マンションでも「全戸」太陽光、高度なHEMSと組み合わせるスマートハウス(1/2 ページ)

マンションを分譲するグランディアは、HEMSを展開するファミリーネット・ジャパンと共同で太陽光発電システムが付いたマンションにさまざまなサービスを組み込んだ。太陽光や家庭の消費電力をより柔軟に取り回すことができる。

» 2013年09月11日 07時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 福岡県でマンションを分譲するグランディアは、2013年9月、九州初をうたうスマートマンション「グランディアソラーレ久留米中央」(福岡県久留米市)の分譲を開始したと発表した(図1)。特徴は2つ。マンションにもかかわらず全戸が個別の太陽光発電システムと接続されていることが1つ、もう1つはHEMS(家庭用エネルギー管理システム)を標準で備えていることだ。

図1 グランディアソラーレ久留米中央の外観イメージ。2014年10月完成予定。地上13階建、総戸数36戸。出典:ファミリーネット・ジャパン

 同社は太陽光発電システムの導入に熱心で、2007年に全戸が太陽光発電システムを備えたマンションを発売しており、国内初をうたった。今回は、MEMS(マンション用エネルギー管理システム)アグリゲータであるファミリーネット・ジャパンのHEMS「me-eco(ミエコ)」と組み合わせて全戸に取り付けたことが新しい。

太陽光を家庭ごとに売電可能

 グランディアソラーレ久留米中央では、屋上部分に東芝の太陽電池モジュール(出力250W)を集中設置している(図2)。「合計180枚を設置し、1戸当たりの太陽電池モジュールの割り当ては5枚だ」(グランディア)。5枚分の電力が各戸に供給されて、個別連系で動作する。つまり、5枚が発電した電力はまず各戸が消費する電力として使われ、余剰電力が自動的に売電される仕組みだ。春や秋など空調を利用しない日中であれば、電力の自給自足も現実的であり、売電を重視することもできる。いずれにせよ、電気料金を抑える役に立つ。

図2 マンション屋上と太陽電池モジュールの配置。出典:ファミリーネット・ジャパン

 HEMSを導入した理由の1つは太陽光をより上手に使うためだ。HEMSがなくても電力の余剰部分は勝手に売電されていく。しかしHEMSがあれば、エアコンや照明などのオンオフに従って売電量が変化する様子をリアルタイムに表示できる。節電したいと感じたときに実際の効果がよりはっきり意識できる。

 太陽光以外の見える化も進めた(図3)。標準で導入されるエアコンとヒートポンプ給湯器「エコキュート」、電磁調理器の1種であるIHクッキングヒーターはいずれも消費電力量が多いため、HEMSでそれぞれ分かりやすく表示される。部屋ごとの消費電力量の他、ガスと水道の利用状況も分かる。

 あらかじめ設定した月間目標値(電力料金や使用電力量)を超えると、メールで通知が送られてくるアラート機能や、他のユーザーと比較してどの程度の省エネできているのかを順位付けして表示するランキング機能もある。

図3 マンションの全体構成とHEMSの機能。出典:ファミリーネット・ジャパン

 見える化の用途はもう1つある。マンション共有部の消費電力の見える化だ。共有部の照明と空調を対象とする。「(ピークシフトなど)需要側の電力の制御が必要なとき、より導入に抵抗がない共有部が優先されるはずだ。このため、共有部の見える化を組み込んでいる」(ファミリーネット・ジャパン)*1)

*1) 今回のマンションは経済産業省のスマートマンション導入加速化推進事業に採択されており、同推進事業費の補助金の対象でもある。補助金の条件には共有部の見える化が指定されている。

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