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» 2013年02月28日 09時00分 UPDATE

日本列島エネルギー改造計画(40)福岡:北九州で風力と水素エネルギー、南には太陽光が広がる

福岡県は太陽光発電の導入量が西日本で最も多く、住宅への普及率は全国でトップクラス。日射時間の長い南部ではメガソーラーが増加中だ。対する北部の沿岸地域は風力発電に適していて、洋上のプロジェクトも始まった。製鉄所と連携した水素エネルギーの活用でも先を行く。

[石田雅也,スマートジャパン]

 温暖な九州は太陽光発電が他の地域よりも普及しているように想像するが、実際にはそれほど進んでいないのが現状だ。中部の愛知・静岡や関東の埼玉のほうが導入量は多い。そうした中で九州の最北端にある福岡県の取り組みが先行している。

ranking_fukuoka.jpg 図1 福岡県の再生可能エネルギー供給量(2010年3月時点)。出典:千葉大学倉阪研究室と環境エネルギー政策研究所による「永続地帯2011年版報告書」

 太陽熱の利用量では全国で2位、太陽光発電も全国5位の規模に拡大している(図1)。特に家庭向けの太陽熱を使った給湯システムや太陽光による発電システムを導入する事例が着実に増えてきた。県や市町村が補助金制度を積極的に拡充してきた効果が大きい。

 再生可能エネルギーの拡大に向けて福岡県は全国で初めての試みも開始している。2012年7月にサービスを始めた「再生可能エネルギー導入支援システム」である。県のウェブサイトから利用できるサービスで、市町村名や郵便番号などを入力すると、再生可能エネルギーの導入を検討するために必要な情報が画面に表示される仕組みだ(図2)。

fukuoka_system.jpg 図2 福岡県再生可能エネルギー導入支援システムの画面例。出典:福岡県企画・地域振興部

 対象になる再生可能エネルギーは地熱を除く4種類。例えば太陽光では日照時間などの条件を設定すると、該当する地域を表示して、さらに事業者を誘致している候補地の情報も見ることができる。このところ全国各地の自治体がメガソーラーの誘致に相次いで乗り出しているが、情報提供の面では福岡県が進んでいる。

nissho.jpg 図3 福岡県内の月間平均日照時間。出典:福岡県企画・地域振興部

 このシステムで調べると、福岡県内では特に南部の地域が太陽熱や太陽光を利用するのに適していることがわかる。

 熊本県に近い大牟田市の周辺は日照時間が長く、月間の平均日照時間は160時間を超え、一部の地域は180時間以上になる(図3)。1日あたり6時間は一定量を上回る日射量が期待できるわけだ。

 全国平均では月間の日照時間が155時間程度であることから、大牟田市などでは平均を1割以上も上回る発電量を見込める。家庭における普及に加えて、最近はメガソーラーも増えてきた。

 すでに九州電力が大牟田市内の石炭火力発電所の跡地に、発電能力3MW(メガワット)の「メガソーラー大牟田発電所」を2010年11月から稼働させている。年間の発電量は320万kWhになり、設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は12.2%と高い。通常は11%程度が太陽光発電の設備利用率であり、それよりも1割くらい多くなる。

 一方で北九州市を中心に県の北部では風力発電の拡大が期待できる。風力発電に適した平均風速6メートル/秒以上の地域が沿岸部に広がっているほか、近くの沖合では風速が7メートル/秒以上に達する(図4)。

yojo_fusoku.jpg 図4 福岡県周辺の洋上における風速。出典:福岡県企画・地域振興部

 設備利用率で比較すると、平均風速が6メートル/秒の場所では約20%になり、太陽光発電の1.5倍以上になる。さらに7メートル/秒を超えると25%以上に上昇する。洋上の風力発電に注目が集まる大きな理由だ。

yojo_nedo.jpg 図5 北九州市の沖合に建てられた洋上風況観測タワー。出典:NEDO

 これまでのところ大規模な風力発電所は北九州市の臨海地域にある「エヌエスウインドパワーひびき」の1か所だけで、10基の大型風車を設置して発電能力は15MWある。この風力発電所から北の沖合1.5キロメートルほどの場所で、最先端を行く洋上風力発電の実証実験が進められている。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と電源開発(J-POWER)が共同で取り組んでいるプロジェクトで、2012年7月には日本で初めて洋上の風速などを観測するためのタワーを設置した(図5)。風車の設置工事も始まっていて、2013年度中に2MWの発電を開始する予定だ。同様のプロジェクトは千葉県の銚子沖でも並行して進んでいて、この2つの地域が日本の洋上風力発電を先導する形になる。

 エネルギー関連の先進的な取り組みとしては、水素エネルギーの活用でも北九州市がリードしている。水素は燃料電池に欠かせないエネルギー源で、今後の拡大が期待されるガス・コージェネレーション・システムや燃料電池自動車を普及させるうえで重要な役割を果たす。

 福岡県内では北九州市と福岡市で「水素タウン」のプロジェクトが進行中だ。北九州市では地元の製鉄所で発生する大量のガスから液体水素を製造して、パイプラインを通じて市内の各所にある燃料電池に水素を供給している(図6)。

suisotown.jpg 図6 「北九州水素タウン」の全体像。出典:西部ガス

 供給先のひとつとして、見た目も従来のガソリンスタンドと同じような「水素ステーション」がある。このステーションで燃料電池自動車に水素を供給することができる。

 政府は将来に向けたエネルギー問題の解決と新しい産業の育成を目指して、電気自動車と並行して燃料電池自動車の普及を図る方針だ。そのため2015年度までに4 大都市圏(首都圏、中部、関西、北部九州)を中心に100 か所の水素ステーションを整備する計画である。

 今のところ燃料電池自動車や水素ステーションに関しては福岡県のほか、トヨタ自動車の本拠地である愛知県の取り組みが進んでいる。太陽エネルギーと同様に水素エネルギーの分野でも、この2つの県が日本全体を牽引する役割を担うことになる。

*電子ブックレット「日本列島エネルギー改造計画 −九州・沖縄編−Part I」をダウンロードへ

2014年版(40)福岡:「水素タウンで先を走る、太陽光やバイオマスから水素も作る」

2013年版(40)福岡:「九州の新しい発電拠点へ、2020年までに再生可能エネルギーを3倍以上」

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