−253度の液体水素を6000kmも運搬、水素社会を支える専用船が実現自然エネルギー(2/2 ページ)

» 2014年02月25日 13時30分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
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水素併用ガスタービンも開発

 同社は水素の燃焼が可能なガスタービンも開発。2014年2月には営業活動を開始した。CO2フリー水素チェーンにある、水素利用の1つの解だ。2015年度に市場投入する予定である。

 開発した「L30A」の出力は30MW。純水素を燃焼させるのではなく、天然ガスを主燃料として用い、体積当たり0〜60%の範囲で水素を混焼できるというもの(図5)。

図5 ガスタービンの構造 出典:川崎重工業

 先ほどの液体水素運搬船に直接利用するのではなく、石油精製工場や石油化学工場から反応の結果生まれる副生水素を有効利用しようという発想の製品だ。

 ガスタービンで課題となっているのは窒素酸化物(NOx)をいかに減らすかということ。厳しい環境規制があり、将来も規制値が引き下げられていく。

 窒素酸化物はガスの燃焼温度が高くなるほど生成量が増える。そこで、水や蒸気を噴射して燃焼温度を抑制する手法が開発された。川崎重工業の手法は、水や蒸気噴射を使わない。燃料を空気と混合させて希薄な状態で燃焼させる予混合燃焼方式を採ることで燃焼温度を低く抑えた。これをドライローエミッション(DLE)燃焼器と呼ぶ。この手法は安定燃焼を保つことが難しいとされるが、これもクリアしている。

 ここまでは通常のガスタービンの工夫だ。水素を混合するとどうなるのだろうか。水素は燃焼速度が高いため、バーナー付近で燃えてしまい、逆火などが起こり不安定になるという。そこで、天然ガスが燃えている後方の追焚きバーナーを改良し、水素を注入できるようにした(図6)。

 この手法により安定して燃焼が継続し、窒素酸化物の濃度を25ppmに抑えることができた*3)。これは天然ガスだけを用いた場合と同等の水準だという。

*3) 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の高温高圧燃焼試験設備を用いた検証。

図6 開発したDLE燃焼器の仕組み 出典:川崎重工業

【訂正】 公開当初の記事の第2段落と注1、第14段落に誤りがありました。第2段落冒頭の「今回開発した設備……」は「今回基本承認を得た設備……」の誤りでした。注1の「2014年2月」は「2013年12月」の誤りであり、「設備の製造を始めるとともに、受注に備えて船体の開発設計を開始する予定だ。『受注時期は……」は、「設備の開発設計を始めるとともに、製品化に備えてタンクと船体の開発設計も開始する予定だ。『実用化時期は……」の誤りでした。第14段落の「設備に水素を注入する際、格納設備内に置いた揚荷ポンプだけでなく、外部から水素ガスを……」は、「設備から水素を取り出す際、格納設備内に置いた揚荷ポンプだけでなく、水素ガスを……」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。上記記事はすでに訂正済みです。(2014年2月25日追記)

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