電気料金を引き下げる節電(第1回)−「照明」の傾向と対策スマートジャパン2012総集編

東京電力に続いて電気料金の値上げが相次いで実施される状況になってきた。それでも節電対策を徹底して電力の使用量を減らせば、電気料金を引き下げることができる。「スマートジャパン」に掲載してきた記事をもとに、毎日の電力を削減するための傾向と対策を機器別にまとめていく。

» 2012年11月05日 09時00分 公開
[スマートジャパン]

 オフィスでは朝から夜まで常に照明がついている。一般的なオフィスの電力使用量を機器ごとに見ると、夏のピーク時で24%、冬のピーク時で33%を照明が占める(図1)。

 冷暖房の利用が少ない春や秋は、もっと比率が高くなる。その結果、年間の電力使用量のうち30%以上が照明に使われる。それだけ照明の節電効果は大きく、電気料金を大幅に引き下げる有効な手段になる。

図1 一般的なオフィスの電力使用量に占める機器別の比率(夏と冬のピーク時)。出典:資源エネルギー庁

 従来のオフィスや工場では、照明に直管形の蛍光灯を使用していることが多い(図2)。特に「40形」と呼ぶ、長さが約120センチのものが主流だ。40形蛍光灯の消費電力は1本で40W程度である。この40形蛍光灯をLED照明に交換することで、消費する電力量を約45%も削減する効果がある。

 つまりオフィスの電力使用量の30%以上を占める照明をLEDに切り替えるだけで、半分近くの15%程度まで電力を削減できる。単純に考えれば、これだけで電気料金を15%も下げられるわけだ。

図2 直管型の蛍光灯

オフィス全体を明るくするのは非効率

 さらに運用面を工夫することで、もっと電力使用量を削減することが可能になる。点灯する照明の本数を間引く方法が最も簡単だが、より高度な手法として「タスク・アンビエント照明」がある。

 これは天井の照明を暗くして、作業する机上をタスク照明(照明スタンド)で明るく照らすという考え方だ(図3)。「アンビエント(周囲)」の照明と「タスク(仕事)」の照明を使い分けて効率化を図る発想である。

図3 タスク・アンビエント照明

 JIS(日本工業規格)が定める「事務所の照度基準」によると、パソコンのキーボードを操作することを前提にしたオフィスでは、照度は750ルクス以上でなければならない。ルクスは机上などの面における明るさを示す尺度だ。

 天井からの照明だけで机上の照度を750ルクス以上に保つには、高いところから強い光を放射する必要がある。オフィス全体は明るく見えるが、机上だけでなくて通路なども同じように照らすため、必ずしも効率的ではない。

 タスク・アンビエント照明の考え方を取り入れると、天井の照明は机上を300ルクスで照らす程度に抑え、作業する机上ではタスク照明を利用して750ルクス以上の明るさを確保する。

 すでにLEDを利用したタスク照明は広く普及しており、安いものなら5000円程度で入手できる。ごく近いところから光を照らして750ルクスにすればよいので、弱い光でも十分に足りる。消費電力は5〜6W程度の製品で間に合う。机上の作業が終了したら、タスク照明を消灯するように習慣づけることで、電力使用量のさらなる削減が可能になる。

センサーを併用して点灯・消灯を細かく制御

 照明の電力使用量を削減する効果的な方法は、まだほかにもある。オフィスや店舗ではフロア全体を同じように照らしていることが多いが、これも効率的ではない。窓から入ってくる自然光の強さが場所によって変わるからだ。昼間は場所によって照明の強さを変えると節電効果は大きい。

 例えば、自然光が強く入ってくる窓際では、照明の光を弱くし、フロアの中心付近は光を強くする。窓から自然光が強く入ってくる場所では、昼間は照明を使わないなど、場所と時間によって照明の強さを調節することで、電力使用量を下げることができる。

 とは言っても、照明の点灯・消灯をこまめに実行するのはかなり面倒である。そこでお勧めしたいのがセンサーの活用だ

図4 照度センサーと人感センサーの両方の機能を持つ製品例

 照明の制御に使えるセンサーとしては、まず照度センサーがある。照明の近くに設置しておけば、自然光の強さに応じて自動的に光の強さを調節してくれる。

 もう1つは人間の存在を感知する「人感センサー」も利用できる。人体が放つ熱(赤外線)を感知して、人間の存在と動きを認識するセンサーだ。人間がいる場所の照明を自動的に点灯させ、その後いなくなって一定の時間が過ぎたら自動的に消灯させることが可能になる。

 通常は1個のセンサーで複数の照明を制御できる。照度センサーと人感センサーの機能を併せ持つ製品もある(図4)。価格は1個あたり2万〜3万円程度だ。最近ではLED照明そのものに照度センサーや人感センサーを組み込んだ製品も販売されている。

 LED照明とセンサーを設置すれば、特に手間をかけずに節電ができて、電気料金の削減につなげることができる。初期コストはかかるが、長い目で見れば、早めに使い始めるのが得策だろう。

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連載第2回:「空調」の傾向と対策

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