電気料金は20年前と変わらない水準、それでも企業の収益を圧迫?エネルギー管理

電力会社が相次いで料金の値上げを表明したことを受けて、製造業を中心に収益への影響を訴える声が高まっている。ところが直近の2011年度の電気料金は1994年度と比べて14%も安い。2012〜13年度の各社の値上げ率は10%前後で、それを加えても20年前の水準と変わらない。

» 2013年02月20日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 東京電力を皮切りに電気料金を値上げする動きが全国に広がり始め、企業と家庭の双方から苦悩の声が聞かれる。基本料金と電力量料金を合わせた電気料金全体で考えると、家庭向けで1割弱、企業向けでは1割強の値上げになる。確かにコストが増える影響は大きいが、こと企業においては収益悪化の要因として強調し過ぎではないだろうか。

 実際のところ電気料金は過去20年ほどの間に1割以上も下がっており(図1)、当面の値上げによって20年前と同じ水準に戻るわけだ。決して過去から上がり続けているわけではない。一方で電力使用量は日本全体で20年間に1割ほど増えているため、企業や家庭が支払う電気料金は平均して1割程度の増加になる。

図1 電気料金の推移。電力会社の販売収入を販売電力量で割った単価。「電灯」は家庭向け、「電力」は企業向け。出典:電力システム改革専門委員会

 今後さらなる節電によって電力使用量を1割削減できれば、電気料金は増えずに済む。簡単なことではないが、減らせる余地は少なくないはずだ。オフィスや店舗では古いエアコンを買い替え、工場でも古い機械を入れ替えれば、電力使用量を大幅に削減することができる。BEMS(ビル向けエネルギー管理システム)の導入も効果的である。

 この程度の設備投資を事業活動の中で回収できないようであれば、もとより企業として存続することは難しいと考えられる。BEMSや省エネ機器の導入には政府や自治体の補助金も活用できる。

 ただし日本の電気料金が海外の主要国と比べて割高であることも事実だ。資源エネルギー庁の調査では、2009年の産業向け電気料金は米国や韓国の2倍以上で、英国など西欧諸国と比べても高い(図2)。

図2 主要国の電気料金(2009年、産業向け)。当時の1ドル=93.6円で換算。出典:資源エネルギー庁

 理由のひとつは電力会社の高コスト構造にある。電力会社のコストを削減できる余地は大きく残っているが、今のところ市場における競争が限定的なため、電気料金を安くして顧客を増やす必然性がほとんどない。この点で政府が進める電力システム改革に対する期待は大きい。

 まずは電力会社のコスト削減よりも早く、徹底した節電によって電気料金の増加分を抑制することに取り組みたい。20年前と比べれば、エアコンも照明も機械類も、消費電力は格段に低くなっている。電気料金の値上げは収益悪化の大きな要因にはならないはずである。

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