11万頭の牛がいる北海道の町に、排せつ物を利用したバイオガス発電スマートシティ

北海道の東部にある酪農の盛んな町で大規模なバイオガス発電事業が始まる。地元で飼育する牛の排せつ物を発酵させて、バイオガスを燃料にして発電する。2015年7月に運転を開始する予定で、一般家庭2700世帯分の電力を供給することができる。年間の売電収入は3億7000万円になる。

» 2014年05月21日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]
図1 「別海町」の位置。出典:別海町役場

 バイオガスを使って発電事業に取り組むのは、オホーツク海に面した東部の別海町(べつかいちょう)である(図1)。町と三井造船が特別目的会社の「別海バイオマス発電」を設立して、20年間にわたる発電事業を共同で運営する計画だ。

 別海町は農林水産省などが推進する「バイオマス産業都市構想」の対象地域に選ばれて、バイオマスガス発電を中核事業に位置づけている(図2)。発電に利用するバイオガスは、地域の酪農家から集めた牛の排せつ物を高温の状態で発酵させて生成する。

図2 「別海町バイオマス産業都市構想」の全体イメージ。出典:農林水産省

 導入するバイオガス発電設備の能力は1.8MW(メガワット)で、年間の発電量は960万kWhを想定している。一般家庭で約2700世帯分の電力になり、別海町の総世帯数(6360世帯)の4割強に相当する。発電した電力は固定価格買取制度を通じて全量を売電して、年間の収入は3億7000万円程度になる見込みだ。運転開始は2015年7月1日を予定している。

図3 牛の放牧の様子。出典:別海町役場

 別海町は人口1万5000人に対して牛が11万頭以上もいる日本有数の酪農の町である(図3)。バイオガスの原料になる牛の排せつ物は、発電設備から半径10キロメートル以内で集めることができる。1日あたり280トンの排せつ物のほか、食品廃棄物や水産廃棄物を5トン利用する。

 バイオガスの生成時には、副産物として消化液と敷料が発生する。消化液には窒素やカリウムなどの肥料になる成分が含まれているため、牧草用の肥料として酪農家に販売する方針だ。敷料は牛の寝床に敷いて再利用することができる。

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