エネルギーを賢く利用するスマートハウス基礎講座(3)(1/2 ページ)

スマートハウスを構成する「創エネ・蓄エネ・省エネ」のうち、今回は省エネに焦点を当て、電気を賢く使う手法について解説する。中心的な役割を担うのはHEMS(家庭向けエネルギー管理システム)であり、生活スタイルを変革する期待がかけられている。

» 2012年11月30日 09時00分 公開
[渡辺直哉/旭化成ホームズ,スマートジャパン]

連載(1):「なぜ今、スマートハウスなのか」

連載(2):「創エネ・蓄エネの実現方法と導入メリット」

 スマートハウスを構成する第3の柱、電気を「賢く使う」という観点では、2つの考え方がある。

1.電力源を賢く選択して使用する。

2.電力を賢く無駄なく使用する。

 第1の視点に関しては、これまで選択の余地はなかった。電力会社から安定的に電力を供給してもらえると思っていたところが、東日本大震災に伴う原子力発電所の事故で状況は一変した。電力会社が供給する電力に頼ってばかりいられなくなったのだ。

 そこで、太陽光発電や家庭用燃料電池といった家庭での発電、いわゆる「家力発電」による電力源の選択肢が新たに加わった。さらには蓄電池まで動員して、電力供給量の分散・安定化を図るという選択肢まで現れた。ここまでは前回の説明で触れたことだ。

 もうひとつ、モビリティとの連携という選択肢が生まれた。電気自動車の日産リーフには24kWhという大容量のリチウムイオン蓄電池が搭載されている。この蓄電池に「ためた」電気を利用すると、一般家庭の丸2日分の電気をまかなうことができる。

 住宅と電気自動車の連系は遠い未来のことと思われがちだったが、今や電気自動車への充電のみならず、電気自動車から住宅への給電も可能となったのだ。このような設備をV2Hシステムと呼ぶ(図1)。Vehicle To Home(自動車から住宅へ)の略称である。

図1 V2Hシステムの仕組み

 このシステムは比較的廉価な費用で設置できるので、電気自動車の所有者には必須のアイテムと言ってもよいだろう。通常の蓄電池以上に災害時の安心を担保することができる。加えて太陽光発電と組み合わせれば、発電時の余剰電力量を増やすことも可能だ。

 さらに電気自動車は排気ガスを放出しないクリーンエネルギーカーでもある。従来のガレージの設計思想に大きな変革をもたらす可能性も秘めている。かつて日本には「曲屋(まがりや)」と呼ばれる、ひとつ屋根の下に馬と同居する民家が数多くあった。馬は移動手段や貴重な労働力であっただけではなく、その排出物を肥料や燃料として有効活用していた。

 今でもモンゴルに行けば、そのような状況を目にすることができる。現代の電気自動車との同居生活もどこか似ている。しかし強烈な臭いに困ったりしないところがモダンに進化した、ということか。

HEMSで子供部屋の状況も分かる

 そうは言っても、電気を「賢く使う」という考え方は第2の視点、つまり無駄なく使用する、ととらえるのが一般的である。実際に第1回で解説したように、ここ数年は電気の使用量が増加の一途をたどっている。そこで注目を集めているのが「HEMS」(家庭向けエネルギー管理システム)だ。

 住まい手にとってはHEMSの活用によって2つのメリットが期待できる。1つは家庭内の電気使用量をきめ細かく把握して省エネ行動につなげられる。もう1つは家電機器を最適に使用制御して、快適性を損なわずに省エネに貢献できるというメリットがある。

 HEMSはスマートハウスの中核を担いつつあり、住宅メーカー各社が積極的に搭載し始めている。現在のHEMSの大きな特徴は、家庭内の電気の「見える化」である。発電や売電、消費電力など家庭内の総合エネルギーの状況や、太陽光発電システム・蓄電システムの充放電などエネルギー別の使用量がひと目で把握できる(図2)。

図2 HEMSの画面例

 さらには、各部屋の電力使用量やエアコンなど家電の消費電力を把握することもできる。このようなデータは蓄積され、過去のデータと比較・確認することができる。例えば、昨晩の子供部屋の電力使用量を確認して、遅くまで勉強していたのね、と子供の様子をうかがい知ることができる。あるいは昨年の同時期と比較して今年はこんなに節電しているな、と充足感にふけったりと。

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