日本最小の県が30年前に挑んだメガソーラー、技術の進化で再生日本列島エネルギー改造計画(37)香川

現在では珍しくないメガソーラーだが、30年以上も前の1981年に、香川県の小さな町に建設されたことがある。残念ながら実用化には至らず、香川県の再生可能エネルギーの導入は停滞した。最近になって太陽光発電の技術が進み、ようやく日射量の多さを生かせる時が来た。

» 2013年02月19日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 香川県は再生可能エネルギーを導入するには不利な条件が多い。日本で一番面積が小さいうえに、半分を平地が占める。山や川が少なく、瀬戸内海から吹く風は強くない。風力発電や小水力発電の可能性はほとんどないことが環境省などの調査でも明らかになっている。

 その中で有望なのが太陽光である。温暖で雨が少ない瀬戸内海の気候を生かせる太陽光エネルギーは香川県にとって最大の資源になる。実は1981年に、太陽光ではなく太陽熱による世界初のメガソーラーが瀬戸内海に面した仁尾町(現・三豊市)に建設されたことがある。2回にわたるオイルショックで石油の価格が暴騰した時期に、当時の通商産業省(現・経済産業省)が推進した国家プロジェクト「サンシャイン計画」の一環で実施したものだ。

図1 旧・仁尾町(におちょう)に建設された太陽熱発電システム。出典:旧・通商産業省

 太陽光を効率的に集めるために「タワー集光式」(図1の右上部分)と「曲面集光式」(図1の中央部分)の2つの方式を使って、それぞれで1MW(メガワット)の太陽熱発電を世界で初めて実現する先進的なプロジェクトだった。

 通商産業省の報告書によれば1MWの発電には成功したとされているが、結局のところ実用化には至らず、香川県がメガソーラーの先進県になるチャンスは失われてしまった。詳細は不明ながら、技術面の問題で1MWの発電能力を安定して発揮することができなかったようだ。

 その後も通商産業省は省エネを推進する「ムーンライト計画」や新たに再生可能エネルギーの普及を目指す「ニューサンシャイン計画」を巨額の国費を使って推進したが、仁尾町で取り組んだ太陽熱発電に関しては1980年代の半ばでストップしている(図2)。

図2 エネルギー分野の主な国家プロジェクト。出典:経済産業省

 この仁尾町のプロジェクトが成功しなかったことの影響ではないだろうが、香川県の再生可能エネルギーの取り組みは近隣の県に比べて大きく遅れをとっている。

図3 香川県の再生可能エネルギー供給量(2010年3月時点)。出典:千葉大学倉阪研究室と環境エネルギー政策研究所による「永続地帯2011年版報告書」

 導入量は沖縄県に次いで全国46位にとどまり、太陽熱や太陽光も決して多くない(図3)。風力発電や小水力発電は地理的に難しく、廃棄物などによるバイオマスの活用が多少は進んでいる程度だった。

 しかし最近になって、ようやくメガソーラーの建設計画が増え始めた。口火を切ったのは創業70年の今治造船である。仁尾町からも近い多度津町にある工場の屋根に、6000枚以上の太陽光パネルを設置して、1.3MWの発電を可能にした(図4)。稼働したのは2011年のことで、ちょうど仁尾町の太陽熱発電プロジェクトから30年後にあたる。

図4 今治造船が工場の屋根に設置した太陽光発電システム。出典:今治造船

 続いて多度津町から東側の坂出市でも、太陽光発電事業を全国展開する日本アジアグループがメガソーラーの建設に乗り出した。瀬戸内海に面した塩田の跡地を利用して、2012年11月に2MWの「坂出ソーラーウェイ」の運転を開始した(図5)。さらに隣接する空き地にも同規模のメガソーラーの建設を進めており、2013年3月に稼働する予定になっている。

図5 坂出ソーラーウェイ。出典:日本アジアグループ

 そして仁尾町にも再びメガソーラーが立ち上がる。地元の企業による2.5MWのメガソーラー建設計画が動き出し、2013年10月から運転を開始する計画だ。今回は1万枚のパネルを使った太陽光発電で技術面の問題もない。

 香川県では民間企業がリードする形でメガソーラーの建設が進んでいる。県内には太陽光発電に適した空き地が数多く残っている可能性がある。隣の徳島県のように、自治体が率先して事業者を誘致する取り組みが望まれる。

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