第4次エネルギー基本計画、2020年までを「集中改革実施期間」に法制度・規制

2003年の策定から第4次になる「エネルギー基本計画」が4月11日の閣議で決定した。国民の反発をよそに原子力発電を推進する姿勢を示す一方、2020年までを「集中改革実施期間」と位置づけた。発送電分離を含む電力市場の開放やエネルギー供給構造の変化を今後の施策に反映させる。

» 2014年04月14日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 経済産業省が2月25日に原案を公表してから1カ月半を経過して、ようやく第4次の「エネルギー基本計画」が確定した(図1)。原案から修正した内容のうち、主な変更点は3つある。

図1 「エネルギー基本計画」の変遷

 第1に原子力発電の安全性に対する事業者の責任を厳しく求めていた以下の部分を削除した。

 「原子力安全は、本来、事業者自らも安全向上対策を講じることによって確保されていくものである。事業者自身がこの重要な責務を担い、安全を競い合い、原子力安全文化を醸成する。国民のみならず世界中が厳しい目で注視していることを決して忘れてはならない。」

 この1カ月半のあいだに経済産業省が電力業界からの圧力に押し切られたのか。今後の政策に大きく影響する内容ではないものの、電力会社に対する政府の甘さを露呈した格好だ。見方によっては、もはや電力会社には多くを期待しない、という意志とも受け取れる。

 第2の修正点は再生可能エネルギーの導入目標である。閣議決定までに長い時間を要したのは、この目標設定に関して与党の自民党と公明党のあいだで調整が難航したからである。結局のところ、次のようなあいまいで回りくどい表現を盛り込むにとどめた。

 「これまでのエネルギー基本計画を踏まえて示した水準を更に上回る水準の導入を目指し、エネルギーミックスの検討に当たっては、これを踏まえることとする。」

 過去に示した水準として、2020年の発電電力量のうち再生可能エネルギー等の割合は13.5%(1414億kWh)、2030年の割合は約2割(2140億kWh)、という目標値を注釈で記載した。すでに現時点でも再生可能エネルギーの割合は10%を超えているため、本来あるべき意欲的な目標設定とは言いがたい水準だ。

もう電力システム改革は後戻りできない

 そうした中で政府が加えた第3の修正点として注目したいのは、2020年までを「集中改革実施期間」に位置づけたことである。

 「電力システム改革を始めとした国内の制度改革が進展するとともに、北米からのLNG調達など国際的なエネルギー供給構造の変化が我が国に具体的に及んでくる時期(2018年〜2020年を目途)までを、安定的なエネルギー需給構造を確立するための集中改革実施期間と位置付け、当該期間におけるエネルギー政策の方向を定める。」

 すでに2016年には家庭を含めて電力の小売を全面自由化する準備が進み、さらに2018年〜2020年には発送電分離による市場開放が予定されている。エネルギー基本計画で改めて方向性を強調したことで、もはや後戻りは許されなくなった。

 並行してLNG(液化天然ガス)の調達量が2018年から大幅に増える見通しで、火力発電のコストダウンが期待できる。電力の代替エネルギーとして企業や家庭でもガスの利用が拡大していき、ガスの小売全面自由化も2020年までに実施する可能性が大きい。まさに2020年までが集中改革の実施期間になる。

 第5次のエネルギー基本計画は3年後の2017年に策定する必要がある。その中には集中改革による具体的な成果と新たな施策が盛り込まれるのと合わせて、2020年と2030年に向けた再生可能エネルギーの目標値が設定されるはずだ。目指すべきは2020年に20%、2030年には30%以上まで、再生可能エネルギーの比率を高める施策である。

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