複数の水力発電所が隣接している場合、水路工事だけで出力を増強できることがある。富山県南部では3つの発電所が使う水の配分を変えることで、発電量を増やせるという。
水力発電所はダムが前提となるため立地に制限がある。大規模な水力発電所の増設はもう無理だ。このような意見は正しい。しかし、これ以上、水力発電を強化できないという結論にはならない。関西電力は水力ならではの改善策を採ろうとしている。
富山県南砺市の岐阜県寄りに立地する水力発電所「境川発電所」の最大出力は2万4200kW(24MW)。年間発電量は7300万kWhだ。ここにある工事を施すことで年間発電量を23%(1700万kWh)増やすことができるという。
境川発電所は境川の水を境川ダムにため、流れ落ちる水を使って発電している(図1)。境川のすぐ南には加須良川と庄川が流れており、こちらの水は新成出発電所と成出発電所で利用している。
関西電力の発想はこうだ。成出発電所や新成出発電所と比べて、境川発電所の方が、有効落差*1)が、約4倍大きい。境川発電所の有効落差は216.7m、一方、残り2つの発電所は約53mである。
このため、3つの発電所で使う総水量が変わらないとしても、なるべく多くの水を境川発電所に通せば、発電量が増える。そのためには、加須良川の上流に取水えん堤を作り、境川に水を流せばよいことになる(図2)。
*1) ダムの取水口と水車の高さの差をいう。
この手法だと、成出発電所(出力3万5000kW)と新成出発電所(出力5万8200kW)に向かう水が減り、それぞれの発電量は低くなる。それでも境川発電所の発電量が大きく伸びるため、3つの発電所を合わせた年間発電量は1700万kWh増えるという計算だ。
2016年5月に取水えん堤と水路の工事に着工、2018年12月の完成を予定している。
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