発電所を「仮想化」、エネルギーコストを5%削減できるエネルギー管理

自家発電機を備えた工場は発電所でもある。複数の拠点に複数の発電機を設置している場合、どのように電力を融通すればよいのか。このような課題に対応するソリューションが登場した。

» 2013年07月16日 15時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 仮想発電所(VPP)とは、大規模で1点集中型の発電所を作るのではなく、複数の分散型電源を統合制御することで、あたかも1つの発電所であるかのように見せる仕組みだ。

 狙いは投資コストの削減だ。遠隔地に大規模発電所を建設すると、需要地までの送電線の容量を拡大する工事などが必要だ。それならば、需要地の周辺にある分散型電源を利用した方がよいという発想である。

 伊藤忠テクノソリューションズは、鉄鋼や紙・パルプ、化学系工場など自家発電装置を運用している企業や、特定規模電気事業者(PPS)向けにVPPを可能とするソリューションの提供を2013年7月から開始した。エネルギー関連の計測機の設置から、情報ネットワークの設計と構築、データを分析ツールに投入するための周辺ITシステムの構築、保守サポートを含んだソリューションだ。

図1 cpmPlus Energy Managerの画面。出典:伊藤忠テクノソリューションズ

 同社は分析ツールとして、スイスABBの「cpmPlus Energy Manager」を使う(図1)。同ツールは電力利用の可視化やエネルギー効率向上やエネルギーコスト削減、売電収益向上のために利用できるパッケージソフトウェア。欧州を中心に約100の事例があり、cpmPlus Energy Managerを適用することでエネルギーコストの最適化ができ、最大5%コストを削減できるという。

 具体的には、複数の製造工程にある設備機械に接続した計測機で、エネルギーの利用状況と、事前に設定した目標値とをリアルタイムで比較、監視する可視化が可能になる。図1に示したグラフでは必要な電力量と発電量をリアルタイムで計測し、予測値を算出している。これにより電力の購入と売電を計画的に実行できる。

 工場の生産・稼働計画と電力需要を結び付けることもできる。生産計画を入力すると、需要電力量を予測でき、設備機械の最適な稼働・運用状態の計算結果を出力。これによって、工場などのエネルギー効率向上を実現できる。

 自家発電からの売電収益を高めることもできるという。需要と供給の調整精度向上と最適化により、余剰電力量の予測値の確度が高まるからだ。

 冒頭で紹介した仮想発電所に直結する機能もある。工場などの複数の拠点を統合管理できるため、エネルギーの一元購買がたやすくなる。発電能力と需要予測の合算値を算出することで拠点間での電力の融通や合算ができるからだ。これは売電収益の向上にも役立つ。

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