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» 2013年10月08日 09時00分 UPDATE

エネルギー列島2013年版(28)兵庫:ため池や田んぼでも太陽光発電、2020年までに100万kW創出

通常は太陽光発電に使わないような場所にまで、兵庫県がメガソーラーを広げ始めた。農業用のため池や田んぼ、ダムの斜面にも太陽光パネルを設置する。2020年までに再生可能エネルギーで100万kWの電力を生み出して、県内の自給率を大幅に高める狙いがある。

[石田雅也,スマートジャパン]

 関西では大阪府に次いで人口の多い兵庫県の課題は、電力需要の大きさに比べて再生可能エネルギーの導入量が少ないことである。自給率は1%強しかなく、全国平均の約3%を下回る。この問題を改善するために、2013年に入って新たに「ひょうご100万キロワット創出プラン」を打ち出した。

 2012年度で46万kWだった再生可能エネルギーの導入量を、2020年度までに3倍以上の155万kWへ拡大するのが目標だ(図1)。100万kWを超える増加分の大半を占めるのは非住宅用の太陽光発電である。

target_hyogo.jpg 図1 兵庫県の再生可能エネルギー導入目標。出典:兵庫県農政環境部

 兵庫県は関西の中で面積が最も広く、大阪府の4倍以上ある。メガソーラーを設置できる場所は数多く残っている。県の企業庁が率先して直営のメガソーラーを拡大中で、2014年度までに10カ所に建設する計画だ(図2)。合計すると24MW(メガワット)になり、これだけで100万kW(1000MW)のうちの2%以上を満たすことができる。

megasolar_project.jpg 図2 兵庫県が直営で事業化するメガソーラープロジェクト。出典:兵庫県企業庁

 企業庁のプロジェクトで注目すべきは、一般には水力発電に利用するダムの設備でも太陽光発電を実施する点にある。6カ所ある県営ダムのうち3カ所で太陽光パネルを設置する計画を進めている。

 そのひとつである「権現(ごんげん)ダム」では1万9000平方メートルある側面に太陽光パネルを敷き詰める(図3)。太陽光発電に適した南向きの広い斜面を生かして、発電能力は1.7MW、年間の発電量は184万kWhを見込んでいる。一般家庭で約500世帯分の電力を供給することができる。ほかの2つのダムとともに、2014年度中に運転を開始する予定だ。

gongendam_megasolar.jpg 図3 「権現ダム」の斜面に設置するメガソーラーの完成イメージ。出典:兵庫県企業庁

 これまで太陽光発電の設置場所として注目されなかったところでも、まだ大きな可能性が残っている。兵庫県が新たな対象として実験を開始したのが、ため池である。埼玉県の工業団地の中で池に浮くメガソーラーを稼働させた実績があるが、兵庫県の場合は農業用のため池を活用する。

 実は兵庫県内には全国で最も多い4万以上の農業用ため池が分布している。その水面に太陽光パネルを設置できれば、得られる再生可能エネルギーの量は膨大になる。瀬戸内海から20キロメートルほど内陸に入った小野市で、2013年7月から実証プロジェクトが始まっている。

 満水時には2万4000平方メートルの面積になる「浄谷新池(きよたにしんいけ)」を使って、パネル80枚で20kWの発電設備を2種類の方式で設置した(図4)。1つはパネルの設置角度を10度にして、陸地からワイヤーで係留する。もう1つは20度の角度に傾斜をつけたうえで、池底に沈めた重りで係留する方法だ(図4下)。

tameike_megasolar1.jpg
tameike_megasolar2.jpg 図4 「浄谷新池」に設置したフロート式の太陽光発電設備。出典:兵庫県北播磨県民局

 それぞれの方法で得られる発電量に加えて、風や波の影響を比較する。発電した電力は売電して、収益性も評価する。実証結果をもとに、農業用のため池を太陽光発電の場に広げていくことができれば、100万キロワットの目標達成は早まる可能性がある。

 同様に農地の有効活用法を模索している姫路市では、田んぼに太陽光パネルを設置した実証研究を2013年度からの3か年計画で開始した。農業を営みながら売電収入も得られるようにして収益性を高め、遊休農地を増やさないようにすることが狙いだ。

 農地に適した太陽光発電の設備として、1本の支柱の上に4.4kW分のパネルを載せる方法を採用した。この方法ならば、パネルの下にある田んぼにも十分な太陽光が当たる(図5)。しかもパネルは太陽光の向きに合わせて自動的に動くようになっていて、メーカーの実験では通常の場合と比べてパネルあたりの発電量が1.5倍に増える。

himeji_solar.jpg 図5 姫路市で実証研究中の農地活用型太陽光発電設備。出典:農林水産省近畿農政局

 農作物に与える影響を少なく抑えながら、最大限の売電収入を得るための試みである。実証研究では4基の発電設備を設置して、年間の発電量や農作物の収穫量、農作業への影響などを調査することにしている。

 広大な空き地には通常の方法でメガソーラーを建設しながら、ため池や田んぼにも太陽光発電を展開することで、再生可能エネルギーの拡大と合わせて地域の活性化を図る。同様の課題を抱える全国の農業県に参考になる取り組みと言える。

ranking2013_hyogo.jpg 図6 兵庫県の再生可能エネルギー供給量。出典:千葉大学倉阪研究室、環境エネルギー政策研究所

 再生可能エネルギーの中では太陽光発電の増加が著しいが(図6)、風力やバイオマスのプロジェクトも広がりを見せている。バイオマス発電では神戸市が下水処理場で推進中の「こうべWエコ発電プロジェクト」がユニークで、太陽光発電とバイオマス発電の両方を一挙に実現する。

 神戸市内の「垂水(たるみ)処理場」の設備と資源を活用して、2013年12月から発電を開始する計画だ。太陽光発電は水処理施設の上部に8000枚の太陽光パネルを設置して2MWの発電を可能にする(図7)。さらに下水の汚泥からガスを生成して、1台で25kWの発電装置14台をガスで運転する。

kobe_w_eco.jpg 図7 「垂水処理場」に導入する発電設備。出典:神戸市建設局

 年間の発電量は両方を合わせて450万kWhになり、一般家庭で1300世帯分の電力を供給することができる。神戸市内に全部で6カ所ある下水処理場で同様のWエコ発電を実施すれば、約5倍の発電量に増える見込みだ。

 一方で風力発電設備が数多く集まる淡路島では、新たに「淡路風力発電所」が2012年12月から運転を開始した。1基あたり2MWの大型風車6基で合計12MWの発電能力がある(図8)。以前から島内で稼働中の風力発電所と合わせて55MWの規模になり、関西では和歌山県の沿岸地域と並ぶ大きな拠点になっている。

awaji_furyoku.jpg 図8 「淡路風力発電所」の全景。出典:関電エネルギー開発

 淡路風力発電所は瀬戸内海に面した島の北端の丘陵に風車を建設して、安定した風況で年間に2000万kWhの発電量を見込む。5500世帯分の電力使用量に相当する規模で、太陽光やバイオマスと比べた風力発電のパワーを見せつけるかのようだ。

 淡路島の近海では洋上風力や潮流発電のプロジェクトも検討が始まっていて、再生可能エネルギーを拡大できる余地が大きく残っている。太陽光にバイオマスと風力を加えて、100万kWの電力を創り出すことは決して難しくない。

*電子ブックレット「エネルギー列島2013年版 −関西編−」をダウンロード

2015年版(28)兵庫:「太陽光発電の勢いが止まらない、ダムや池もメガソーラーになる」

2014年版(28)兵庫:「太陽光や風力から潮流発電まで、エネルギーが持続する環境未来島へ」

2012年版(28)兵庫:「電力自給率100%を目指す淡路島、風力から太陽光・バイオマスまで」

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