中・大規模ビルのメニュー 「東京の単価は北陸の1.5倍」知らないと損する電気料金の仕組み(6)

規模の大きなオフィスビルや工場向けに「特別高圧」と呼ぶ最上位のメニューがある。契約電力が2000kW以上であることが条件で、単価は通常の高圧よりもさらに安い。ただし地域間の差が大きく、東京電力の単価は北陸電力と比べて1.5倍以上も高くなっている。

» 2013年06月13日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

連載(1):「基本料金を安くする対策」

 電力の使用量が少ない家庭・商店向けの「電灯」から始まり、使用量が多くなるに従って「低圧」「高圧小口」「高圧大口」と契約メニューの区分は上がっていく。さらに大規模なオフィスビルや工場向けに「特別高圧」と呼ぶ最上位の契約メニューがある(図1)。

図1 電力会社と結ぶ契約メニューの区分

 このような契約メニューの階層は、発電所から利用者へ電力を供給する送配電の仕組みに合わせたものである。発電所から送り出される電力は22万ボルト以上の超高圧の状態で、それを変電所で6万ボルトの特別高圧、さらに6000ボルトの高圧、最終的に200ボルトや100ボルトの低圧に変換して利用者の設備まで届く(図2)。

図2 発電から送電・変電・配電の流れ。出典:九州電力

 電気料金の単価は変電所を通って低圧になるほど高くなっていく。各電力会社の契約メニューの中で単価が一番低いのは特別高圧である。ただし地域による差が非常に大きい。

同じ県内でも単価に大きな差が出る

 現時点で最高額の沖縄電力と最低額の北陸電力の電力量料金の単価を比較すると、実に1.5倍以上も差がある。東京電力は沖縄に次いで2番目に高く、やはり北陸と比べて1.5倍以上の単価になっている。5月から値上げした関西電力も北陸の1.4倍以上だ。

 特別高圧の標準的な契約メニューは北海道を除いて「夏季」(7月〜9月)と「その他季」(10月〜6月)の2本立てで単価を設定している(図3)。夏季の単価を見ると、東京電力が14.86円で、北陸電力は9.47円。その差は1.57倍もある。夏季以外は1.61倍になる。

図3 電力会社別の標準的なメニューの料金(特別高圧)

 これだけ大きな価格差になると、使用量が多い特別高圧では企業のコスト負担に大きく影響する。状況によってはオフィスや工場の移転も検討課題になるだろう。ちなみに単価の安い北陸電力の営業エリアは富山県と石川県の全域、さらに福井県と岐阜県の一部が入る。福井県は地域によって北陸電力と関西電力に、岐阜県では北陸・関西・中部の3電力会社に分かれている。

 北陸電力に次いで単価が低いのは中部電力、中国電力の順番だ。静岡県は東京電力と中部電力、三重県は中部電力と関西電力、兵庫県は関西電力と中国電力、というように2つの電力会社のエリアが県内で混在している。わずかな立地の違いで電気料金が大きく変わってしまう状況にある。

時間帯や使用時間数で単価が変わる

 そうは言ってもオフィスや工場の移転は簡単に実施できることではない。電力会社が提供するメニューの中には、使用状況に応じて単価を低く抑えられるものがある。北海道電力を除く各社は季節と時間帯を組み合わせたメニューを用意している。

 メニューの構成がわかりやすい中部電力を例にとると、特別高圧の標準メニューとして「季時別」と「季節別」の2種類がある。このうち季時別を選択すると、電力需要の多い日中の単価が高く、夜間の単価が低くなる(図4)。夜間の使用量が多い業態には有利なメニューである。昼間の電力を太陽光発電で自給できる場合にも効果的だ。

図4 季節と時間帯に応じて単価が変わる「季時別」(中部電力の場合)。出典:中部電力

 このほかに九州電力は高圧に限定して「負荷率別契約」というメニューを提供している。基本料金の単価は通常と同じで、電力量料金の単価が使用時間数に応じて下がっていく。月間の最初の100時間までは通常の単価(夏季12.37円)よりも4%ほど高いが、100時間を超えると安くなり、400時間を超えれば14%も低い単価になる(図5)。

 月間で400時間は1日24時間フルに電力を利用して約17日分に相当する。大量の電力を使う機械や設備で連続運転が必要なケースでは、電気料金を引き下げる手段になる。

図5 使用時間数に応じて単価が変わる「負荷率別契約」(高圧だけに適用)。出典:九州電力

 九州以外の電力会社でも使用時間数による割引メニューを提供しているところはある。高圧や特別高圧の電気料金は自由化されているので、適当なメニューが見あたらなくても、利用状況に応じた割引の適用を交渉することは可能だ。

 電力会社は自由化の影響を受けて、標準的な契約メニューのほかに、さまざまな特別メニューを増やし始めている。曜日によって単価を安くしたり、契約期間の長さによって割引を適用したりするなど、利用者から見て検討する価値のある新メニューが少なからずある。

連載(7):「北海道電力のメニュー」

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