東京電力のメニュー 「高圧にピークカット割引」知らないと損する電気料金の仕組み(9)

電力会社の中で先陣を切って値上げを実施した東京電力の単価は、沖縄と並んで全国で最も高くなった。少しでも料金を抑えるために、時間帯や曜日によって単価を安くしたメニューがある。契約電力が低い高圧小口向けには、夏と冬のピークを引き下げることで割引を受けられる制度も始まった。

» 2013年07月04日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 日本の物価は東京が一番高く、電気料金も同じだ(図1)。標準的なメニューの単価を比較すると、企業向けの高圧電力と低圧電力の単価はいずれも全国で最高額になっている。規模の大きいビル向けの特別高圧と家庭・商店向けの従量電灯は沖縄に次いで2番目である。ほかの電力会社が値上げしても、当面のあいだ順位は変わらないだろう。

図1 用途別の標準的なメニューと料金

 さまざまな節電対策を実施する以外に電気料金を引き下げる方法はないが、より大きな効果を上げられるメニューを選ぶことは可能だ。東京電力には時間帯や曜日で単価を何段階かに分けたメニューがある。企業の営業時間や家庭の生活パターンによっては、安い時間帯の電力を使って電気料金を下げることができる。

時間帯別の夜間料金は2割以上安い

 東京電力は高圧電力と低圧電力の両方で季節別・時間帯別のメニューを用意している。高圧用の「業務用季節別時間帯別電力」の単価を見てみると、夏季(7月〜9月)は3段階、それ以外の季節は2段階で設定している(図2)。

図2 「業務用季節別時間帯別電力」の単価。出典:東京電力

 通常の「業務用電力」と比べて、昼間(8時〜22時)の単価が1割ほど高く、その代わりに夜間の単価は2割以上も安くなる。ただし夏季の13時〜16時はピーク時間帯の最も高い単価が適用されるため、太陽光発電を併用するなどピークカットの対策を実施できることが前提になる。

 このメニューが適している業種としては、24時間営業の店舗のほか、夜間に大量のサーバーを稼働させるデータセンターなどがある。同様の季節別・時間帯別の契約メニューは北海道と中部を除く各電力会社でも用意している(北海道と中部にはウイークエンドプランがある)。

家庭向けには土日割引メニューも

 家庭向けには季節に関係なく、朝や夜の単価を大幅に安くしたメニューのほか、土曜日と日曜日の単価を低めに設定したメニューを2013年5月から開始した。このうち土日割引のメニューを除くと、基本料金が通常の「従量電灯B」(60A)よりも月に400円近く安くなる(図3)。年間で約4500円を削減できる。

 そのうえで安い時間帯の単価は3割以上も低くなる一方、逆に高い時間帯に入ると2割以上の単価にはね上がる。1日のうちで特定の時間帯に電力を多く使う家庭や商店であれば、標準的な従量電灯Bよりも料金が安くなる可能性は大きい。

図3 家庭向けの時間帯別・日別メニュー。出典:東京電力

 時間帯ではなく曜日で単価を分けた「土日お得プラン」では、家庭のライフスタイルや商店の営業日によって選ぶ価値が出てくる。土曜日と日曜日の単価が従量電灯Bの1段目の料金とほとんど変わらず、週末に大量の電力を使う場合には有利だ。しかも平日の単価でも、従量電灯Bと比べて1割も高くない。

ピークを前年同月よりも下げると割引に

 いろいろある契約メニューの中で、電気料金を下げるのが難しいと言われるのが、小規模のビルに多い「高圧小口」(500kW未満)である。高圧小口では夏や冬に大量の電力を使ってしまうと、その最大値によって1年後まで基本料金が上がってしまうからだ。これは高圧小口に特有の算定方法で、各電力会社が共通で適用している。

 その中で例外が東京電力の「デマンドシェービングプラン」である。毎年7月〜9月と12月〜2月の6カ月間を対象に、最大電力が前年同月の実績から下がった分に対して割引を適用する制度だ(図4)。削減した電力1kWあたり420円の割引になる。

図4 「デマンドシェービングプラン」の割引イメージ。出典:東京電力

 東京電力の試算によると、契約電力が100kWの利用者が前年よりも5kWの電力を夏と冬の6カ月間にわたって削減した場合、年間の割引額は約1万3000円になる。加えて契約電力が下がることによって基本料金も安くなるため、その分を合わせると年間の削減額は約6万3000円に拡大する。

 このデマンドシェービングプランは改めて申し込む必要はなく、高圧小口の利用者すべてに適用される。となれば、対象になる企業や自治体は夏と冬のピークカットをぜひとも実施したい。

連載(8):「東北電力のメニュー」

連載(10):「中部電力のメニュー」

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