福島沖で稼働予定の世界最大規模の風力発電機、試験運転が始まる自然エネルギー

三菱重工業は、世界最大規模となる出力7MWの風力発電機建設のため、中心となる新技術を組み込んだ風力発電機の試験運転を始めた。計画が順調に進めば、2014年には福島沖に出力7MWの風力発電機が建つ。

» 2013年01月28日 15時00分 公開
[笹田仁,スマートジャパン]

 今回試運転を開始した風力発電機は、三菱重工業の横浜製作所に建っている出力2.4MWの発電機だ(図1)。これまでは風車の回転を受けて、歯車で発電機に動力を送っていた。しかし、今後の大出力化の流れを考えると、歯車を使った機構を使い続けていては、歯車が巨大化し、点数も増え、複雑になり、メンテナンスが難しくなる。歯車と発電機を内蔵する部分(ナセル)も従来のものより大きくなってしまい。建造コストに大きな影響を与えてしまう。

図1 三菱重工業が横浜製作所に建造した試験機。左側は発電機や油圧ドライブトレインを内蔵したナセルで、右側は風車。出典:独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構

 三菱重工業は今回試運転を開始した発電機に「油圧ドライブトレイン」を採用した(図2)。油圧ドライブトレインでは、風車が軸を回すと油圧ポンプが作動し、油が発電機の方向に流れる。発電機にもポンプが付いており、油圧でポンプを作動させて発電機の軸を回転させる。発電機を回転させた油は別のルートを通って風車のポンプの方向に移動する。油が風車の軸と発電機の間を循環しながら動力を伝えるのだ。

図2 油圧ドライブトレインの仕組み。風車と発電機の間で油を循環させて、力を伝える。出典:独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構

 風が弱いときや強過ぎるときは、油を押し出すポンプの力を弱めたり、「アキュムレータ」と呼ぶ、油を蓄積しておく部分に一時逃がすなどの方法で発電機に伝える力を調節できる。

 三菱重工業は2010年に買収したイギリスのベンチャー企業である「アルテミス社」の技術を活用し、三菱重工が保有している油圧制御技術も組み合わせて、油圧ドライブトレインを完成させた。この事業は独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の援助を受けている。

 油圧ドライブトレインを利用すると、いくつもの歯車を使う必要がなくなり、インバーターも不要になる上、歯車を起因とするトラブルがなくなる。ナセル本体の小型化とコスト圧縮も可能で、今後の大出力化に向く技術と期待を集めている。

 三菱重工業は今後、2013年の秋にはイギリスで油圧ドライブトレインを搭載した地上風力発電機の実証運転を始める予定。さらに、2014年には福島県沖に油圧ドライブトレインを搭載した出力7MWの浮体式風力発電機の稼働を始める予定だ。

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