キーワード解説「電力の見える化」キーワード解説

政府による節電要請期間に入り、空調機器の設定温度を28℃に設定する、会議室の照明をこまめに消す、エレベーターをなるべく使わないなどの節電策を打っている企業も多いはずだ。しかし、それぞれの対策にはどれほどの効果があるのだろうか? 本当にそこまで苦しい思いをしなければならないのだろうか? 「電力の見える化」を実行すればその答えが見える。

» 2012年08月10日 16時16分 公開
[笹田仁,スマートジャパン]

 「電力の見える化」とは、企業や家庭で消費している電力量を計測し、その結果をパソコンやスマートフォンなどの機器にグラフなどの分かりやすい形式で表示することを指す。また、そのためのシステムを「電力の見える化システム」と呼ぶことも多い。

 企業や家庭で節電に取り組むときは、電力会社などによるアドバイスにただ従うという場合が多いが、そのアドバイスが万人に合うものとは限らない。例えば、空調機器の設定温度を28℃に設定するというアドバイスは有名だが、環境によっては28℃まで上げる必要がないということも考えられる。

 他者のアドバイスをただ守るだけの節電活動では、その効果は毎月の電気料金を見るまで分からない。そのため、節電活動が行き過ぎて健康を害する人が現れたり、思ったように節電が進まないということも発生しうる。

 電力の見える化を実行すれば、現時点でどれくらいの電力を消費しているのか、日ごと、週ごとの電力使用量はどれほどかといったことが簡単に見えるようになる。節電対策のために何か対策を打ったときも、節電対策前と対策後の消費電力量を比較することで、その効果がはっきりと分かる。こうして節電対策の効果を検証していくことで、対象の建物に本当に合う節電対策を打てる。その結果、苦しい思いをせずに節電が可能になることも多い。

 見える化のためにシステムを導入するときは、建物全体の消費電力量を測るだけでなく、可能ならば多大な電力を消費する機器も計測対象にしたほうが良い。オフィスなら空調や照明がターゲットになるだろう。このような機器の消費電力量を別々に計測することで無駄に電力を消費している部分を見付けやすくなり、節電対策の効果も分かりやすくなる。より細かく計測すればさらに無駄を見付けやすくなるが、システム導入にかかる費用が莫大なものになってしまうことが多い。

 電力の見える化を実行するにはオフィスビルなら専用システム、あるいはBEMS(ビル向けエネルギー管理システム)を導入するとよい。住宅ならHEMS(家庭向けエネルギー管理システム)を利用するのが簡単だ。

 経済産業省は中小ビルへのBEMS導入を進めるためにBEMSアグリゲータ制度を用意して、導入者には機器の価格の1/2あるいは1/3に当たる補助金を出している。家庭向けには、HEMS導入者に一律10万円(ただし、機器の価格が10万円以下の場合は1000円単位で切り捨て)の補助金を支給している。

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冬の節電対策もお早めに、導入企業が急増するBEMSに注目

節電によるコスト削減に取り組む企業が続々とBEMS(ビル向けエネルギー管理システム)の導入に着手している。国の補助金が本格的に始まり、安価に導入できる製品やサービスが増えてきたためだ。


電力見える化システムのよく効く使い方 前編 「節電の基本戦略を練る」

LED照明や発電システムなど、節電に直接役立つ機器が注目を集めている。しかし、各メーカーが販売している「電力の見える化」システムに目を向けると、「活用法が分からない」という人が多いのではないだろうか。前編では、電力の見える化システムの基本的かつ効果的な利用法を解説する。


電力見える化システムのよく効く使い方 後編 「データを集めてさらに節電」

後編では、具体的に見える化システムを活用した例を紹介する。見える化システムで課題を洗い出した例のほか、見える化システムを使って初めて大きな無駄を見付けたという例などを取り上げ、解説する。


HEMS補助金の対象製品第1弾が明らかに、4月19日から申請受付開始

政府は、住宅向け電力管理システムを導入する個人に補助金を支給する。家庭で電力を効率良く使用し、無駄をなくすためのシステムの普及を促すことを狙っている。対象製品の第1弾として、6社の11製品が選ばれた。


コンセントにタップを付けるだけ、エアコンや冷蔵庫の消費電力量を見える化

家庭内のコンセントに専用のタップを取り付けると、家電機器の消費電力データを計測して、タブレット端末に数値やグラフを表示できる。シャープが無線を使った電力見える化システムを発売する。


パソコンを利用して簡単に消費電力量を見える化、センサー付きプラグが登場

節電対策の1つとして、消費電力量の見える化が挙げられる。しかし、見える化を実現するシステムは高価なものが多い。富士通は見える化に役立つ電源プラグを2つセット10,000円という価格で発売する。


月額661円で利用できる、低価格なHEMS

住宅で消費する電力量のデータを蓄積、分析し、グラフなどの形でユーザーに見せるHEMS(家庭向けエネルギー管理システム)が家電メーカーや住宅メーカーから続々登場している。NTT西日本は、データセンターを利用して利用者の費用負担を抑えたHEMSの提供を始める。


新築でなくても集合住宅でも問題なし、実質5000円で導入できるHEMS

太陽光発電システムや蓄電池と連携する機能を備えるHEMSが注目を浴びる一方で、機能を限定して、安価で利用できるHEMSが登場してきている。ケイ・オプティコムは、同社のインターネット通信回線の付属サービスとして、HEMSの提供を始めた。


導入時の負担は1000円、家電機器ごとの消費電力量も計測できるHEMS

データセンターでデータを一括処理するようにして、安価に導入できるHEMSが増えている。補助金を利用することでさらに安い価格で導入できるようになっているものもある。NTT東日本は導入時の負担が実質1000円からというHEMSの提供を始める。


12万円で導入できる電力見える化システム、コンセントに接続して無線でデータ転送

小規模な店舗やオフィスを対象に、安価な電力見える化システムが登場した。パソコンやプリンタを専用の機器でコンセントに接続すると電力使用量を測定することができて、工事は不要である。デマンドコントローラと組み合わせて電気料金の削減につなげることも可能だ。


電力の見える化を家庭で、HEMSの補助金が38製品に拡大

政府が4月から運営しているHEMS(家庭向けエネルギー管理システム)の補助金制度で対象製品が急速に増えている。家電や住宅メーカーに加えて、自動車メーカーや電話会社も加わり、16社の38製品がそろった。補助金よりも安い価格の製品が多く、夏本番に向けて普及に弾みがつきそうだ。


3000円で気になる機器の消費電力を把握、電気料金なども表示する電力センサー

住宅全体の消費電力量を計測、集計し、ユーザーにデータを提示するHEMS(家庭向けエネルギー管理システム)が続々登場している。経済産業省の補助金対象となっている製品もあり、導入しやすくなっている。それでも、HEMS導入に気が進まないという人もいるはずだ。そのような人に向けた電力センサーが登場した。


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