利用が進んでいなかった低温蒸気で動作する小型「バイナリー発電機」、出力125kW蓄電・発電機器

神戸製鋼は110〜130度の水蒸気を利用するバイナリー発電機を製品化した。2m角程度に小型化したことが特徴。設置スペースに余裕がない工場などにも取り付けやすい。高温蒸気を利用する発電機の後段に取り付けて使うこともできる。

» 2013年07月29日 13時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 70〜150度の温水や水蒸気などが持つ熱を利用して発電するバイナリー発電。どのような温度の水が利用できるのか、温水などの量はどの程度なのか、このような条件によって、適切な発電機の種類が異なってくる。

 バイナリー発電機は、温水や水蒸気が直接発電機を動かすのではなく、温水などが持つ熱を装置内部に密閉された低沸点の「作動媒体」が吸収し、気化した媒体が発電機を動かす仕組みだ。2種類の流体を使うため「binary(2つの)」と呼ばれる。

 神戸製鋼は110〜130度という最も低温の水蒸気を利用するバイナリー発電機「MB-125S」を製品化した(図1)。130度の蒸気を1時間当たり1.8トン取り入れ、20度の冷却水を1時間当たり120トン使った場合、水蒸気の凝縮熱も利用でき、最大出力125kW(以下、発電端)を得る。作動媒体としては一般的なHFC-245faを用いた。

図1 110〜130度の水蒸気を用いる「MB-125S」。出典:神戸製鋼

 特徴は小型化を進めたことだ。「(他社製品が4m角以上であることに対し)2m角程度の寸法に小型化した。低温水蒸気を利用するバイナリー発電機をパッケージに収めた小型製品としては国内初だ」(神戸製鋼)。パッケージに収めるとは、設置場所に装置を据え付け、蒸気管と冷却水管を接続すれば電力を取り出すことができるという意味。現場での発電機組み立ては不要だ。

 水蒸気を使う大型のバイナリー発電機は遠心式タービンを利用する。遠心式タービンは汎用技術だが小型化には向かない。同社はスクリューとタービンを組み合わせたことで小型化を実現した。「この組み合わせを用いた部分の量産技術を確立しているため、小型化しても製造コストが高まりにくい」(同社)。システムの価格は3800万円である。

 神戸製鋼は高温蒸気から、温水までの発電装置をラインアップ化している。蒸気発電機は蒸気温度に応じて大型から小型まで3種類ある。いずれもバイナリー発電ではなく、蒸気の差圧を利用して発電する。130〜160度の蒸気を使い、既存の減圧弁の位置に取り付けて用いる「スチームスターMSEG」が最も小型小出力(132kWまたは160kW)の製品だ。

 「スチームスターMSEGは水蒸気を排出するため、通常は復水器と組み合わせて用いる。復水器を用いず、直接今回のバイナリー発電機に接続すると、2段階の発電が可能だ」(神戸製鋼)。同じ流体からより多くの電力を引き出すことができるこのような使い方をボトミングサイクルと呼ぶ。

 なお、同社は70〜95度の温水を利用する最大出力72kWのバイナリー発電機「MB-70H」(2800万円)を2011年に発売している。今後、今回のバイナリー発電機と合わせて、2015年度に年間30億円の売り上げを目指すという。

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