データセンターの電力を30%も削減、直流電源でサーバーを最適運用エネルギー管理

震災以降に企業からの需要が増大しているデータセンターだが、大量の電力を消費する問題を抱えており、有効な節電対策が求められている。コンテナの中にサーバーと直流電源装置、蓄電池まで搭載したモジュール型のデータセンターで、消費電力を30%削減する試みが進んでいる。

» 2012年09月27日 15時20分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 茨城県・つくば市にある産業技術総合研究所(産総研)の中で、「次世代モジュール型グリーンデータセンター」の実証実験が始まった。奥行きが約3メートルのコンテナにサーバー・ラック、直流電源装置、蓄電池、液冷システムなど、データセンターに必要な設備を1つのモジュールにまとめたものである(図1)。

図1 「次世代モジュール型グリーンデータセンター」の構成。出典:NTTファシリティーズ

 従来からある同規模のモジュール型データセンターの消費電力が28kW(一般家庭の約50倍)であるのに対して、このグリーンデータセンターは30%も少ない19.6kWを目指して開発された。特に節電の簡単で注目すべきは直流電源装置を使ったサーバーの最適制御で、加えて液冷システムによる空調にも特徴がある。

 通常のデータセンターでは交流の電源装置から直流に変換してサーバーに電力を供給しており、変換によって電力の損失が生じることで、消費電力が大きくなってしまう。この電力損失を直流電源装置から380Vの高圧のままサーバー用の電源ユニットに送ることで低減した。

 さらに消費電力を抑えるために、ユーザーからのアクセスが少ない場合にはサーバーの一部を停止させる。データの複製(レプリカ)を複数のサーバーに分散しておくことでサービスを継続することが可能だ(図2)。夏の昼間などに電力会社から使用量を抑制するように要請があった場合にも同様の節電運用が可能で、モジュール内にある蓄電池からの電力も活用して外部電力の使用量を引き下げる。

図2 直流電源装置と蓄電池を活用した節電の仕組み。出典:NTTファシリティーズ

 データセンターの内部ではサーバーなどの機器が使用する電力のほかに、サーバーから発生する熱の冷却に多くの電力を必要とする。この点では空冷よりも効率の良い液冷方式のサーバーを使って熱の排出を抑える。それでもモジュール内の温度調整は必要になるため、外の空気を取り入れて最適な温度と湿度を維持できる「グリーンユニット」をモジュールの外に設置する方法を採用した。

 この新しいモジュール型データセンターはNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「グリーンITプロジェクト」の一環で開発したもので、産総研のほか、NTTファシリティーズ、日本電気、三菱電機、長崎大学などが技術を提供している。今後1年以上をかけて実証実験を進め、節電効果を検証する予定である。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.