重要性が高まる「電験三種」、5万ボルト未満の電気設備に欠かせない資格法制度・規制(1/2 ページ)

ビルや工場などの電気設備を保全管理する担当者には、国家資格の「電気主任技術者」を取得することが義務づけられている。一般の企業が保有する電気設備は5万ボルト未満のものが大半で、電気主任技術者の第三種、通称「電験三種」の資格を持った担当者が必要になる。

» 2012年11月21日 15時00分 公開
[辻本剛/翔泳社アカデミー,スマートジャパン]

 私たちが現在暮らしている社会は「電気社会」といってもよいほど、電気を使う場面が多くなっている。もし突然、電気がなくなってしまったら、たちまち私たちの生活が立ち行かなくなることは容易に想像できる。

 これまでは主に火力発電を中心とした化石燃料を使った方法で電気を作ってきたが、最近では化石燃料を使わない自然エネルギーから電気を作る技術の開発が進められている。限りある資源を大切にしながら、いまや生活に欠かすことのできない電気を安定して確保するための取り組みのひとつである。

 電気を安心して、いつでも使えるようにするためには、供給するシステムの運用も大切である。電気を供給する設備がきちんと整備・点検されて、いつでも正確に機能してくれることが電気社会の前提になるからだ。

 電気設備の保全管理を実施できるのは「電気主任技術者」と呼ぶ国家資格を持った専門家に限られている(図1)。電気設備には発電や変電関係の「供給側」設備と電気を使用する側の「需要側」がある。このうち需要側のビルや工場、公共施設や病院などで最も多いのは6600ボルトの高圧設備である。

 図1 電気設備関連の国家資格

 電気主任技術者のうち、5万ボルト未満の電気設備の保全管理を実施できるのが「第三種電気主任技術者」で、通称「電験三種」と呼ばれている。私たちが普段、何気なく使っている電気の見えないところで、電験三種の資格者が活躍している。

あらゆる業種に広がる高圧電気設備

 電気設備は法律によって定期的な点検が義務づけられている。これはひとえに電気の安全を確保し、電気がいつでも安定して使えることを維持するための措置である。特に高圧の電気設備の場合、万一事故が起こると、電気が使用できなくなるばかりか、時には人命を損なう危険さえある。こうしたことを未然に防ぐことが保全管理の目的だ。

 電気主任技術者は、あらゆる業種で求められる。建設業においては、建物自体を建設する会社のほかに建物内のインフラ工事を専門とする会社にも電気主任技術者が必要になる。最近の大型マンションでは、高圧で電気を一括購入するケースが増えてきており、そのため高圧電気設備の保全管理をマンションごとに実施しなくてはならない。

 このほかに金属、鉄鋼、窯業など高温を扱う製造業でも高圧電気設備が不可欠で、中には自家発電まで手掛けている会社がある。流通業では百貨店やショッピングモール、アミューズメント施設など、多くの人が利用する施設で大量の電気が必要になり、電気主任技術者が活躍している。鉄道や運輸業でも電気主任技術者が欠かせない。

 最近では情報通信業で電気主任技術者の需要が高まっている。データセンターの大型化や基地局の増設に伴って、高圧の電気設備が急増しているためだ。

 電気主任技術者は「建物がある限り、仕事がある」という状況で、利用価値の高い資格と言える。電気主任技術者の中でも特に必要性が高まっている「電験三種」の試験の概要について詳しく説明しよう。

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