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» 2012年08月21日 09時15分 UPDATE

連載/データセンターの電力効率、コスト効率を上げるには(2):新しいかたちのデータセンターを日本中に分散配置しよう (1/2)

前回はデータセンターの利用者が多くなれば、冷却用施設などを共用することによるコスト削減効果が働き、自社でサーバを抱えるよりもコスト効率が良くなるということを説明した。さらに付け加えると、日本のデータセンターの利用コストは、実は世界各国のデータセンターと比べると決して安いとは言えない。まだまだコスト削減の余地があるのだ。

[中村彰二朗/アクセンチュア,スマートジャパン]

連載第1回:自社サーバを環境性能の高いデータセンターに移設しよう

 連載第1回「自社サーバを環境性能の高いデータセンターに移設しよう」を掲載してからかなり時間がたってしまった。読者の皆さんにおわびしたい。そして、時間があるときで結構なので、もう一度第1回を読み返していただきたいと思う。第2回以降を理解して頂く上で役に立つはずだ。

 第1回では企業が抱えるサーバを仮想化技術で集約して、データセンターに移設することで、日本全国の消費電力量を大きく引き下げることができるということに触れた。その結果として、企業は電力にかかるコストを大幅に削減できるだけでなく、サーバ運用にかかる手間を省くことができ、さらなるコスト削減が可能になる。

 しかし第1回の末尾で指摘したように、日本におけるデータセンター利用コストは、世界各国と比べると決して安いとはいえない。コストが高くなってしまう要因はいろいろある。例えば、設計が時代遅れとなったデータセンターでは、サーバを冷却する古い設備が膨大な電力を消費して、総電力費用を跳ね上げている。

 このような冷却設備を利用しているデータセンターでは、第1回で説明した環境性能指標であるPUE(Power Usage Effectiveness)値で2.0という高い値を記録していることもある。世界最先端のデータセンターのPUE値が、1.2くらいであることをかんがみると、PUE値が2.0ということは、最先端のデータセンターと比較して40%程度効率が悪いということになる。

 ちなみに現在の日本の電力単価は米国の2倍以上ともいわれている。この電力単価の高さだけでも世界各国と比べて日本はデータセンター事業に向かない国になっているという見方もあるが、その前にデータセンターとして削減すべき無駄なコストに目を向けるべきである。今回は、日本のデータセンター利用コストを押し上げている要因を指摘したうえで、コストを下げる方法を提案し、解説する。

地価が高い首都圏に集中

 通信ネットワーク技術が発達していなかったころは、ネットワークにつながったコンピュータといえば、金融機関が保有する大型コンピュータだった。このころは、通信ネットワーク技術が発達していなかったので、大型コンピュータは所有者である金融機関が集まる都市部にしか設置できなかった。その結果、大型コンピュータを設置する「コンピュータ・センター(計算センター)」が多数首都圏に建設された。

 その後、通信ネットワーク技術は発達し、コンピュータ・センターと呼ばれていた施設はデータセンターと呼ばれるようになった。しかし、かつてのコンピュータ・センターであるデータセンターが首都圏に集中しているという事実は、通信ネットワークが発達していなかったころと変わっていない。IDC Japanの調査によれば日本のデータセンターの72%が首都圏に集中している。土地や不動産コストの高い首都圏にこれほどデータセンターが集まっているという事実は、日本のデータセンターにはまだまだ効率改善の余地がある、という示唆を与えてくれる(図1)。

NGDC_2_1.jpg 図1 日本のデータセンターは首都圏に集中してしまっている(出典:IDC Japan「データセンターアウトソーシング市場の国内地域別予測」2010年)

 図2は、日本のクラウド環境の世界標準化を推進する標準化団体「オープンガバメントクラウド・コンソーシアム(以下OGC)」が2010年に調査した日本におけるデータセンター事業者のコスト構造である。この調査によると、サーバ当たりの月額コストのおよそ半分は運用コストとサーバやネットワーク機器などにかかるコストだ。運用と機器にかかるコストがコスト全体の半分というのは、世界各国のデータセンターと比較すると割合として小さい。ほかの部分にかかるコストが大き過ぎることが、日本のデータセンターのコスト効率を悪化させている。

NGDC_2_2.jpg 図2 日本におけるデータセンター事業者のコスト構造。インテルのクアッドコア・プロセッサを搭載したサーバ1台(消費電力は2200W)にかかる1月当たりの原価を示している。PUE 1.5のデータセンターで試算したもの(出典:オープンガバメントクラウド・コンソーシアム 2010年)

 上述の運用コストとサーバやネットワーク機器にかかるコストを除く残りの半分は、発電や蓄電等の設備、データセンタービルの建設、そして広大な土地の取得もしくは土地の賃借に費やされている。一般的に建造物は35年、設備は15年で償却するものだが、コンピュータ関連機器の償却期間はもっと短い。

 先に示したデータセンター事業者のサーバ当たりのコストの割合は、上記の期間で償却することを想定して算出したものだ。データセンター運用開始までにかかる初期費用を計算すると、コンピュータ関連機器にかかるコストが全体のおよそ30%、発電や蓄電等の設備、データセンタービルの建設、そして広大な土地の取得もしくは土地の賃借にかかるコストはおよそ70%にもなる。データセンターの利用コストを下げていくには、初期費用のうちコンピュータ関連機器にかかるコストを除いた70%をいかに削減していくか、という点が問題になる。

 データセンターが首都圏に集中していると、障害対策が必要な場面で、担当者がすぐにサーバがある場所に駆け付けられる。これは事業者にとっても利用者にとっても安心できることのようにも思われるが、最近のデータセンターは、運用の自動化を目指して機器が構成されているので、緊急メンテナンスのために高度な技術を持つ運用要員を近隣に配置する必要はない。つまり緊急時の対応を想定したとしても、データセンターを首都圏に建てる必要はあまりない。データセンター事業に必要なネットワーク環境が首都圏と同等の費用で手に入るならば、より土地代の安い地方に移設することで、大幅なコスト削減が見込めるということだ。

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