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» 2014年02月18日 09時00分 UPDATE

エネルギー列島2013年版(46)鹿児島:南国の離島に豊富な自然エネルギー、火力依存からの脱却を図る

さまざまな再生可能エネルギーの導入が進む九州の中でも、鹿児島県の取り組みには目を引くものが多い。特に活発な動きを見せるのが薩摩川内市だ。太陽光や風力発電に電気自動車を加えて、新しいエネルギー供給体制の構築を急ぐ。背景には火力や原子力に依存している危機感がある。

[石田雅也,スマートジャパン]

 鹿児島県の西部にある薩摩川内市(さつませんだいし)は10年前の2004年に誕生した。9つの自治体が合併した新しい市で、東シナ海に浮かぶ3つの島を含めて、海・山・川の自然に恵まれている。とはいえ基幹のエネルギー源は市内にある九州電力の火力発電所と原子力発電所が担ってきた。

 人口10万人の地方都市が新たに「エネルギーのまち」を目指して、再生可能エネルギーを活用した環境配慮型都市の構築計画に取り組んでいる。2013年度から「次世代エネルギービジョン」を掲げて、沿岸部や島には太陽光と風力発電、山間部や農村では小水力とバイオマス発電を拡大中だ(図1)。

satsumasendai_map.jpg 図1 薩摩川内市の地域別に見たエネルギー導入状況。出典:薩摩川内市役所

 太陽光発電では2013年9月に運転を開始した「薩摩川内太陽光第一・第二発電所」の規模が大きい。川内港に面した平坦な土地に1万5000枚の太陽光パネルを設置して、3.5MW(メガワット)の発電能力を発揮する(図2)。LP(液化石油)ガス事業者のENEOSグローブが運営するメガソーラーで、隣接してガス基地と九州電力の川内発電所(石油火力)が並ぶ。

eneos_megasolar.jpg 図2 「薩摩川内太陽光第一・第二発電所」の全景。出典:ENEOSグローブ

 そのメガソーラーから南に5キロメートルほどの丘陵では、地元の企業を中心にした風力発電所の建設計画も進んでいる(図3)。1基で2.3MWの発電能力がある大型風車12基の合計で27.6MWを発揮する。すでに12基のうち一部は完成済みで、2014年10月に全基の運転を開始する予定だ。年間に供給できる電力は一般家庭で1万5000世帯分を想定している。

yanagiyama_wind.jpg 図3 「柳山ウインドファーム」の風車配置イメージ。出典:柳山ウインドファーム

 薩摩川内市では20年以上も前に風力発電の導入が始まった。東シナ海の沖合30キロメートルの距離にある甑島(こしきしま)では、日本で最初の商用風力発電所が今なお稼働中だ。九州電力が1990年に250kWの発電設備を運転開始した。

 ただし島内の主力の電力源は現在でも石油を使った火力発電所である。離島ではディーゼルエンジンによる小規模な設備が一般的で、石油からガスを発生させて発電する方法による。「内燃力発電」と呼び、起動と停止が早いために、電力の需要が少ない離島に向いている。

 こうした石油火力に依存するエネルギー供給体制を見直す気運が甑島で急速に高まっている。美しい島にふさわしい自然エネルギーを活用した「エコアイランド」を目指す。島内にメガソーラーを新設するほか、市民や観光客の交通手段として電気自動車を普及させて、石油依存の状態を改善していく(図4)。

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kosikishima.jpg 図4 「甑島風力発電所」(上)と甑島のエコアイランド構想(下)。出典:九州電力、薩摩川内市役所

 鹿児島県全体では約600の島があり、長崎県に次いで全国で2番目に多い。発電コストの高い石油火力に頼らざるを得ない状況は離島に共通する問題である。九州電力が東日本大震災の前から取り組んでいる「離島マイクログリッドシステム」は1つの有効な対策になる。

 従来の内燃力発電に太陽光や風力を組み合わせて、島内の電力需要を見極めながら蓄電池で供給量を制御する仕組みだ(図5)。南方に点在する6つの小さな離島で2010年度から実証試験を続けている。さらに2013年度からは種子島と奄美大島にも大型の蓄電池を設置して試験の規模を拡大する。

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island_microgrid.jpg 図5 「離島マイクログリッドシステム」の構成と試験設備(場所は黒島)。出典:九州電力

 これまでのところ鹿児島県の再生可能エネルギーは風力と地熱発電が多く、いずれも全国で第3位の導入量を誇る(図6)。全体の導入量でも大分県、長野県、北海道に次いで第4位である。今後は特に太陽光発電が急増していく。

ranking2013_kagoshima.jpg 図6 鹿児島県の再生可能エネルギー供給量。出典:千葉大学倉阪研究室、環境エネルギー政策研究所

 何といっても2013年11月に運転を開始した「鹿児島七ツ島メガソーラー発電所」の存在が大きい。鹿児島湾に突き出た127万平方メートルの広大な埋立地に、29万枚の太陽光パネルを敷き詰めた姿は壮観だ(図7)。

 発電能力は太陽光発電で国内最大の70MWを発揮する。年間の発電量は7900万kWhに達して、一般家庭で2万2000世帯分の使用量に相当する規模になる。鹿児島県の総世帯数は74万弱であり、このメガソーラーだけで全体の3%をカバーすることができる。火力や原子力に依存する状況は着実に変わりつつある。

nanatsushima.jpg 図7 「鹿児島七ツ島メガソーラー発電所」の全景。出典:京セラ

*電子ブックレット「エネルギー列島2013年版 −九州・沖縄編 Part2−」をダウンロード

2015年版(46)鹿児島:「豚の排せつ物からバイオ燃料を、火山の島では地熱発電と水素製造も」

2014年版(46)鹿児島:「水力と地熱を中核の電力源に、スマートグリッドで再エネを増やす」

2012年版(46)鹿児島:「南北600kmに広がる天然資源、地熱と風力の次に太陽光」

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