首都圏の一角を成す埼玉県は面積が全国で39番目の狭さだが、太陽光発電の規模では第2位を誇る。日照時間が日本で一番長く、その恵まれた自然エネルギーを生かすために、高額の補助金制度などを通じて太陽光発電や太陽熱を利用したシステムを積極的に広めている。
埼玉県が太陽光発電の導入実績で全国第2位と聞いて、意外に感じる読者も多いのではないだろうか。再生エネルギー全体で見ると平均以下の規模だが、太陽光発電のほかに太陽熱の利用量も全国で7番目に多い(図1)。その大きな要因は2つある。
1つ目の理由は他県に比べて日照時間が長いことだ。埼玉県が気象庁のデータをもとにまとめた資料によると、雲の量が少ない「快晴日」の日数が埼玉県の熊谷市では年間に51日もあって、晴天のイメージが強い宮崎県を上回って全国で一番多い(図2)。北海道や東北と比べると圧倒的に快晴日が多く、太陽光発電や太陽熱を利用した再生可能エネルギーに向いた土地柄であることがわかる。
もう1つの理由は、この恵まれた気象条件を生かすために、県が積極的な推進策を展開したことにある。現在でも「電力自活住宅等普及促進事業補助制度」が総額8億円で設けられていて、既築の住宅に太陽光発電システムを導入すると1件あたり10万円までの補助金が支給される。
国の補助金の申請件数を見ても、埼玉は愛知に次いで全国で2番目に多い(図3)。東京都に隣接している面積の狭い県だが、住宅の総数に対する補助金の申請率は東京の2倍以上にのぼる。
ただし2012年7月から始まった再生可能エネルギーの固定価格買取制度に対する申請件数を見ると、出力が10kW未満では埼玉は第2位だが、1MW(メガワット)を超えるメガソーラーの申請は9月末時点で1件もない。広い空き地が少ないことが要因と考えられる。
それでも最近になって県の所有地や浄水場などにメガソーラーを建設する計画が進んできた。例えば日照時間の長い県北部の行田市にある浄水場に、5000枚の太陽光パネルを設置して、1.2MWの発電を2012年3月から開始している。浄水場内の電力に利用することで、年間に約2200万円の電気料金を削減できる見込みだ。
太陽光発電に加えて太陽熱の利用拡大にも大きな期待がある。実際に県内の再生可能エネルギーの潜在量を見ると、太陽光発電でも開拓余地は十分に残っているが、より大きな可能性を秘めているのが太陽熱である(図4)。利用可能な量は太陽光発電の6倍もあると推定されている。
すでに県内では太陽熱を利用したシステムの導入が各地域で始まっている。代表的な例は「越谷レイクタウン」で、2008年に開発された大規模な市街地である。この街に建設した世帯数500戸の大型マンションに、太陽熱を利用したセントラル・ヒーティング・システムが導入された。マンションの天井に敷き詰めた太陽熱パネルで暖めた温水を、各住宅の給湯や床暖房に利用している(図5)。
今後は越谷レイクタウンのような再生可能エネルギーを活用した「エコタウン」を県内に展開していく計画で、5つの自治体が候補地に決まっている。このうち住宅地域では電力消費量の80%、その他の地域では20%を再生可能エネルギーで供給できるようにすることが目標である。
2014年版(11)埼玉:「大きな池に降り注ぐ太陽光、水が豊かな低地で相乗効果」
2013年版(11)埼玉:「狭い首都圏で太陽光発電を増やす、池の上にもメガソーラーを建設」
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