電気料金を引き下げることができる。

 そこで夜間の電気を貯めて昼間に使える蓄電システムに大きな注目が集まってきた。住宅メーカー各社から発売が相次いでいるスマートハウスにも標準的に蓄電システムが組み込まれている。

電気料金の削減とピークカットを実現

 蓄電システムを使った夜間電力の活用方法は単純明快だ。電気料金が安くなる夜の時間帯に電力の一部を蓄電システムに貯めておき、電気料金が高くなる昼の時間帯に入ったら蓄電システムに貯めた電力を優先的に使うようにする(図1)。システムを切り替える時間は電力会社の料金メニューや電力使用量がピークになる時間帯に合わせてタイマーで設定する。

ALT 図1 蓄電システムによる夜と昼の電力供給の流れ。出典:パナソニック

 たとえ昼間に使う電力の量が従来と同じであっても、蓄電システムによる電力の分だけ、電力会社から供給を受ける量を減らすことができる。電力使用量の「ピークカット」ができるわけで、昼夜の電気料金の差額に加えて、ピークの抑制による基本料金の引き下げにもつながる“一石二鳥”の効果がある。

 さらに電力使用量を監視・制御できるBEMS(ビル向けエネルギー管理システム)やHEMS(家庭向けエネルギー管理システム)と組み合わせれば、蓄電システムからの供給電力量に合わせて照明や空調をコントロールしたり、太陽光発電からの供給電力とバランスをとったりすることも可能になり、電力会社から購入する量を最小限に抑えることができる(図2)。現時点で最も進んだ節電対策と言える。

ALT 図2 蓄電システムと太陽光発電を組み合わせることにより、昼間に電力会社から購入する電力量を抑制。出典:パナソニック

 実際にオフィスや家庭に蓄電システムを設置する方法も小型の製品であれば難しくない。通常の100Vで使う場合には、蓄電システムの電源プラグをコンセントにつないで、あとは電気機器の電源プラグを蓄電システムに接続するだけである(図3)。ただし小型の蓄電システムだと供給できる電力の制限によって、消費電力が大きいエアコンなどは接続できないことに注意する必要がある。

ALT 図3 小型蓄電システムの接続例。出典:ソニー

小型の蓄電システムで価格は100万円台

 現在市販されている蓄電システムは大型と小型の2種類に分けることができる。蓄電システムに貯められる電力の容量によって、10kWh以上を大型、10kWh未満を小型に分類する。kWhは「キロワット×時」を表す単位で、1キロワットの電力を1時間使った場合の電力使用量が1kWhになる。電気料金の単価も同様にkWhで決められている。

 小規模な店舗や家庭で使うには小型の蓄電システムで十分で、現在は1kWh〜3kWh程度の製品が主流である。例えば一般の家庭では平均して500W(0.5kW)程度の電力が使われているため、単純に計算すると容量が1kWhの蓄電システムで2時間分の電力を供給できることになる。ただし100%の電力を使い切らずに、7割程度までに抑えて利用するのが一般的だ。

 小型の蓄電システムの価格は現在のところ、容量が1kWh〜3kWhの製品で100万〜200万円の範囲にある。政府の補助金を受けられるリチウムイオン電池を搭載した製品が現在7つあり、導入費用の3分の1を補助金でカバーできる(図4)。

ALT 図4 政府の補助金制度の対象になる小型の蓄電システム。2012年5月14日現在

 一方、容量が10kWhを超える大型の蓄電システムは、工場や中規模以上の店舗などで、消費電力の大きい機器と接続する用途に向いている(図5)。業務用のエアコンや冷蔵庫などに電力を供給することも可能だ。その代わり価格は小型と比べてかなり高い。例えばパナソニックからリチウムイオン電池を組み込んだ容量15kWhの製品が発売されているが、1台で770万円と小型の5倍程度になる。

ALT 図5 大型蓄電システムの接続例。出典:パナソニック

 大型の蓄電システムに対しても今後は政府の補助金を適用できるようになる。小型の場合と同様に工事費を含めた導入費用の3分の1が補助され、企業が導入する場合には上限が1億円と高額である。接続する機器の電力使用量の合計値をもとに、必要な容量と導入台数を決めて、最大限に補助金を利用することが望ましい。

リチウムイオン電池の寿命は5年〜10年程度

 蓄電システムの導入にあたって注意すべきことの一つに、内蔵する電池の寿命がある。充電と放電を繰り返すことで電池の性能が劣化するためだ。仕様通りの性能を発揮できる期間は利用状況によるが、リチウムイオン電池の場合で5年〜10年と言われている。100万円で導入した蓄電システムのコストは、安全を見て寿命を5年と考えると、1年あたり20万円にもなる。

 このコストを昼夜の電気料金の差額分で吸収できれば、停電時にも電力を確保できることと考え合わせて、導入メリットは十分にある。しかし年間で20万円の電気料金を削減するというのは、少なくとも一般家庭では非現実的な話である。

 実際に現在の電気料金の単価をもとに、蓄電システムの費用対効果を計算してみる。電力の使用量が変わらない前提で、昼夜の電気料金の差額だけを想定する。電力会社が設定している時間帯別の単価を比べると、昼間と夜間の差は家庭向けで1kWhあたり20円〜25円程度、企業向けでは5円〜10円程度である。

 一般の家庭で小型の蓄電システムを使って毎日1kWhの電力を昼から夜にシフトしても、1日あたり20円〜25円、年間で1万円も削減できないことになる。100万円かけて蓄電システムを導入するとコストを回収できないことは明らかだ。

 企業においても状況はさほど変わらない。大型の蓄電システムで毎日10kWhの電力を昼から夜に振り替えても、1日あたりの電気代は50円〜100円程度しか削減できない。年間でも4万円に満たない額である。さらにピークカットによって基本料金の削減も期待できるが、その効果を加えても年間で10万〜20万円程度の電気料金を減らすのが精いっぱいの範囲だ。数100万円にのぼる蓄電システムの導入コストを短期間のうちに回収することは難しい。

 これから蓄電システムの価格が数分の1に下がり、寿命がさらに延びていかないと、費用対効果の点では得な策とは言いがたい。

 とはいえ蓄電システムを導入することで無理なくピークカットを実現できる点は、電力が足りない社会情勢から考えて重要な対策になる。特に昼間に多くの電力を使う店舗や工場の節電対策としては十分な役割を果たす。太陽光発電システムと組み合わせれば、昼間に余った電力を蓄電システムに貯めて、夜間や悪天候時に利用することも可能になる。

 当面は電力を安く使う目的よりも、限りある資源や電力を有効に活用するためのシステムと考えて導入するのが正しいだろう。

*この記事の電子ブックレットをダウンロードへ

連載(5):「昼間の電力ピークカットには太陽光発電、価格低下で普及が加速」

連載(1):「料金計算の仕組みが分かれば、電気代をスマートに削減できる」

連載(2):「節電を1台でこなす、デマンドコントローラ」

連載(3):「節電対策の主役に急浮上、BEMSの費用対効果を検証」

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.