「京都議定書」の誕生の地、伸び悩む再生可能エネルギーを21倍にエネルギー列島2013年版(26)京都

温暖化防止のシンボル都市として世界中に名を知られる京都だが、再生可能エネルギーの導入では後れをとっている。2030年までに導入量を21倍に拡大する目標を掲げて、太陽光と風力に期待をかける。メガソーラーが増える一方で、府内唯一の風力発電所は落下事故で運転を停止したままだ。

» 2013年09月24日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 世界の主要国の代表が京都に集まって温室効果ガスの削減目標を設定したのは、16年前の1997年のことである。その内容が「京都議定書」として採択されたことは、あまりにも有名だ。温暖化防止のシンボル都市として環境対策に取り組んできた京都府が新たに「京都エコ・エネルギー戦略」を2013年5月に策定した。

 従来の火力と原子力が中心の関西電力に依存する状況を改善するために、再生可能エネルギーを21倍に増やす計画である(図1)。関西電力が京都府内で運転する発電所の規模が今後も変わらないと仮定して、2030年の時点で再生可能エネルギーによる発電量がほぼ肩を並べることになる。

図1 京都府の電源構成と拡大目標(関西電力の発電規模は2010年のままで仮定)。出典:京都府文化環境部

 ただし目標のハードルは極めて高い。京都府が実施した再生可能エネルギーの導入可能性調査によると、太陽光・風力(陸上)・小水力の3つを合わせて230万kWにとどまる(図2)。2030年の導入目標は232万kWであり、可能性のあるエネルギーをすべて電力に転換できて初めて実現するレベルだ。

図2 再生可能エネルギーの導入可能性。出典:京都府文化環境部

 それでも2013年に入ってからは、メガソーラーの建設プロジェクトが相次いで動き出した。奈良県に近い南部の城陽市で「京都グリーンソーラーファーム」が8月に運転を開始した(図3)。4.5MW(メガワット)の発電能力があり、京都府内では最大の規模になる。年間に450万kWhの電力を供給できる見込みで、一般家庭の約1200世帯分の電力使用量に相当する。

図3 「京都グリーンソーラーファーム」の全景。出典:ファーマフーズ

 さらに南に向かって大阪府と奈良県にまたがる「けいはんな学研都市」でも、新しいメガソーラーの稼働が目前に迫っている。関西電力グループが建設を進めているもので、発電能力は2MWになる(図4)。年間の発電量は標準を2割ほど上回る250万kWhを想定していて、700世帯分の電力を供給できる能力がある。

図4 「けいはんな学研都市」に建設するメガソーラーの完成イメージ。出典:関西電力

 このほかにも京都府で最も北に位置する京丹後市で、4MWのメガソーラーを建設する計画がある。「丹後ちりめん」で有名な地元の織物工業組合が所有する土地を活用して、2014年3月末に運転を開始する予定だ。

 京丹後市は日本海に面した丹後半島の大部分を占めていて、隣接する伊根町との境には京都府で唯一の「太鼓山(たいこやま)風力発電所」がある(図5)。この風力発電所は京都議定書が採択されたことを受けて4年後の2001年に稼働した。

図5 「太鼓山風力発電所」の全景。出典:京都府文化環境部

 ところが2013年3月に、6基ある風車のうち1基が落下する事故が発生してしまった。事故原因の究明に時間がかかり、半年後の9月になっても6基すべての運転を停止したままの状態が続いている。風力発電は京都府の再生可能エネルギーの中で太陽光に次ぐ可能性を秘めているだけに、早期の復旧が待たれるところだ。

 最近になって太陽光発電の導入量は増えてきたものの、それ以外の再生可能エネルギーは伸び悩んでいる(図6)。全体の導入量は全国の都道府県の中でも42位にとどまっていて、世界のシンボル都市としては不本意な状況と言える。

図6 京都府の再生可能エネルギー供給量。出典:千葉大学倉阪研究室、環境エネルギー政策研究所

 これまでのところ導入量が最も多いのは小水力発電で、新しいプロジェクトが広がりつつある。そのひとつが山間部の「芦生(あしゅう)地区」の水路を生かした発電設備だ。地区内を流れる水路から水を引き込み、落差6メートルの水流で1.3kWの電力供給を可能にした(図7)。

 芦生地区は冬になると雪が積もり、倒木によって停電の可能性が高まる。地域の避難所になっている「芦生山の家」で使う電力を小水力発電設備から供給できるようにした。自然を大切にする京都らしい取り組みである。

図7 「芦生地区マイクロ水力発電所」の発電機室(左)と水路(右)。出典:京都府広域振興局

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