空調機器(エアコン)の電力使用量は季節や地域によって常に変化する。気候に合わせて設定温度や運転時間を制御することが大切だが、クリーニングを実施すると年間を通した節電対策として効果的だ。古い空調機器ほど電力を多く消費するので、使用年数によっては買い替えも検討したい。
夏と冬では1日のうちの電力使用量が時間帯によって大きく変わる。最大の要因は空調機器の運転時間の違いにある。ただし一般のオフィスでは、営業時間内に冷暖房を継続して使うので、日中の電力使用量は夏も冬もフラットに近い(図1)。
もちろん電力のピークを抑制することは重要で、夏の昼間は設定温度を高めにする、冬の夜間は運転時間を早めに切り上げる、といった対策は必ず実施したいものである。ピークを抑制すれば1日の電力使用量を削減することができ、電気料金の低減にもつながる。
こうした運用面の工夫に加えて、抜本的な対策が2つある。1つは意外に忘れがちなことだが、エアコンのクリーニングだ。フィルターだけではなくて内部の熱交換器の汚れが消費電力に大きく影響する。クリーニングの前後では、1日の電力使用量が3割近く少なくなる(図2)。内部のクリーニングは専門業者に依頼する必要があるが、大した金額にはならないので定期的に実施することが望ましい。
もう1つの抜本的な対策は古いエアコンの買い替えである。オフィスでも店舗でも、一度設置したエアコンは長期間にわたって使い続けるのが一般的である。冷暖房に支障がなければ買い替える必要はないように思えるが、実際に消費している電力量には大きな違いがある。
業務用のエアコンで国内トップシェアのダイキン工業によると、15年前に設置したエアコンを使い続けると年間の電力使用量は購入時と比べて3割以上も増えてしまう(図3)。性能の劣化やフィルターの目詰まりが原因だ。
これを最新の機種に買い替えると、電力使用量は8割も少なくなるという。逆に考えれば、買い替えない場合は5倍の電力を使ってしまうことになる。古いエアコンを最新製品に取り換えるだけで、オフィスや店舗の電力使用量を冬と夏それぞれで1〜2割くらい削減できる可能性がある。
まずは現在使用中のエアコンの能力を最新製品と比較してみていただきたい。
エアコンの冷暖房能力を示す指標として「COP」と「APF」の2つがある(図4)。APFは2006年から業務用エアコンの冷暖房能力を表す指標として義務づけられており、それ以前の製品に表示されているCOPよりもオフィスの利用状態に近い値になっている。
COPやAPFの数値が大きいほど、電力使用量は小さくなる。この数値をもとに使用年数に応じた性能の劣化(15年で約3割ダウン)を加味すれば、大まかな比較が可能になるだろう。オフィスや店舗が賃貸の場合にはオーナーに確認して、状況によっては改善を依頼することも重要な対策のひとつである。
最後に、まったく違うアプローチとして、ガスコージェネレーションを導入する方法がある。ガスで発電した電力を使えるだけではなく、同時に発生する熱を使って冷暖房や給湯が可能になり、ダブルで節電効果がある
ガスコージェネレーションには工場などで使う大型のシステムから、店舗や家庭で使える小型の製品まである。燃料のガスから電力と熱に変換できる効率は70〜85%にもなり、通常の火力発電と比べてガスの利用効率は約2倍に向上する(図5)。
ガスで発電した電力と熱による冷暖房の分だけ電力会社からの購入量が減るため、電気料金は大幅に安くなる。その代わりにガス料金が増えることになるが、両方を合わせた光熱費の総額は一般的な利用形態であれば確実に下がる。
特に今後は全国各地で電気料金の値上げが見込まれることから、相対的にガス料金のほうが安くなる可能性が大きい。オフィスや工場で設置できるスペースがあれば、ガスコージェネの導入を検討したい状況である。
連載第1回:「照明」の傾向と対策
連載第3回:「パソコン」の傾向と対策
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