風力発電所が集中する東北に大型蓄電池を配備、最大出力40MWで2015年に稼働電力供給サービス

日本最大の風力発電の拠点になる東北地方で、大型蓄電池を利用して電力の安定化を図る実証事業が始まる。東北電力が宮城県で運営する「西仙台変電所」に最大出力40MWの蓄電池システムを導入して、2015年2月から運転を開始する計画だ。変電所に設置する蓄電池では世界最大級になる。

» 2013年11月27日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 このプロジェクトは経済産業省が296億円の予算をかけて5カ年計画で取り組む「大型蓄電システム緊急実証事業」のひとつである。東北電力の「西仙台変電所」(仙台市太白区)に、東芝製のリチウムイオン電池を大量に導入して電力供給の安定化を図る試みだ(図1)。

図1 「西仙台変電所」に設置する大型蓄電池システムのイメージ。出典:東北電力

 蓄電池には電気自動車にも搭載されている東芝の「SCiB」を採用する。蓄電池を構成するリチウムイオン電池の数は合計で76万個にのぼり、全体の蓄電容量は2万kWhに達する。同じSCiBを搭載している三菱自動車の電気自動車「i-MiEV」の16kWhと比べると、1250台分に相当する規模になる。出力は日本で最大級のメガソーラーや風力発電所に匹敵する40MW(メガワット)まで対応することができる。

 変電所に設置する新しい設備は蓄電池のほかに、電力変換用のパワーコンディショナー(PCS)や変圧器を含み、総工費は約100億円を見込んでいる。すでに11月25日から工事が始まっていて、2015年2月に完成する予定だ。その後2018年3月まで、約3年間かけて実証試験を進める。

 試験の内容は風力発電所やメガソーラーから送られてくる電力を監視しながら、天候によって変動する電力の影響を蓄電池システムと火力発電機で調整する(図2)。送電する電力量が急激に変化した場合に、東北電力の「中央給電指令所」が蓄電池システムと火力発電機に指令を送って、蓄電・放電あるいは発電によって送配電ネットワークを流れる電力量を安定させる。

図2 大型蓄電池を利用した周波数変動対策。出典:東北電力

 再生可能エネルギーの中では太陽光と風力が天候による影響を大きく受けて、出力の変動によって送配電ネットワークを流れる電力が不安定になり、利用者の電気設備にトラブルを発生させる原因になりかねない。この問題を蓄電池で解消することによって、さらに多くのメガソーラーや風力発電所を建設できるようになる。

 特に東北地方と北海道は大規模なメガソーラーや風力発電所の建設計画が相次いでいるため、早期の問題解決が求められている。経済産業省の実証事業は西仙台変電所のほかに、北海道電力の「南早来(みなみはやきた)変電所」(北海道勇払郡安平町)でも実施することが決まっている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.